異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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1章

異世界 02

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 風が吹く。


 木々が大きく揺れる程の、突風。

 コハクには、そう感じた。


「・・・えっ?」

 だが、それは突風ではない。

 それは、人間だった。 


 一匹、また一匹と。

 化け物達が、一瞬でバラバラに崩れ落ちる。 

 想像を超えた速さで、人間が化け物を切り刻んでいるのだ。

 周囲に居た化け物が全て細切れになると、最後に、女性戦士の死体を喰らっている化け物が真っ二つに裂かれる。


 そこには、一本の剣を握る青年が立っていた。

 唖然と立ち尽くすコハク。



「不審者を発見」

 その時、コハクの後ろから少女の声が聞こえる。

 コハクが振り返ると、そこには声相当の小柄な少女がコハクへ向け剣を向けていた。


「ひっ!?」

 思わず声を漏らすコハク。

 それは銀色の長髪をしている、無表情な少女であった。


「待ってください式利さん!」

 そこへ、また声が聞こえる。


「気を付けて、フローラ。今不審者と対峙している」


「もう、式利さんは相変わらずなのですから。この人を良く見てください。剣も持ってなければ鎧も着てないです」

 フローラと呼ばれた少女が、ウェーブのかかった柔らかく長い髪を揺らしながらコハクに近付く。

「魔術師である可能性は否定できないです」

 式利と呼ばれた少女は、相変わらずコハクを警戒している様である。


「そうでしょうか? というかこの人、逆に怯えてるじゃないですか!」

「私ではなく、魔物に怯えていたのでしょう」

「え、えっと・・・」

 どういう状況なのか判断できずに2人を見るコハク。

「あの、大丈夫ですよ! 私達は貴方に危害を加える訳ではありません。状況がわからなくて困っているのですよね?」 

 フローラがコハクの顔を覗き込む。

「不用意に近付いて、噛みつかれても知りませんよ」

「またそんなこと言って。大丈夫ですよ・・・ね? 噛みついたり、しないですよね?」

「あ、はい・・・」

 そう言いながら、コハクに微笑むフローラ。

 日向に当たっている様な柔らかくて優しい彼女の表情に、コハクは思わず見とれてしまった。


「さぁ、行きましょう。この森であまり留まっていると危険です」


「え、行くって、何処にーーー」

 コハクがそう問いかけた瞬間。

 木をへし折る騒音が、コハクの声をかき消し、生い茂る木々の中で巨大な影が蠢く。


 ぎらぎらとした鱗を纏う巨体。

 爬虫類系の生物に見えるが、それよりもずっと洗練されたデザインのそれは。

 まさしく「竜」である


 段々とその幻想的な恐怖の全貌が見えてくると、更に非現実的な光景が目に映る。

 「竜」の足元に、一人の少女が寄り添っているのだ。

 黒を基調としながらも派手な服装に、燃える様な赤い片目を持つ、まるでゲームの中から飛び出した様な、

 強い存在感を持つ少女である。

「なっ・・・何、あれ」


 目の前の非現実的な存在に、コハクは思わず身体が震えるのを感じた。

 竜に寄り添うオッドアイの少女はその赤い目でこちらを見ると、

 楽しむかの様に口角をあげ、くくく、と笑い声を漏らす。


「まずい、2人は早くその異界人を連れて先に行け。あいつの相手は俺がする」

「いいえ。ここは私もご一緒します」

 剣を握る青年と銀髪の少女は、向かってくる巨大な竜と少女の前に対峙する。

「いいのか? あんなに警戒していたのに、フローラ一人に任せるなんて」

「フローラさんでしたら大丈夫でしょう。それに、彼よりもあの中二病見たいな格好した竜使いの方が危険だと思います」


「そうか。じゃあそうしよう。フローラ、その少年は任せたぞ」 

 フローラは「はい」とハッキリした声で返事をすると、コハクの手を取る。

 目の前に巨大な竜が迫るこんな状況でありながらも、

 コハクは少女の手の柔らかさに思わずどきりとしてしまった。 


「さぁ、行きましょう」

「あ、あの、一体!?これから何処へーーー」

 その瞬間、付近で白い光が瞬き、凄まじい爆発が起きて木々を薙ぎ倒す。

「ひぃっ!? な、何!?」


 それは、竜の吐き出したブレスであった。

 もし命中していれば、跡形も無く消し飛んでいた事だろう。


「ここは危険です! 説明は後でしますので、逃げましょう!!!」

「は、はい!」 

 そうして、フローラはコハクの手を引いて走り出した。
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