17 / 42
017 【飛鳥落勢】
しおりを挟む
ダンジョン【飛鳥落勢】に入った俺は、さっそく探索を始める。
その名の通り、内部には鳥系の魔物が多く飛び交っていた。
「キィー!」「シャー!」
「っと、さっそくか」
そして入って早々、二体の魔物が俺に襲い掛かってきた。
――――――――――――――――――――
【ビークバード】
・討伐推奨レベル:11
――――――――――――――――――――
【ハングリーバード】
・討伐推奨レベル:13
――――――――――――――――――――
どちらとも飛行型であり、接近用の武器を扱うプレイヤーにとって、通常であればかなり厄介な魔物と言えるだろう。
だが、現実はそうでもなかった。
というのも、このダンジョンは飛行系魔物が多く生息する割には通路が狭く、天井も低い。
魔物たちは真正面から突っ込んでくるくらいしかできず、対応は容易だった。
「まあ、複数体で一気に襲って来られたら厄介ではあるんだが……」
何はともあれ、俺の敵ではない。
「はあッ!」
「ピィー!?」「シャー!?」
俺は迫ってくる魔物を倒すと、楽々と迷宮内を進み続ける。
目的地は当然、これまでと同じようにボス部屋――ではない。
というのもだ。
そもそも継承祠の解放条件は、驚くほど多岐にわたる。
これまでのように特定条件を達成してボスを倒すパターンもあれば、他にも様々なギミックをクリアするというパターンがある。
その点、このダンジョンの仕組みは後者だった。
「っと、ここか」
探索を始めること30分。
行き止まりに辿り着いた俺は、壁の一部だけ僅かに色が違うことに気付く。
そこに左手を当てながら、小さく呟いた。
「"魔力の潮流よ、我が資質を試せ。今こそ叡智の扉が開かれんことを"」
そう唱えた直後だった。
『キーワードを確認しました』
『紋章名:【無の紋章】を確認しました』
『条件を満たしています。試練の扉が解放されます』
システム音が鳴り響き、壁が扉に変化する。
「よし、成功だ」
見ての通り、これは隠し扉。
先には試練が待ち構えており、それを達成することでスキルを得られるのだ。
【新兵の鍛錬所】などとは異なり、そもそもギミックやキーワードを知らなければ挑戦できない仕様となっている。
俺は扉を開け中に入る。
すると、ダンジョン内にも関わらず頭上から陽光が照ってきた。
「……眩しいな」
見上げると、そこには青空が広がっていた。
それだけでなく大量の鳥型魔物が飛んでいる。
――――――――――――――――――――
【ファイアバード】
・討伐推奨レベル:16
――――――――――――――――――――
【ウィンドバード】
・討伐推奨レベル:15
――――――――――――――――――――
【フリーズバード】
・討伐推奨レベル:16
――――――――――――――――――――
見ての通り、その全てが魔法を扱うことができ、試練と言うこともあり道中の魔物よりレベルが高い。
そう分析していると、再びシステム音が鳴り響く。
『挑戦者の入場を確認しました』
『魔導の試練【飛鳥落勢】を開始します』
『挑戦者は飛行する魔物を全滅させてください』
アナウンスが鳴り終えた直後だった。
魔物たちは魔法を発動し、遥か頭上から攻撃を仕掛けてくる。
「おっと」
それを躱しながら、俺は頭上に視線を向ける。
そしてこの試練のギミック及び、クレオンにおける【魔導の紋章】の扱いを思い出していた。
【魔導の紋章】。
その名の通り、数多の魔法スキルを扱うことのできる紋章だ。
火力が出せるだけでなく汎用性も高く、クレオンでも非常に人気な紋章だった。
そんな【魔導の紋章】だが、初期スキルでは三つのスキルのうち、ランダムで一つが与えられることになっている。
その三つを羅列すると、
【マジック・アロー】:速射性とMP効率に優れている。威力は低い。
【マジック・ボール】:速射性、威力、MP効率ともに程々なバランスタイプ。
【マジック・ミサイル】:威力に優れている。速射性とMP効率は低い。
どれも一長一短の性能であり、序盤はMP効率のいい【マジック・アロー】が、後半になるにつれて火力の出る【マジック・ミサイル】が好まれる傾向にあった。
とはいえ、効率的に攻略を進める上で、全てを揃えておくに越したことはない。
そのため、【魔導の紋章】を選択したプレイヤーはまず、残る二つのスキルを習得できる継承祠《グラント・ポイント》を巡回するのが定番だった。
そしてこのダンジョンでは、その三つのうち【マジック・アロー】を獲得できる。
試練内容は頭上に浮かぶ鳥たちを全滅させることであり、必然的に長距離まで届く魔法スキルが必須となる。
現時点で、まだ魔法を一つも使えない俺からしたら達成不可能な試練に思えるだろう。
――だが、それは違う。
「今の俺には、このスキルがあるからな――スラッシュ!」
「キィー!?」
空を飛ぶ斬撃が、見事に一体の魔物を両断する。
そう。魔法スキルがなくとも、空飛ぶ斬撃ならこの試練を達成できるのだ。
「手応えは抜群だな」
俺はにっと笑みを零した後、続けて幾つも斬撃を放っていくのだった。
