ゲーム世界の1000年後に転生した俺は、最強ギフト【無の紋章】と原作知識で無双する

八又ナガト

文字の大きさ
13 / 42

013 帰路

しおりを挟む
 戦いが終わり、周囲が静寂に包まれる。
 イルは呆然と立ち尽くしたまま、俺の方をじっと見つめていた。

「イル? 大丈夫か?」

「はっ!」

 俺が声をかけると、ようやく我に返ったようだ。

「う、うん、大丈夫だよ。ただ、少し驚いちゃって……」

 イルは言葉を詰まらせながら、おずおずと俺に尋ねてくる。

「ねえ、ゼロス。今のってスキルだよね? どうして【無の紋章】で使えるの?」

「……ふむ」

 俺は少し考え込んだ。

 【無の紋章】でスキルを使える理由――すなわち継承祠グラント・ポイントについて、決して何があろうと隠し通したいわけではない。
 当然、不特定多数に知らせるつもりはないが……今後はどこかのタイミングでパーティーを組むこともあるはず。
 その時、メンバーに教えて強化を手伝うくらいならアリだと考えていた。

(俺の【無の紋章】が万能とはいえ、全ての役割を網羅できるわけじゃないからな)

 物理的に腕は二つしかないわけだし、それは仕方ないことだ。

 とはいえ、今のところはまだソロで動いた方が経験値もスキルも効率的に獲得できるため、パーティーを組むつもりはない。
 現時点では継承祠グラント・ポイントについて隠しておいた方が無難だろう。

 となると現状、最も現実的な対応は――

「実はちょっとした裏技があってな、それで覚えたんだ」

 とにかく、誤魔化す。
 それに限る!

 俺の説明を聞いたイルは、きょとんと首を傾げる。


「裏技? そんな方法があるなんて、聞いたこともないけど……」

「ごく一部の人間しか知らないんだ。だから、できればイルも周囲には広めないでいてほしいんだが……」

「そ、それはもちろん! ゼロスは命の恩人なんだから、君の嫌がるようなことはしないよ!」

「ありがとう。信頼してるぞ、イル」


 俺は安堵の息を吐いた。
 とりあえずこれで誤魔化しは完了だ。

「さて、となると次の問題はこいつらの処理だな」

 俺は倒れた冒険者たちを指さした。

「犯罪者として、適当な相手に引き渡したいところだが……」

「そうだね」

 頷きつつ、イルは少しだけ困ったような表情を浮かべる。

「だけど四人もいるんだよね。ここから町までは30分くらいだけど、二人でこの人数を運ぶのは...」

「かなり面倒だな。ギルドから担当の職員を連れてきてもらうのがいいだろう」

 町の衛兵も少し考えたが、ダンジョンで起きた事件は基本的に冒険者ギルドの管轄のはず。
 とりあえずギルドに報告しておけば問題ないはずだ。

 その後、ひとまず俺が見張りとしてこの場に残り、イルが職員を呼んでくることになるのだった。


 約一時間後、遠くから人の気配がした。
 イルが連れてきた大量のギルド職員だ。

「お待たせしました!」

 先頭の男性が声をかけてきた。

「事情は聞いております。この度は本当にありがとうございました」

「ああ、あとは頼む」

 職員たちは手際よく倒れた冒険者たちを収容し始める。

 その間、先ほどの男性が俺たちに説明をしてくれた。

「実は彼らは以前から問題行動の多い冒険者でした。今回の件で、さすがに処分は免れないでしょう」

「やっぱりそうだったか」

「はい。それとギルドマスターから言伝があります。謝礼を渡したいので、後日冒険者ギルドまでお越しいただけないかとのことでした」

「ああ、分かった」

 そう告げた後、職員たちは冒険者たちを連れて去っていく。

 その直後、なぜかイルが不安そうに俺に近づいてきた。

「ねえ、ゼロス……」

「ん? どうした?」

「もしかしたらアイツら、取り調べ中にゼロスのスキルのことを報告するんじゃないかな……」

「……ふむ」

 俺は腕を組んで考え込んだ。確かにありえそうだが……
 まあ、犯罪者の言葉なんて負け犬の遠吠えぐらいにしか思われないだろう。
 もしバレたら、その時はその時だ。

「まあ、何とかなるだろ」

「き、気楽だね……」

 イルは呆れたような、感心したような表情を浮かべた。

 そんな会話を交わしながら、俺たちは町へと戻っていく。
 町の入り口で、俺はイルに別れを告げた。

「じゃあ、俺はこの辺りで」

「うん、今日は本当にありがとう、ゼロス。君は僕にとって命の恩人だ。この恩は必ず返すからね」

「大げさだな。あまり気にしなくていいぞ……じゃあな」

 俺は軽く手を振りイルと別れ、そのまま屋敷への帰路についた。
 
 こんな風にして、俺の転生二日目は幕を閉じたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

処理中です...