才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇

文字の大きさ
29 / 96
第1章

第29話:まさかの展開

しおりを挟む
戦いが終わった後の控えの間。
蒼真はひとり、静かに汗を拭っていた。
その木刀はすでに鞘に収められている。

そこへ、白装束の少女が現れる。

「天城蒼真――」

蒼真が振り返ると、神代静流が一歩、また一歩と歩み寄ってきた。
その瞳は、戦場で見せた鋭さとは打って変わって、穏やかな光を湛えていた。

「礼を言いに来たの。あなたと剣を交えられたこと、私の剣人生の誇りよ」

「……こっちこそ。あんたと戦えて、剣士として報われた気がする」

ふたりは静かに、向かい合う。
やがて静流が、ぽつりと呟くように言った。

「私、リグゼリアの勇者に誘われたの。あなたも知っているでしょう? 瀬名隼人という男」

「……ああ。あいつが、ここに来てたって話は聞いた」

静流は頷き、少しだけ瞳を伏せる。

「剣の才は本物だった。驚くほどに。でも、心が……響かなかったの。剣を振る理由に共感できなかった」

「……」

「でも、あなたは違う」

静流の声に力がこもる。

「あなたの剣には、重みがあった。迷いがあった。血を吐くような修行の痕があった。そして……誰かの背中を追い続ける、ひたむきな意志があった」

「そんなふうに見えたのか?」

「見えたのではなく、伝わったのよ」

静流は、真っ直ぐに蒼真を見つめる。

「あなたの剣には、迷いも苦悩も、誰かを守ろうとする決意もあった。私は、そういう剣士に惹かれる」

蒼真は少し戸惑いながらも黙って聞いていた。

そして――

「だから、お願い。私をあなたの嫁にしてほしい」

「――――はぁっ!?」

蒼真の目が、まるで木刀で殴られたように見開かれた。

「な、なに言ってんだ、あんたっ!? 嫁って、今言ったのは嫁で合ってるか!?」

「ええ。間違ってないわ」

「ま、間違ってないって……おい!? しかも戦ったばかりで、まだ本名すらちゃんと名乗り合ってないのに!?」

「でも、心は知ったわ。あなたがどんな人間か、どんな剣士か……私にはそれで十分」

「十分じゃないよ!?」

完全に動揺した蒼真が、後ずさる。
だが静流は一歩も引かず、まっすぐに彼を見据えた。

「私の生き方はいつも真っ直ぐ。剣も、想いも、貫くものなの」

「そ、そういう問題じゃなくてな……」

「なら、あなたの答えを聞くのは、今じゃなくていい。けれど、この想いは本気よ」

静流は軽く一礼し、背を向けて歩き出す。

「剣で負けた。なら、女としてあなたを振り向かせてみせる。それだけのこと」

「いや、いやいやいや……! 気持ちはありがたいけどさ……さすがに急すぎないか!?」

「なら、考える時間をあげるわ。でも答えは“はい”しか認めないけど」

静流はさらりと告げて、ふわりと一礼する。
その後ろ姿を、蒼真はしばらく呆然と見送っていた。

「……なにがどうして、そうなったんだ……」

ようやく絞り出した。

蒼真が控えの間で呆然としていると――
背後から、妙に冷えた声が響いた。

「……随分と人気なのね、蒼真」

振り返れば、腕を組んだセリスがそこに立っていた。その横には、頬を引きつらせた柚葉の姿もある。

「な、なんで二人がここに!?」

「応援に来たの。決勝戦、見事だったわ。……その後のプロポーズごっこまで、バッチリ聞かせてもらったけど?」

セリスの笑顔に、なぜか背筋に寒気を走らせる。

「し、静流さんが急に言い出して……! 僕はただの被害者というか……!」

「ふーん……なるほどなるほど。で? 嫁にしたいんだって?」

「ち、違――! その、まだ早――!」

「早いとか遅いとかの問題じゃないっつーの! 何よあの静流とかいう完璧美人!」

柚葉がプルプルと肩を震わせながら、鼻息荒く詰め寄ってきた。

「ずるくない!? ……って、べ、べつにあんたのこと好きとか、そういうんじゃないんだけどさっ!」

セリスも両手を腰に当てながら、軽く溜息をつく。

「これでますます蒼真はモテ剣士の称号決定ね。ふふ、旅に出るのがますます心配になるじゃない」

「はあぁ……どうしてこうなるんだ……」

蒼真は頭を抱えながら、剣より重たい人間関係に目眩を覚えた。

――数日後。

道場の門前に、静かな足音が響いた。
訪れたのは、正装に身を包んだ神代静流だった。

「ここが……蒼真の道場、か」

門をくぐると、道場の子弟たちが驚いたように振り返る。

「わっ……な、なんかすごい美女が来た……!」

「え、あれって……!?」

中にいた柚葉は思わず眉をしかめた。

「……なんで来たのよ、あの剣聖の跡取り」

蒼真が慌てて駆け寄る。

「し、静流さん!? まさか本当に来るなんて……!」

「ええ。だって嫁にしてって言ったでしょ?」

静流はさらりと言い、そっと蒼真の隣に立つ。

「蒼真のすべてを知るためには、彼の過去も知っておきたいと思って」

静流は顔を真っ赤にしながらうつむいた。
周囲の門下生たちは盛大にどよめいた。

「マジかよ……本気で嫁に来たぞ!?」

「えっ、なにそれ、うらやましすぎんだが!?」

「ていうか朱音さんは?浮気!?」

セリスと柚葉も蒼真の背後で仁王立ち。

「羅刹丸との修行でも、こんな混沌はなかったぞ……! どうしたらいいんだよ……!」

道場は、しばらく騒がしい日々が続くこととなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

処理中です...