その名の通り、内部には鳥系の魔物が多く飛び交っていた。
「キィー!」「シャー!」
「っと、さっそくか」
そして入って早々、二体の魔物が俺に襲い掛かってきた。
――――――――――――――――――――
【ビークバード】
・討伐推奨レベル:11
――――――――――――――――――――
【ハングリーバード】
・討伐推奨レベル:13
――――――――――――――――――――
どちらとも飛行型であり、接近用の武器を扱うプレイヤーにとって、通常であればかなり厄介な魔物と言えるだろう。
だが、現実はそうでもなかった。
というのも、このダンジョンは飛行系魔物が多く生息する割には通路が狭く、天井も低い。
魔物たちは真正面から突っ込んでくるくらいしかできず、対応は容易だった。
「まあ、複数体で一気に襲って来られたら厄介ではあるんだが……」
何はともあれ、俺の敵ではない。
「はあッ!」
「ピィー!?」「シャー!?」
俺は迫ってくる魔物を倒すと、楽々と迷宮内を進み続ける。
目的地は当然、これまでと同じようにボス部屋――ではない。
というのもだ。
そもそも継承祠の解放条件は、驚くほど多岐にわたる。
これまでのように特定条件を達成してボスを倒すパターンもあれば、他にも様々なギミックをクリアするというパターンがある。
その点、このダンジョンの仕組みは後者だった。
「っと、ここか」
探索を始めること30分。
行き止まりに辿り着いた俺は、壁の一部だけ僅かに色が違うことに気付く。
そこに左手を当てながら、小さく呟いた。
「"魔力の潮流よ、我が資質を試せ。今こそ叡智の扉が開かれんことを"」
そう唱えた直後だった。
『キーワードを確認しました』
『紋章名:【無の紋章】を確認しました』
『条件を満たしています。試練の扉が解放されます』
システム音が鳴り響き、壁が扉に変化する。
「よし、成功だ」
見ての通り、これは隠し扉。
先には試練が待ち構えており、それを達成することでスキルを得られるのだ。
【新兵の鍛錬所】などとは異なり、そもそもギミックやキーワードを知らなければ挑戦できない仕様となっている。
俺は扉を開け中に入る。
すると、ダンジョン内にも関わらず頭上から陽光が照ってきた。
「……眩しいな」
見上げると、そこには青空が広がっていた。
それだけでなく大量の鳥型魔物が飛んでいる。
――――――――――――――――――――
【ファイアバード】
・討伐推奨レベル:16
――――――――――――――――――――
【ウィンドバード】
・討伐推奨レベル:15
――――――――――――――――――――
【フリーズバード】
・討伐推奨レベル:16
――――――――――――――――――――
見ての通り、その全てが魔法を扱うことができ、試練と言うこともあり道中の魔物よりレベルが高い。
そう分析していると、再びシステム音が鳴り響く。
『挑戦者の入場を確認しました』
『魔導の試練【飛鳥落勢】を開始します』
『挑戦者は飛行する魔物を全滅させてください』
アナウンスが鳴り終えた直後だった。
魔物たちは魔法を発動し、遥か頭上から攻撃を仕掛けてくる。
「おっと」
それを躱しながら、俺は頭上に視線を向ける。
そしてこの試練のギミック及び、クレオンにおける【魔導の紋章】の扱いを思い出していた。
【魔導の紋章】。
その名の通り、数多の魔法スキルを扱うことのできる紋章だ。
火力が出せるだけでなく汎用性も高く、クレオンでも非常に人気な紋章だった。
そんな【魔導の紋章】だが、初期スキルでは三つのスキルのうち、ランダムで一つが与えられることになっている。
その三つを羅列すると、
【マジック・アロー】:速射性とMP効率に優れている。威力は低い。
【マジック・ボール】:速射性、威力、MP効率ともに程々なバランスタイプ。
【マジック・ミサイル】:威力に優れている。速射性とMP効率は低い。
どれも一長一短の性能であり、序盤はMP効率のいい【マジック・アロー】が、後半になるにつれて火力の出る【マジック・ミサイル】が好まれる傾向にあった。
とはいえ、効率的に攻略を進める上で、全てを揃えておくに越したことはない。
そのため、【魔導の紋章】を選択したプレイヤーはまず、残る二つのスキルを習得できる継承祠《グラント・ポイント》を巡回するのが定番だった。
そしてこのダンジョンでは、その三つのうち【マジック・アロー】を獲得できる。
試練内容は頭上に浮かぶ鳥たちを全滅させることであり、必然的に長距離まで届く魔法スキルが必須となる。
現時点で、まだ魔法を一つも使えない俺からしたら達成不可能な試練に思えるだろう。
――だが、それは違う。
「今の俺には、このスキルがあるからな――スラッシュ!」
「キィー!?」
空を飛ぶ斬撃が、見事に一体の魔物を両断する。
そう。魔法スキルがなくとも、空飛ぶ斬撃ならこの試練を達成できるのだ。
「手応えは抜群だな」
俺はにっと笑みを零した後、続けて幾つも斬撃を放っていくのだった。
269
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる