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第3話 実力以上の活躍を支える者
しおりを挟む同じ頃、レインは自分の頭の上でぷるぷると震えている、銀色に輝くスライムを優しく撫でていた。リキッド・ミスリルスライムのポルンだ。レインの頭の上が定位置の、パーティのマスコット的存在である。
「ありがとう、ポルン。君のジェルのおかげで、セシリアさんは無事だ」
「ぷるるん!」
ポルンは嬉しそうに震え、レインの頬にすり寄った。
彼が生み出す銀色のジェルは、ただのスライムの粘液ではない。塗布した対象にあらゆる魔法ダメージを激減させるという、伝説級の金属《魔法銀(ミスリル)》の特性を液体化した、奇跡の物質だった。レインが毎朝、セシリアのローブに薄く塗り込めている、パーティの生命線。
もちろん、セシリアはそれをただの「防水用のワックス」程度にしか認識していなかった。
「見事だ、二人とも! とどめは俺が決める!」
ガレスが鱗を砕き、セシリアが動きを封じた。勝利への道筋は、完全に見えた。
パーティの要、勇者アレクが、ついにその腰の聖剣を引き抜く。
シュイン、という清らかな音と共に抜き放たれた『グランツェリオン』の刀身は、ダンジョンの薄闇を払拭するほどのまばゆい光を放った。それはまるで、小さな太陽が顕現したかのようだった。
「俺の聖剣『グランツェリオン』があれば、古竜など敵ではない!」
聖剣を天に掲げ、アレクが駆ける。その姿は、まさしく物語に謳われる英雄そのもの。彼の足跡からは光の粒子が舞い上がり、その神々しさに誰もが見惚れるだろう。
ドラゴンは最後の抵抗とばかりに、残った力でブレスを放つ。だが、アレクは臆さない。
「聖技――『グランツ・クロス』!」
聖剣を一閃すると、十字の閃光が迸り、ドラゴンのブレスを正面から切り裂いた。灼熱の奔流は、まるでモーゼの奇跡のように左右に分かたれ、アレクの体には一筋の熱風すら届かない。
勢いを殺さず、彼はドラゴンの懐まで一息に駆け抜ける。そして、氷に動きを封じられた巨大な心臓めがけて、光り輝く刃を突き立てた。
ズブリ、という鈍い手応え。
世界で最も硬いとされる古竜の鱗と、その下にある強靭な筋肉が、まるで熟した果実のようにたやすく貫かれた。聖剣は深々と突き刺さり、ドラゴンの生命の源を破壊する。
「ギ……ア…………」
断末魔の叫びすら上げることなく、古竜の巨体から力が抜けていく。その瞳から生命の光が消え、小山のような体躯が、地響きを立ててゆっくりと横倒しになった。
静寂が訪れる。
長く、熾烈な戦いは、Sランクパーティ『紅蓮の剣』の完全勝利で幕を閉じた。
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