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022 圧倒
――約2年前、俺は無知だった。
周りにいる人間が自分に対して何を思っているかも知らず、ただ無邪気に笑い続けていた。
そんな当時の俺は、この場所――ダンジョン【黒きアビス】に存在する罠部屋で全ての真実を知り、そして絶望することとなった。
俺が何に絶望したのか。
アルトたちの裏切り?
確かにショックは受けたが、それは絶望と少し違う。
俺が本当の意味で恐怖を抱いた対象は、たった一つ――――
「グルゥゥゥアァアァァァァァッ!!!」
――――咆哮が、罠部屋いっぱいに響き渡る。
ダンジョンそのものを揺らしているのではないかと錯覚させるほどの威圧感を放ちながら、とうとうそれは現れた。
高さはあの時よりも大きく、6メートルには達するだろうか。
全身が漆黒の靄に包まれており、右手には一振りの大剣が握られていた。
もっとも、魔物のサイズが大きすぎるせいで相変わらず短剣にしか見えないが。
禍々しい気配。
そして圧倒的な重圧感。
醸し出す魔力は、かつての記憶を塗り替えるほどに絶大だった。
俺はそれのステータスを確認する。
――――――――――――――
【ネクロ・デモン】
・レベル:10000(MAX)
・エクストラボス:【黒きアビス】
――――――――――――――
結果はなんと、レベル10000。
2年前とは比べ物にならないほどの強さを誇っていた。
レベルが前回と異なっているのは見た目から予想した通りだが、その上り幅はさすがに想定外だった。
だけど俺はその結果を見ても取り乱すことはなく、冷静に分析を続ける。
「なるほどな。ここのエクストラボスは挑戦者を確実に屠るために存在する。だからこそ、挑戦者に合わせたレベルの個体が出現するようになっているのか。そしてその上限が10000レベルだったと……」
俺がレベル1000に匹敵するステータスを手に入れた時、その拍子で挑戦しなかったのは今思えば正解だった。
この様子を見るに10000とはいかずとも、かなり高レベルの個体が出現していたはずだ。
そうなった場合、間違いなく俺は死に絶えていただろう。
そこまでの分析を終え、小さく首を振った。
「まあいい。この程度、これまでの地獄に比べたら大したことじゃない」
そんな俺の呟きが癇に障ったのか。
ネクロ・デモンが纏う漆黒のオーラが激しく揺れた。
そして、
「グルォォォオォォォォォ!!!」
裂帛の気合いとともに、ネクロ・デモンは大剣を高く振り上げた。
ゴウッと、馬鹿げた膂力で大気を押し分けながら、漆黒の刃が勢いよく俺に向かって振り下ろされる。
だが、その刃が俺に届くことはない。
「――――遅いな」
鋭い剣閃が瞬いた直後、ネクロ・デモンの腕が宙に舞った。
「――ッッッ!?!?!?!?!?」
ネクロ・デモンは右腕を振り切った後、ようやくその先に手応えが存在しないことを気付いたみたいだ。
動揺の素振りを見せながら、必死に痛みを堪えている。
どうやら何をされたかは未だに分かっていないようだが、俺がしたのは極めて単純なことだった。
まず、俺はネクロ・デモンの振り下ろしからコンマ数秒遅れで骨短剣を軽く振り上げた。
行動の早さも、武器の質も、俺が勝っている点は一切ない。
それでも、この攻防で優ったのは俺だった。
この2年間で鍛え上げられた俺のステータスが、その一切合切を軽々と凌駕してみせたからだ。
それに今の俺は、ステータスだけじゃなく優秀なスキルを幾つも所有している。
――――――――――――――
【自傷の契約】
・エクストラスキル
・自傷を行い、減少したHPの%分だけ全パラメータが一時的に上昇する。
――――――――――――――
【飢餓の忘心】
・エクストラスキル
・空腹時、防御力を大きく減少させ、その代わり攻撃力を大きく上昇させる。
――――――――――――――
自傷を行うことで全パラメータを上昇させるエクストラスキル【自傷の契約】。
この罠部屋に足を踏み入れる直前、もしもの時を考えて50%ほどHPを削っておいたのだ。
そのおかげで俺は今、通常の1.5倍の攻撃力と速度を発揮できる。
加え、この半年で新しく獲得した【飢餓の忘心】。
空腹時、攻撃力を大幅に上げることができるエクストラスキルだ。こちらの倍率は最大で50%。
代償として防御力は減少するが、そもそも敵との力量差があり攻撃を喰らわない状況なら何のデメリットにもならない。
たとえば、今のように。
俺は右腕を失い狼狽えるネクロ・デモンを見ながら小さく笑った。
周りにいる人間が自分に対して何を思っているかも知らず、ただ無邪気に笑い続けていた。
そんな当時の俺は、この場所――ダンジョン【黒きアビス】に存在する罠部屋で全ての真実を知り、そして絶望することとなった。
俺が何に絶望したのか。
アルトたちの裏切り?
