焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇

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第1章

第17話:島での生活の最後

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「ついに島の中央部か……どんな魔獣が出てくるか楽しみだな」



「今のお前なら大抵の魔獣は相手になるだろうが、油断は禁物だぞ」



「いざとなれば、私が守ります。余計な心配は無用です、ジ……桐生」



「今、完全に“ジジイ”って言おうとしたよな!?」



騒がしくじゃれ合う二人の声を背に、海人は静かにこれまでの島での出来事を思い返していた。もうすぐ三ヶ月――長いようで、あっという間だった。



命を奪われかけ、変わり者の老人と出会い、封印されていた異質なメイドとも邂逅した。幾度となく死線を越えたが、間違いなく――人生で最も濃密で、充実した時間だった。



何より、“心氣顕現”という異能を得たこと。氣を操り、自らの武器として昇華できるようになったのは、この島での経験があったからこそだ。



(この島を出て、瑞穂の護衛に就く……面倒な役回りになるだろうな)



戦うだけなら楽だ。しかし“焔木海人”という存在をこの世に刻むためには、それだけでは足りない。力でねじ伏せるだけでは――本当の自由は手に入らない。



「マスター、大型魔獣の氣反応を検知しました」



ゼロの報告に、海人は顔を上げる。

巨大な魔獣――それがこの島での、最後の戦いとなるかもしれない。



「いいね……できれば強敵であってくれよ。試してみたい技が山ほどあるんだ」



海人は一気に足を速め、魔獣のいる地点へと向かった。



そこにいたのは、山のような巨体を持つ、黒きイノシシの魔獣。全身が黒曜石のような毛で覆われ、燃えるような双眼がこちらを睨み据えている。



「……これはすげぇな。ジャイアント・ブラックボアか……初めて見た」



「強いのか?」と海人が問うと、桐生がうなずく。



「ああ。普通なら当主か、それに次ぐ実力者が出動するクラスの魔獣だ。一人でやるつもりか?」



「もちろん。その方が燃えるだろう?試したい技もあるしな」



海人の手に、真紅の光が収束し――“奪焔神刀”が顕現する。



同時に、体内の氣が爆発的に膨れ上がり、周囲の空気が揺れた。

三ヶ月の間に倒してきた魔獣たちから奪い続けた膨大な氣――今、その全てが彼の中で燃えている。



「……やれやれ、本当に別人みたいだな」



桐生が肩をすくめた。



海人は地を蹴り、魔獣へと飛びかかる。



「まずは基本からいくぞ――焔木流《爆炎斬り》!」



刀に纏わせた氣が、一閃の炎となって牙を剥く。轟音があたりに響き渡り、斬撃はブラックボアを真正面から捉えた。



その巨体が後退し、地面を抉る。



「まだ立ってるか……なら、これで終わらせる」



海人の瞳が赤く燃え上がる。



「焔木流《炎閃えんせん》」



紅蓮の斬撃が空を裂き、一直線にブラックボアの胸元を貫いた。

瞬間、爆炎が吹き上がり、魔獣の体は真っ二つに断ち割られた。



「……終わったか。思ったより、あっけなかったな」



次の瞬間、海人の体にとてつもない“氣”が流れ込んできた。

今までの魔獣とは比較にならないほどの圧倒的なエネルギー――

それに体が追いつかず、海人は苦悶の声を上げながら膝をついた。



「おい、大丈夫か!?」



「問題ありません。大量の氣を一度に吸収し、適応しきれていないだけです。すぐに慣れます」



ゼロの言葉通り、しばらくして海人はゆっくりと立ち上がった。

そして、青空を見上げながらぽつりと呟く。



「……これで、この島ともお別れか。なんだか名残惜しいな」



「普通、そんなこと言わねぇぞ。ここから出たいってのが大半だ」



「ありがとう、桐生。そしてゼロ。お前たちのおかげで、ここまで来れた。……この恩は、一生忘れない」



「照れるだろバカ」



「私は封印を解いていただいた恩があります。お気遣いなく、マスター」



「さて。島を出る準備を整えよう。拠点に戻るぞ」



何がこの先に待っているのかはわからない。

だが、もはや恐れるものはなかった。



どれほど醜いお家騒動が待っていようと――

俺には、抗う力がある。



待っていろ、焔木一族。

この“奪焔の刃”で、お前たちに俺の進化を見せつけてやる――!

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