絶叫男

牟道光一朗

文字の大きさ
1 / 1

序章

しおりを挟む
 大阪、京橋にある立呑酒場、尾坂酒店は今日も混迷を極めた人混みで満ちている。赤身まぐろ。この魅惑の肴で、いつもの調子で身体は重力場に吸い寄せられた。
「ごめん、兄ちゃん、ちょっと詰めたって」
「すいません、どうも」店はカウンターのみで埋まり切り、マスターの一言が無ければ到底、列に収まる事は不可能だ。
「なんにしよ」
いつも通り大ビンをオーダー。コップグラスに注ぎつつ、目当てのマグロ赤身を続いて注文した。キャリン、キャリンのビールを喉にかっ込みながら、親父達のダーティな話題に耳をそばだてた。
 やはり話題の中心は、風俗の話で持ちきりだ。社交界のご定番ってやつだ。一方で俺は、「熟女クラブ  さざ波荘」の話題が登場してくることを密かに待ち望んだ。
ふいに乳首が、小刻みに揺れた。携帯のバイブだ。
「毎度。元気」
気分は悪化する。
「要件は」
「えらく騒がしいな、また飲んどるの、場所変ええや」
「じゃ、切ろか」
「ジロくん、せかすなや。ケツマのスカや、二人用意してくれへんか」
「スカか。二人はきついな」
「ほんなら、一人やったらいけるんか」
「確認してみる」
「何や、確認て。わからんのかえ」 
「イヤやったら、ええけど」
「どれくらいで、わかるんや」
  面倒くさい。
「そんな時間かからんわ。そんで、金額は」
「5やな」
「他あたってや」
 こいつの仕事は、後で面倒がよく起こる。通常料金で引き受ければ赤字は必死。出来れば避けたいのが本音だ。
「ほな、6にしよ」
「・・・・」
「7は?」
「・・・・」
「わかった8や」
「それでええわ。また、手配したら連絡する」
 受話口から、何やら批難めいた口調が、聞こえたがかまわず切り、宴を再開させた。
午後三時には、酒場を後にし、



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...