アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)

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共依存


そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、圭吾は相変わらずだった。
ただ一つ、前と違うことがあるとすれば、俺が週末に実家に帰ることを、あからさまに嫌がるようになったことだ。

「えぇー…先輩、今日も帰っちゃうんですかぁ…?」
金曜日の夕方。俺が帰省の準備をしていると、圭吾がソファの陰から、捨てられた子犬のような目でこちらを見ていた。

「当たり前だろ。家族も心配するし」
「…俺、一人だと、夜ごはん、カップ麺しか食べれないです…」
「知るか。冷蔵庫に作り置き、たくさん入れといただろ」
「でもぉ…先輩の作りたてのご飯が、いいんですもん…」

そう言って、拗ねたように唇を尖らせる。
その姿に、後ろ髪を引かれまくる。正直、このままここにいてやりたい、という気持ちが、ないわけではない。

(…ダメだ、流されるな、俺。俺は、ただの被雇用者だ)

「我儘言うな。月曜には戻るんだから、それまでいい子で待ってろ」

俺は、わざと突き放すように言って、ボストンバッグを肩にかけた。
圭吾は、何も言わずに、ただ寂しそうな顔で俺を見送るだけだった。

実家に帰ると、いつもの温かい日常が待っていた。
母さんの手料理を味わい、拓海の勉強を見てやり、父さんの他愛ない話を聞く。
心が安らぐ。ここが、俺の本当の居場所だ。
だけど。
ふとした瞬間に、俺は、あの広い家のことを考えていた。
(あいつ、ちゃんとご飯食べてるだろうか)
(洗濯物、また溜め込んでるんじゃないか)
(一人で、寂しくしてないだろうか)
気付けば、圭吾のことばかり考えている自分に、俺は愕然とする。
もう、完全に、絆されてしまっている。



日曜日の夜。俺が圭吾の家に戻ると、玄関からリビングまで、すべての電気が消えていて、家の中はしんと静まり返っていた。

「…橘?」

声をかけても、返事はない。
まさか、まだ仕事から帰ってきていないのか?
不安に思いながら、そっとリビングのドアを開ける。
月明かりだけが差し込む薄暗い部屋の中。ソファの上に、小さな塊があった。
近寄ってみると、それは、膝を抱えるようにして丸くなり、眠っている圭吾だった。

テレビもつけず、電気もつけず、こんな冷たい部屋で、たった一人で、俺の帰りを待っていたのだろうか。
その姿を見た瞬間、俺の胸は、締め付けられるように痛んだ。

「…橘、起きろ。ベッドで寝ないと、風邪ひくぞ」

肩を優しく揺さぶると、圭吾の瞼が、ゆっくりと持ち上がった。
焦点の合わない、とろんとした瞳が、俺の顔を捉える。
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