10 / 19
ぽんこつアイドルくん
ある日の午後。
俺が夕食の買い出しから帰ってくると、キッチンから何やら香ばしい…いや、明らかに焦げ臭い匂いが漂ってきた。同時に、けたたましい火災報知器の警告音が鳴り響いている。
「な、なんだ!?」
慌ててキッチンへ駆け込むと、そこには煙がうっすらと充満していた。
煙の発生源は、電子レンジだ。そしてその前で、顔をうっすらと煤で汚した圭吾が、目を白黒させて立ち尽くしている。
「橘!お前、何やったんだ!」
「せ、先輩!お帰りなさい!あの、お腹がすいちゃって、冷凍のチャーハンを温めようとしただけなんですけど…!」
「袋のまま入れたな!?」
「えっ、ダメだったんですか…?」
絶句した。こいつは、本当に、何も知らないんだ。
俺は急いで窓を全開にし、換気扇を最強モードにする。火災報知器のスイッチを切り、煙を追い出すと、電子レンジの扉を恐る恐る開けた。
中では、銀色のパッケージが見事に黒焦げになり、火花を散らした痕跡を残していた。
「はぁ……。お前なぁ、アルミとか金属はレンジに入れちゃダメだって、小学生でも知ってるぞ…」
「そうなんですか!?知らなかったです…」
しゅん、と効果音がつきそうなほど、圭吾はしょんぼりと肩を落とした。その大きな瞳が、不安げに潤んでいる。まるで、飼い主に叱られた大型犬だ。
こんな顔をされたら、怒る気も失せてしまう。
「…怪我は?」
「だ、大丈夫です。びっくりしただけです」
「そうか。ならいい。腹、減ってるんだろ?なんかすぐ作るから、リビングで待ってろ」
「…はい」
素直に頷いて、とぼとぼとリビングへ向かう圭吾の背中を見送る。その背中が、やけに小さく見えて、胸がちくりと痛んだ。
両親は海外で、彼は中学二年から一人暮らし 。きっと、誰も彼に、こういう当たり前のことを教えてくれなかったのだろう。キラキラしたアイドルの仮面の下に隠された彼の孤独が、垣間見えた気がした。
俺は手早く冷蔵庫の残り物でチャーハンを作り、圭吾のもとへ運んだ。
「ほら、できたぞ。火傷しないように食えよ」
「わ…!ありがとうございます!先輩のチャーハン、お店のより美味しいです!」
さっきまでのしょげた顔はどこへやら、圭吾はぱあっと表情を輝かせ、大きな口でチャーハンを頬張り始めた。その幸せそうな顔を見ていると、呆れた気持ちも、怒りも、全部どこかへ消えていってしまう。
「まったく、しょうがないな…」
口からこぼれたのは、呆れと、ほんの少しの優しさが混じった、自分でも驚くほど穏やかな声だった。
世話が焼ける。本当に、心底、手のかかる男だ。
だけど、その世話を焼くことに、俺はいつの間にか、やりがいのようなものを感じ始めている自分に気づいていた。
あなたにおすすめの小説
魔王様の執着から逃れたいっ!
クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」
魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね
俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい
魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。
他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう
だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの
でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。
あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。
ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな?
はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。
魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。
次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?
それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか?
三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。
誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ
『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ
第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️
第二章 自由を求めてお世話になりますっ
第三章 魔王様に見つかりますっ
第四章 ハッピーエンドを目指しますっ
週一更新! 日曜日に更新しますっ!
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
殿堂入りした愛なのに
たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける)
今日からはれて高等部に進学する。
入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。
一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。
両片思いの一途すぎる話。BLです。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!