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本採用決定と「後輩」判明
生姜焼き丼を三杯も平らげた橘さんは、満足げな顔でソファに深く沈み込んでいた。俺はその向かい側に、少しだけ緊張しながら座る。採用か、不採用か。最後の審判の時が来た。
「桜井さん」
「は、はい!」
呼ばれて、思わず背筋が伸びる。
「正式にお願いします。今日から、ここで働いてください」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
よかった。これで拓海の塾代が払える。俺も、大学進学の道を諦めずに済む。安堵と喜びで、思わず声が大きくなった。
「それで、いくつかルールがあります」
「ルール、ですか?」
橘さんは居住まいを正すと、真剣な表情で話し始めた。
「まず、俺がここにいることは、絶対に内密に」
「はあ…」
「それと、俺と桜井さんの関係も、もちろん秘密です。ただの雇い主と家政婦。それ以上でも、それ以下でもない」
「分かりました」
まあ、当然だろうな。そう思った。
だけど、次の言葉は、俺の予想を遥かに超えるものだった。
「特に、学校では絶対に接触しないでください」
「…え?がっこう…?」
聞き間違いかと思った。なんでここで「学校」なんて単語が出てくるんだ?
「桜井さん、うちの高校の二年生ですよね。俺、一年なんで」
橘さんは、当たり前のように言った。
「…え。えええええええっ!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
うそだ。だって、橘っていう苗字はクラスにも学年にもいない。それに、こんな豪邸に住んでいる生徒がいるなんて、噂にすら聞いたことがない。
混乱する俺を気にも留めず、橘さんは話を続ける。
「なので、学校では絶対に俺に話しかけないこと。挨拶も不要です。偶然会っても、知らないフリをしてください。できますね?」
「は、はあ…」
状況が飲み込めないまま、俺はこくこくと頷くことしかできなかった。
一体、どういうことなんだ?
目の前のこの青年は、一体、何者なんだ?
疑問符が頭の中を飛び交う中、橘さんはふと立ち上がると、リビングの隅に置いてあった姿見の前に立った。
そして、ボサボサだった髪を手櫛でさっと整え、よれていたTシャツの襟元を直し…次の瞬間、俺に向かってふわりと微笑みかけた。
その瞬間、空気が変わった。
さっきまでの「もさもさ」とした雰囲気は完全に消え失せ、そこに立っていたのは、まるで後光が差しているかのような、完璧な美少年だった。
柔らかくカーブを描く瞳。すっと通った鼻筋。形の良い唇が描く、優雅な笑み。
それは、俺が知っている顔だった。
毎日、教室の女子たちがスマホの画面を見ながら黄色い声を上げている、あの――。
「…たちばな、けいご…?」
掠れた声で名前を呟くと、目の前の美少年――超人気アイドルグループ『Next Dimension』のセンター、橘圭吾(たちばなけいご)は、こくりと頷いた。
そして、アイドルモード全開の、完璧な爽やかスマイルでこう言ったのだ。
「ご理解いただけたようで、何よりです。これからよろしくお願いしますね、桜井“先輩”」
俺は、あまりの衝撃に、しばらく口をあんぐりと開けたまま、動くことすらできなかった。
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