76 / 96
第1章
第76話:暴走の勇者を止めろ(勇者side)
しおりを挟む
レグナと蒼真が刃を交える直前――。
張り詰めた空気が場を覆う中、会議はなおも続いていた。
各国の使節たちは魔族による爆破計画を巡って激しく議論を交わし、勇者たちもまた、それぞれの立場から意見を示していた。
その最中――慌ただしい足音が響き、扉が勢いよく開かれる。
現れたのは、王都警備を任された騎士の一団。
先頭の若い騎士が、息を切らしながら頭を垂れた。
「も、申し上げます! 闘技場にて……グラディア王国の勇者、レグナ殿が暴れております!」
広間がざわめきに包まれる。
騎士の報告は続いた。
「観客や用心棒たちに無差別に危害を加え、闘技場は大混乱……!
多数の死傷者が出ており、このままでは市街にまで被害が拡大しかねません!」
「……なっ」
「この緊急時に、何をやっているのですかあの男は……!」
朱音も苛立ちを隠さず、声を荒げた。
「勇者の肩書きで呼ばれたくせに……やってることはただの暴漢じゃない!」
レンが大げさに頷く。
「そうだそうだ! 勇者の名が汚されるなんて迷惑だ! だったら力ずくででも連れ戻すしかない!」
アメリアは静かに頷き、真剣な眼差しで三人を見渡した。
「……同意します。彼を放置すれば、王国の人々が犠牲になる。私たちが責任を持って止めなければ」
隼人が面倒くさそうに椅子から体を起こし、ふっと笑った。
「連れ戻すねぇ……まぁ、暴れる犬は首輪をつけるしかないってことか。
ただ、あいつが大人しく従うとは思えないね」
アメリアが険しい目を向ける。
「だからといって、見過ごすわけにはいきません。彼は最悪の場合、街中で神器を使うかもしれない」
朱音が真っ先に立ち上がった。
「だったら、私が行くわ。あいつを野放しにしておくなんて我慢ならない」
隼人が肩を竦めて笑う。
「おいおい猪突猛進すぎだろ。あいつの槍を正面から受け止めて無事で済むと思うか?流石に朱音でも無理だよ」
「……くっ!」
朱音は奥歯を噛み締め、拳を強く握りしめる。爪が掌に食い込み、悔しさに震える瞳が隼人を射抜いた。
レンがすかさず声を荒げる。
「ふざけんなよ! こういう時こそ俺の出番だろ! 俺が行けば一瞬で燃やしてやれる!」
だが、その語気の強さとは裏腹に、額には冷や汗が滲んでいた。
アメリアは冷静に皆を見渡し、静かに言葉を紡ぐ。
「誰か一人で挑むべきではありません。彼は危険です。状況次第では、私たちにさえ刃を向ける可能性があります」
朱音が眉をひそめる。
「勇者同士で戦うことになるなんて……」
アメリアは首を横に振った。
「だからこそ、力を合わせて止めなければなりません。勇者同士で」
隼人がため息をつき、頭をかいた。
「チームプレイってやつか……正直めんどくさいな」
レンが悔しそうに唇を噛む。
「けど放っておいたら、俺たちまで同類に見られる……やるしかねぇか」
隼人は肩を伸ばしながら、ふと首をかしげた。
「……にしてもさ。そもそも闘技場なんてあったのか? この国に来て結構経つけど、そんな話ひとつも聞いたことがないぜ」
不意の疑問に場が静まり返る。
すると重鎮のひとり、大臣が咳払いをして口を開いた。
「……お恥ずかしい限りです。本来なら即座に取り潰すべき違法な場所。しかし、表向きは娯楽施設として見逃してきたのです。資金の流れや貴族の利権も絡んでおりまして……我々は長きにわたり目をつむってきたのです」
重苦しい言葉に、広間の空気がさらに沈む。
朱音が鋭く睨みつけた。
「つまり、その放置が今の惨状を招いたってわけね」
大臣は歯を食いしばり、深く頭を垂れた。
「返す言葉もございません……」
隼人は鼻で笑いながらも、瞳の奥に冷ややかな光を宿す。
「なるほどね。じゃあ今は、そのツケを俺たちが払わされるってわけか」
アメリアが厳しい声音で応じる。
「ええ。ですが、今は責め立てている場合ではありません。止められるのは私たちしかいないのです」
隼人が気だるげに椅子に背を預けながら口を挟む。
「で、誰が行くんだ? まぁ、俺一人で首輪をつけてこいって言うなら、やらないでもないけど……面倒すぎる」
朱音が睨み返す。
「ふざけないで。あんた一人じゃ不安しかないわ!」
レンも負けじと声を張り上げた。
「だったら俺が――」
そう言いかけて、アメリアの冷たい視線に言葉を飲む。
「いいえ。彼に挑むなら、一人ではなく全員で行くべきです。勇者同士、力を合わせて。それ以外に被害を最小限に抑える方法はありません」
会議の空気が一瞬張り詰める。
やがて、隼人が頭をかきながら小さく笑った。
「はぁ……やっぱそうなるか」
朱音が頷く。
「異論はないわ。全員で行くべきよ」
レンは不満げに唇を尖らせながらも、拳を握りしめた。
「……わかったよ。勇者の名が汚されるのを放っておくわけにはいかねぇ」
アメリアは深く息を吸い、確かな声で結論を告げる。
「決まりです。動ける者全員で行きましょう。必ず彼を止めるために。こんな事に時間を割いている暇はありません」
広間のざわめきが収まり、全員の視線が重なった。
その瞬間、勇者たちの間に初めて同じ使命を背負う覚悟が共有された。
張り詰めた空気が場を覆う中、会議はなおも続いていた。
各国の使節たちは魔族による爆破計画を巡って激しく議論を交わし、勇者たちもまた、それぞれの立場から意見を示していた。
その最中――慌ただしい足音が響き、扉が勢いよく開かれる。
現れたのは、王都警備を任された騎士の一団。
先頭の若い騎士が、息を切らしながら頭を垂れた。
「も、申し上げます! 闘技場にて……グラディア王国の勇者、レグナ殿が暴れております!」
広間がざわめきに包まれる。
騎士の報告は続いた。
「観客や用心棒たちに無差別に危害を加え、闘技場は大混乱……!
