ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト

文字の大きさ
43 / 57

043 ダンジョンとフィールド

しおりを挟む
 Aランクダンジョン【欺瞞ぎまん神殿しんでん】。
 迷路のように入り組んだ通路と、罠だらけのダンジョン内を進むこと約10分。
 俺は足を止め、警戒の目を前方に向けた。

「……ようやくモンスターのお出ましだな」

 そう口にした瞬間、通路の奥から小さな影が複数現れる。

「キュー!」「キュゥー!」

 甲高い鳴き声とともに現れたのは、白色の毛並みが特徴的な兎型のモンスター、トラップ・ラビットの群れだった。
 数は全てで八体。その可愛い見た目とは裏腹に、一体一体がBランク下位指定とかなりの強さを誇っている。
 俺が戦った時のガレウルフがCランクだったといえば、その実力が伝わりやすいだろうか。

 とはいえ、単独でAランクの実力を誇る俺やリーベには遠く及ばない。
 身軽な動きにだけ気を付けてカウンターを浴びせれば、問題なく倒せる程度の敵だった。

 ――そう、ここがダンジョン内でなければ。

「ふぅん。どんなモンスターが出現するかと思えば、この程度だなんて……期待外れもいいところね」

 感想を口にしながら、手に魔力を溜めていくリーベ。

「キュー!」「キィー!」

 その直後。トラップ・ラビットたちはタイミングを見計らったように、同時に四方八方へ飛び跳ねた。
 それぞれが床、壁、天井に着地する中、一体の足場だけがわずかに沈む。
 
 それを見た俺は反射的に叫んだ。

「ラブ、下がれ!」

「――――ッ!」

 (意外にも)素直に、俺の言葉に従い一歩後ずさるリーベ。
 その直後、彼女の前を眩い電撃が迸った。

 リーベが目を丸くする。

「なっ! これは何!?」

「さっきの地雷と同じ、ダンジョン内のギミックだ。このダンジョンに出てくるモンスターの一部は自らの意思でトラップを利用してくる。ランク以上に厄介だと思った方がいい」

 ……まあ、リーベの耐久力を考慮すればそこまで気にする必要はないかもしれないが。
 念には念を入れておくに、越したことはないだろう。

「……なるほど、そういうこと」

 鋭い視線を前方に送るリーベ。
 トラップ・ラビットたちは彼女が翻弄されている様が楽しいのか、「キキキ」と笑い声を零していた。

 ……さて、問題はここから。
 相手の狙いが分かっている以上、俺たちに搦手は通用しない。真っ向からの火力勝負に持ち込んでやればすぐに決着はつくだろう。
 しかしここはダンジョン。ダンジョンを攻略する上で一番大切なのは体力とMPを温存することだ。

 そのための方法は既に考えてある。

「ラブ、一旦前に出て敵の注目を集めろ」

「ちょっと、私は後衛職よ!? どうして――」

「いいから早く」

「ああもう、分かったわよ!」

 俺の指示通り、前に出るリーベ。
 敵からはこちらが痺れを切らしたように見えたのだろう。
 トラップ・ラビットたちは高い笑い声を上げた後、それぞれの足場を蹴りリーベに攻撃を仕掛ける。

(――――今だ!)

 俺は右側の壁のうち、わずかに色が濃い部分を力強く押し込んだ。
 すると、その直後――

「キィッ!?」「キャンッ!?」

 四方八方から飛び出した石の槍が、次々とトラップ・ラビットに襲い掛かった。
 その結果、見事に三体の串刺しに成功。さらには残りの五体についても、槍の檻に閉じ込めることに成功した。

 あとはただトドメを与えてやるだけだ。

「ほら、あとは好きにしろ。ただ魔力は使いすぎるなよ」

「ふふっ、分かったわ」

 リーベは気分良さそうに頷いた後、無防備なトラップ・ラビットにトドメを与えていく。
 こうして俺たちの初戦は完勝で幕を閉じた。


 討伐から数十秒が経過した頃だった。
 トラップ・ラビットたちの死体がスーッと消えていき、後には小さな瓶が一つだけ残る。

 それを拾い上げたリーベは、不満げに眉をひそめた。

「はあ、低級のポーションが一つだけなんて、大した戦果はなかったわね」

「……みたいだな」

 俺は小さく相槌を打ちながらも、わずかに衝撃を受けていた。
 というのも、目の前でモンスターの死体が消滅する姿を見るのは、これが初めてだったからだ。

(ゲームで事前知識はあったけど、実際に目の当たりにするとこれは驚きだな)

 心の中でそう呟きつつ、俺は『剣と魔法のシンフォニア』におけるダンジョンの設定を思い出していく。

 そもそもダンジョンとは、特定のボスモンスター、アイテム、コアを基に生み出される隔離空間《リミテッドエリア》。
 内部に出現するモンスターはダンジョン内の魔力によって生成され、厳密には生物ではない。
 そのため、討伐後はこのように魔力の瘴気となって消滅するのだ。

 ちなみに『アルストの森』などのマップは、ダンジョンに対してフィールドと称されていた。そこでは現実の生物である魔物が生息し、討伐後も実体が残る。

 その違いはドロップアイテムにも反映されていた。
 ダンジョン内で倒したモンスターからは、アイテムや武器、金貨など、一体どこから出てきたのか分からないものが多い(RPGとしては一般的だが)。
 対してフィールドでは魔物の素材など、現実に存在するものがそのままドロップしていたのだ。

 これまで俺は『アルストの森』や領都でしか魔物を倒したことがなかったため、目の前で死体が消えるのを見たのはこれが初めてだ。
 知識としては知っていても、現実で目の当たりにすると、こうも不自然に見えるんだなと強く実感する。

 もっともこの世界で生きるリーベたちからすれば、これは当たり前の現象であり、特に驚くことではないようだが……
 まさかこんなところで、改めて俺が転生者だという事実を思い知らされるとは。

(まあ、その辺りは特に気にすることじゃないか)

 気持ちを切り替えた俺は、ポーションを懐に入れようとしているリーベに向かって鋭い声で言う。


「それじゃ、攻略の続きだ。日帰りだし時間もないから急いでいくぞ。あと報酬は俺に渡せ」

「……チッ、分かったわよ」


 攻略を再開すること30分後。
 なぜかトラップに引っかかりまくるリーベに呆れながらも、俺たちはひとまず中間地点に到達するのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...