確かにショックは受けたが、それは絶望と少し違う。
俺が本当の意味で恐怖を抱いた対象は、たった一つ――――
「グルゥゥゥアァアァァァァァッ!!!」
――――咆哮が、罠部屋いっぱいに響き渡る。
ダンジョンそのものを揺らしているのではないかと錯覚させるほどの威圧感を放ちながら、とうとうそれは現れた。
高さはあの時よりも大きく、6メートルには達するだろうか。
全身が漆黒の靄に包まれており、右手には一振りの大剣が握られていた。
もっとも、魔物のサイズが大きすぎるせいで相変わらず短剣にしか見えないが。
禍々しい気配。
そして圧倒的な重圧感。
醸し出す魔力は、かつての記憶を塗り替えるほどに絶大だった。
俺はそれのステータスを確認する。
――――――――――――――
【ネクロ・デモン】
・レベル:10000(MAX)
・エクストラボス:【黒きアビス】
――――――――――――――
結果はなんと、レベル10000。
2年前とは比べ物にならないほどの強さを誇っていた。
レベルが前回と異なっているのは見た目から予想した通りだが、その上り幅はさすがに想定外だった。
だけど俺はその結果を見ても取り乱すことはなく、冷静に分析を続ける。
「なるほどな。ここのエクストラボスは挑戦者を確実に屠るために存在する。だからこそ、挑戦者に合わせたレベルの個体が出現するようになっているのか。そしてその上限が10000レベルだったと……」
俺がレベル1000に匹敵するステータスを手に入れた時、その拍子で挑戦しなかったのは今思えば正解だった。
この様子を見るに10000とはいかずとも、かなり高レベルの個体が出現していたはずだ。
そうなった場合、間違いなく俺は死に絶えていただろう。
そこまでの分析を終え、小さく首を振った。
「まあいい。この程度、これまでの地獄に比べたら大したことじゃない」
そんな俺の呟きが癇に障ったのか。
ネクロ・デモンが纏う漆黒のオーラが激しく揺れた。
そして、
「グルォォォオォォォォォ!!!」
裂帛の気合いとともに、ネクロ・デモンは大剣を高く振り上げた。
ゴウッと、馬鹿げた膂力で大気を押し分けながら、漆黒の刃が勢いよく俺に向かって振り下ろされる。
だが、その刃が俺に届くことはない。
「――――遅いな」
鋭い剣閃が瞬いた直後、ネクロ・デモンの腕が宙に舞った。
「――ッッッ!?!?!?!?!?」
ネクロ・デモンは右腕を振り切った後、ようやくその先に手応えが存在しないことを気付いたみたいだ。
動揺の素振りを見せながら、必死に痛みを堪えている。
どうやら何をされたかは未だに分かっていないようだが、俺がしたのは極めて単純なことだった。
まず、俺はネクロ・デモンの振り下ろしからコンマ数秒遅れで骨短剣を軽く振り上げた。
行動の早さも、武器の質も、俺が勝っている点は一切ない。
それでも、この攻防で優ったのは俺だった。
この2年間で鍛え上げられた俺のステータスが、その一切合切を軽々と凌駕してみせたからだ。
それに今の俺は、ステータスだけじゃなく優秀なスキルを幾つも所有している。
――――――――――――――
【自傷の契約】
・エクストラスキル
・自傷を行い、減少したHPの%分だけ全パラメータが一時的に上昇する。
――――――――――――――
【飢餓の忘心】
・エクストラスキル
・空腹時、防御力を大きく減少させ、その代わり攻撃力を大きく上昇させる。
――――――――――――――
自傷を行うことで全パラメータを上昇させるエクストラスキル【自傷の契約】。
この罠部屋に足を踏み入れる直前、もしもの時を考えて50%ほどHPを削っておいたのだ。
そのおかげで俺は今、通常の1.5倍の攻撃力と速度を発揮できる。
加え、この半年で新しく獲得した【飢餓の忘心】。
空腹時、攻撃力を大幅に上げることができるエクストラスキルだ。こちらの倍率は最大で50%。
代償として防御力は減少するが、そもそも敵との力量差があり攻撃を喰らわない状況なら何のデメリットにもならない。
たとえば、今のように。
俺は右腕を失い狼狽えるネクロ・デモンを見ながら小さく笑った。
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