多数の死傷者が出ており、このままでは市街にまで被害が拡大しかねません!」
「……なっ」
「この緊急時に、何をやっているのですかあの男は……!」
朱音も苛立ちを隠さず、声を荒げた。
「勇者の肩書きで呼ばれたくせに……やってることはただの暴漢じゃない!」
レンが大げさに頷く。
「そうだそうだ! 勇者の名が汚されるなんて迷惑だ! だったら力ずくででも連れ戻すしかない!」
アメリアは静かに頷き、真剣な眼差しで三人を見渡した。
「……同意します。彼を放置すれば、王国の人々が犠牲になる。私たちが責任を持って止めなければ」
隼人が面倒くさそうに椅子から体を起こし、ふっと笑った。
「連れ戻すねぇ……まぁ、暴れる犬は首輪をつけるしかないってことか。
ただ、あいつが大人しく従うとは思えないね」
アメリアが険しい目を向ける。
「だからといって、見過ごすわけにはいきません。彼は最悪の場合、街中で神器を使うかもしれない」
朱音が真っ先に立ち上がった。
「だったら、私が行くわ。あいつを野放しにしておくなんて我慢ならない」
隼人が肩を竦めて笑う。
「おいおい猪突猛進すぎだろ。あいつの槍を正面から受け止めて無事で済むと思うか?流石に朱音でも無理だよ」
「……くっ!」
朱音は奥歯を噛み締め、拳を強く握りしめる。爪が掌に食い込み、悔しさに震える瞳が隼人を射抜いた。
レンがすかさず声を荒げる。
「ふざけんなよ! こういう時こそ俺の出番だろ! 俺が行けば一瞬で燃やしてやれる!」
だが、その語気の強さとは裏腹に、額には冷や汗が滲んでいた。
アメリアは冷静に皆を見渡し、静かに言葉を紡ぐ。
「誰か一人で挑むべきではありません。彼は危険です。状況次第では、私たちにさえ刃を向ける可能性があります」
朱音が眉をひそめる。
「勇者同士で戦うことになるなんて……」
アメリアは首を横に振った。
「だからこそ、力を合わせて止めなければなりません。勇者同士で」
隼人がため息をつき、頭をかいた。
「チームプレイってやつか……正直めんどくさいな」
レンが悔しそうに唇を噛む。
「けど放っておいたら、俺たちまで同類に見られる……やるしかねぇか」
隼人は肩を伸ばしながら、ふと首をかしげた。
「……にしてもさ。そもそも闘技場なんてあったのか? この国に来て結構経つけど、そんな話ひとつも聞いたことがないぜ」
不意の疑問に場が静まり返る。
すると重鎮のひとり、大臣が咳払いをして口を開いた。
「……お恥ずかしい限りです。本来なら即座に取り潰すべき違法な場所。しかし、表向きは娯楽施設として見逃してきたのです。資金の流れや貴族の利権も絡んでおりまして……我々は長きにわたり目をつむってきたのです」
重苦しい言葉に、広間の空気がさらに沈む。
朱音が鋭く睨みつけた。
「つまり、その放置が今の惨状を招いたってわけね」
大臣は歯を食いしばり、深く頭を垂れた。
「返す言葉もございません……」
隼人は鼻で笑いながらも、瞳の奥に冷ややかな光を宿す。
「なるほどね。じゃあ今は、そのツケを俺たちが払わされるってわけか」
アメリアが厳しい声音で応じる。
「ええ。ですが、今は責め立てている場合ではありません。止められるのは私たちしかいないのです」
隼人が気だるげに椅子に背を預けながら口を挟む。
「で、誰が行くんだ? まぁ、俺一人で首輪をつけてこいって言うなら、やらないでもないけど……面倒すぎる」
朱音が睨み返す。
「ふざけないで。あんた一人じゃ不安しかないわ!」
レンも負けじと声を張り上げた。
「だったら俺が――」
そう言いかけて、アメリアの冷たい視線に言葉を飲む。
「いいえ。彼に挑むなら、一人ではなく全員で行くべきです。勇者同士、力を合わせて。それ以外に被害を最小限に抑える方法はありません」
会議の空気が一瞬張り詰める。
やがて、隼人が頭をかきながら小さく笑った。
「はぁ……やっぱそうなるか」
朱音が頷く。
「異論はないわ。全員で行くべきよ」
レンは不満げに唇を尖らせながらも、拳を握りしめた。
「……わかったよ。勇者の名が汚されるのを放っておくわけにはいかねぇ」
アメリアは深く息を吸い、確かな声で結論を告げる。
「決まりです。動ける者全員で行きましょう。必ず彼を止めるために。こんな事に時間を割いている暇はありません」
広間のざわめきが収まり、全員の視線が重なった。
その瞬間、勇者たちの間に初めて同じ使命を背負う覚悟が共有された。
11
あなたにおすすめの小説
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる