クールで近寄りがたい同級生、「あざと可愛い」配信者推し仲間でした……え?本人?

天音ねる(旧:えんとっぷ)

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いつもの日々

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月曜日の昼休みはいつも少しだけ憂鬱だ。
午前中の授業で吸い取られた気力。週末の楽しかった記憶のかけら。
それらが混じり合って教室全体に気だるい空気が澱んでいる。
その澱みの中で生徒たちの喧騒だけがやけに明るく響いていた。

僕、佐々木湊は教室の隅。
窓際から二番目の席で存在感を消して息をする。それが僕の処世術であり日常だった。
別にいじめられているわけじゃない。
ただ、クラスの中心で繰り広げられる陽気な会話の輪に、自分から飛び込んでいく勇気がないだけだ。
コンビニで買ってきた焼きそばパンを特に味わうでもなく咀嚼し、三分の一ほど残したところでそっと袋の口を閉じた。
胃がこれ以上の固形物を受け付けないと言っている。

視線は自然と教室内を彷徨う。
人間観察は少し得意なほうだった。
自分というフィルターを通して見るクラスメイトたちの姿は、時に滑稽で時に興味深い。
例えば、教室の前方で大きな声で昨日のテレビ番組の話をしているグループ。
彼らは自分が世界の中心だと信じて疑っていない。
その輪の中心にいる女子は、笑う時にわざとらしく隣の男子の肩を叩く。
男子はまんざらでもない顔だ。

分かりやすい。実に分かりやすい。

でも、一人だけ。
僕の観察眼をもってしても、その内側をまったく読み取れない人間がいた。

月島蓮。

彼は教室の真ん中あたり。僕とは対角線上に位置する席に座っている。
そこはクラスのカーストの頂点。彼がいるだけで、その一角はまるで別の空間みたいに空気が澄んでいる気がする。今日も彼の周りには自然と人だかりができていた。
主に女子生徒だ。
彼女たちはひっきりなしに蓮に話しかけるけれど、その距離は絶妙に遠い。
まるで高嶺の花に手を伸ばそうとするけれど、その棘を恐れてためらっているかのようだ。

「月島くん、この前の模試、また学年トップだったんだって?すごーい!」
「数学のこの問題、ちょっと教えてくれないかな?」
「次の体育、バスケだよね?月島くんの活躍、楽しみにしてるね!」

矢継ぎ早に投げかけられる称賛と期待の言葉。
それらに対して、蓮は表情ひとつ変えなかった。
長い睫毛に縁取られた涼やかな瞳は、感情の色を一切映さない。
ただ、静かに相手の目を見て、必要最低限の言葉を返すだけ。

「ああ」
「そこは公式の応用だ。教科書のこのページを見ろ」
「別に。いつも通りやるだけだ」

その声は低く、よく通る。
けれど温度がない。
まるでAIスピーカーがデータベースから最適な答えを引き出して読み上げているみたいだ。
それでも女子たちは嬉しそうに頬を染める。「ありがとう!」と弾んだ声で礼を言って自分の席に戻っていく。彼女たちにとって、あの月島蓮と会話できたという事実そのものが、一種のステータスなのだろう。

すごいなと思う。純粋に。
同じ高校二年生とは思えない。

立ち居振る舞いのすべてに無駄がなく、洗練されている。
机に置かれた教科書やノートですら、まるで計算され尽くしたオブジェのように完璧な配置だ。
彼が動くたびに、さらりとした黒髪が静かに揺れる。
シャープな顎のライン。通った鼻筋。少し薄い唇。神様は彼を創る時、きっと一切の妥協をしなかったに違いない。

住む世界が違う。
その言葉が、これほどしっくりくる相手もいないだろう。
僕と月島蓮の間には、透明で、分厚くて、絶対に壊せない壁が存在する。
彼は光が降り注ぐステージの上の主役で、僕は客席の隅っこでその眩しさに目を細めているだけの観客Aだ。
いや、観客ですらないかもしれない。舞台装置の背景に描かれた、名もなき木の一本。それが僕だ。
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