ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト

文字の大きさ
45 / 57

045 VSトライデントテイル

しおりを挟む
 俺、リーベ、ガレルはまず、トライデントテイルを取り囲むような位置につく。
 敵の意識と攻撃を分散させるためだ。

「グルルゥゥゥ」

 トライデントテイルは鋭い眼光を左右にちらつかせながら、俺たちとの間合いを図っていた。

 そして、

「バウッ!」

 力強い咆哮とともに、三者に向けて一本ずつ尻尾槍が放たれる。

 とはいえ先ほどと同様、注意さえしていれば対処は難しくない。
 俺たちは簡単に刺突を躱すことができた。

「グルァァァァァ!」

「――――!」

 トライデントテイルが変化を見せたのはその後だった。
 ヤツはその場でぐるりと体を回転させ、伸ばした尻尾槍を鞭のようにしならせる。
 円を描くような形で、尻尾槍が俺たちに襲い掛かってきた。

 だが――

(直線的な軌道に比べて速度は半分以下! 今なら――)

 俺は木剣を力強く握りしめると、タイミングを見計らい尻尾槍に斬りかかる。

「――【纏装てんそう風断かぜたち】!」

 振動する風を纏った刃が振るわれる。
 それは真っ直ぐ吸い込まれていくように尻尾槍へと命中するも、キンッ! という甲高い衝撃音を鳴らしただけで、両者ともに後ろへ弾かれる結果となった。

「……やっぱりかなり頑丈だな」

 岩石を貫く程の強度に加え、しなやかな動きのせいで衝撃を逃がされたというのもあるのだろう。
 どうやら今の攻撃で尻尾槍を斬り落とすのは、なかなか難しそうだ。

 方針を変える必要がある。

「ガァァァアアアアア」

 俺が思考を深めている途中、トライデントテイルは力強い雄叫びを上げる。
 そして再び、尻尾槍を鞭のようにしならせ、縦横無尽に攻撃を仕掛けてきた。

 天井が、壁が、床が、次々と強力な攻撃によって粉砕されていく。
 それを回避する中、リーベが慌てた様子で声を上げた。

「ちょっと、ここからはどうするつもり!? 刺突より破壊力は低いにしろ、これはこれで躱すのが面倒よ!?」

 リーベの主張はもっとも。
 ボス部屋全体を網羅するように振るわれる三本の尻尾槍は、ある意味で刺突以上に厄介な攻撃手段だった。
 トライデントテイルがこの対応に切り替えたのは、直線的な刺突は避けられると判断したからだろう。

(なら俺たちは、その思考を逆用してやればいい)

 こちらの取るべき作戦が決定する。
 俺は声を張り上げて、リーベとガレルに指示を出した。

「問題ない、考えがある! 二人はこのまま回避に徹してくれ! あとは俺が、隙を見て攻撃を仕掛け――」

 その直後。
 俺はトライデントテイルの尻尾鞭によって生じた地面の凹みに躓いたふりをし、

「グルァァァ!」

 そんな俺を見たトライデントテイルは、これが好機だと判断したのだろう。
 嬉しそうに唸り声を上げながら、一本の尻尾槍をこちらに放ってくる。

 軌道はまっすぐ、そして速い。
 このタイミングなら俺の体を貫けると判断したのだろうが――

「悪いな、フェイントだ」

「――ッッッ!?」

 俺は素早くステップを刻むと、軽やかに体勢を整える。
 尻尾槍は紙一重で俺の横を通過し、真後ろの壁に深く突き刺さった。


 ――――狙うなら、ここだ!


 流れるように木剣を上段に構えた俺は、目の前にある尻尾槍を見下ろす。
 先ほどまで、尻尾槍はしなるような動きをしていたため斬り落とせなかったが、今は話が別。
 張り詰めた糸が切れやすいように、限界まで伸びきったこの状況なら耐久力は低くなっているはずだ。

 さらにダメ押しを追加する。
 先ほど、風断が弾かれた時の感触で俺は理解していた。
 この素材相手なら、切断よりも打撃の方がダメージが通りやすいはずだと。

 俺は木剣に渦巻く風の奔流を纏わせる。それはかつてリーベにトドメを与えた時と同種でありながら、より小さく圧縮した破壊の剣。

 すなわち――


「――――【纏装てんそう颶風剣ぐふうけん】!」

「ガァァァァァァァァァァ!?」


 振り下ろされた渾身の一撃が、見事に尻尾槍を叩き割った。
 切り離された先端が、くるくると軽やかに宙を舞う。

 痛みに悶えながらも、トライデントテイルは鋭い眼光をこちらに向けてきた。
 その目からはまだ、闘志は失われていない。

「ガルゥ!」

 恨みを晴らすように、残る二本の尻尾槍が俺に向けて放たれる。
 だが、ここでその選択は失敗だった。

「あら、いいのかしら? 私から目を離しても」

「――――ッ!?」

 遷移魔力によって複数の鎖を生み出したリーベが、そのまま尻尾槍を捕まえる。
 彼女はそのまま二本の尻尾槍を限界まで引っ張り、強制的に伸びきった状況を生み出した。

 リーベが得意げな表情で俺に視線を向ける。

「要するに、こういうことでしょう?」

「ああ、完璧だ」

 俺は颶風剣を継続して発動し、この隙を利用して残る二本を断ち切った。

 これで全ての準備は完了。
 あとは敵にトドメを刺すだけだ。

「ルァァァアアアアアアアアアアア!」

 ここに来て、一番の咆哮を上げるトライデントテイル。
 虎の尾を踏む――ではなく、獣の尾を斬り落とすとでも言うべきか。
 追い詰められた獣は限界を超えた力を振り絞り、こちらに襲い掛かろうとする。

 だが――

「一体、大切な存在を忘れているぞ」

「ガルゥ!」

「――ッ!?」

 俺とリーベが尻尾槍の相手をしている間に、ガレルは敵の背後に回り込んでいた。
 トライデントテイルは慌てて振り返ろうとするが、既に手遅れ。

「ガルァァァアアアアア!」

 纏装・風断。
 ガレルが持つ最大火力の一撃が振り下ろされる。
 それは見事に、隙だらけだったトライデントテイルの胴体を深く斬り裂いた。

「――ッ、ルゥゥ……」

 血塗れになりながらも、何とか崩れそうな体を支えるトライデントテイル。
 そんな敵目掛けて、俺とリーベは同時に手を伸ばした。

「エアロバースト!」

「爆ぜなさい!」

 風の奔流と、炎の砲弾が放たれる。
 それらはトライデントテイルに着弾すると、激しい爆発を引き起こした。

 吹き荒れる爆風と砂塵。
 十数秒後。砂塵が晴れたその場所には、トライデントテイルの死体だけが横たわっていた。

「よし、無事に勝てたな」

 かくして、初めてのボス攻略は俺たちの完全勝利で終わるのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...