異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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1章

ヴァーリア国と英雄 02

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 シンキに連れられ、コハクと竜使いの少女は軍隊長の部屋へと案内されていた。

 コハクは、隣にいる竜使いの少女が突然竜を呼び出すのではないかと密かに警戒していたが、少女は特に抵抗する事もなく、大人しくコハクの隣に並んでいる。

 ちなみに、彼女の腕には手錠かかけられている。


「カギツキ隊長。異界人の二人を連れてきました」

 その部屋の壁には、剣や槍、それに見たこともない形状の武器がいくつも並んでおり、コハクは妙に重いプレッシャーを感じた。

 そして部屋の奥には、椅子に腰をかけた軍服姿の女性と、いかにも魔法使いといった風貌のローブを羽織った女性が椅子に腰をかけている。


「ようこそ。異界人の二人よ」

 軍服姿の女性が、剣の様に鋭い目でコハクと竜使いの少女を視る。


「私はカギツキ。このヴァーリア国軍の軍隊長だ」

 その視線に、コハクは異様な程の威圧感を感じた。

 しかしコハクの隣にいる竜使いの少女は、コハクとは違いこの状況を楽しんでいるのか、にやりと笑っていた。


「くくく。おい、軍隊長とやら。何故、我がこの様な見知らぬ土地にいるのか説明してもらおうか?」

 未だに少女の腕は手錠で拘束されているのだが、そんな状態でも少女は強気であった。


「ここはヴァーリア国。そしてお前ら二人は別の世界から現れた"異界人"だ」

 軍服姿の女性・カギツキが椅子から立ち上がる。

「別の世界・・・」

 やはりここは異世界だったのかと再納得するコハク。 


「良く聞け、異界人の二人。お前達はもう実際に見ただろうが、このヴァーリア国の周りには危険な魔物が数多く潜んでいる。ヴァーリアの兵士達は日々その危険な魔物共を狩り、国の平和と繁栄を支えてる」

 カギツキの話を聞いたコハクは、林で遭遇した魔物、そして目の前で食い殺された戦士の少女を思い出した。

「兵士となる者は、18歳以上の男子、魔法の適正がある者、自ら名乗り出て試験受け合格した者。そして、お前らの様な"異界人"だ」


「兵士・・・異界人・・・?」

 つまり、自分もあんな魔物と戦う事になるのか? と。コハクは不安を感じた。

「つまり、お前達は我の力を借りて魔物を倒したい、という事だな?」


 竜使いの少女が、カギツキへ向かって一歩前に出る。

「だが、我だって好きでこの世界に来たワケじゃない。悪いが、早いところ元の世界に帰らせてもらうぞ」

「・・・異界人にはクセの強い者が多いが、お前も中々におかしな奴だ」

 ふん、とカギツキは鼻で笑い、話を続ける。

「言っておくが、今現在お前達を元の世界に帰す方法は無い」


「・・・っ!」

 コハクは、そう簡単に元の世界に帰れないだろうと覚悟はしていた。

 だが、いざ「戻る方法がない」とハッキリ言われると、言葉に出来ない不安が渦巻くのを感じた。



「何? 我は元の世界に帰れないのか?」 

 肝が据わっているのか、竜使いの少女はコハクと違いあまり不安を感じている様子はないが、あまり良い気分ではない様子である。


「誰が何故、どの様な方法でお前ら異界人をこの世界に転移させたのかは我々にも判らない。そして帰す方法が判らない以上、お前達に選択肢はない」

 ひとつ間を置いて、カギツキが告げる。

「前達は、今この時から、ヴァーリア国軍の兵士だ」


「・・・ふむふむ、そうか」

 竜使いの少女は少し悩んだ後、懐から数枚のカードを取り出す。

 一体、この少女が何をしようとしているのかコハクには分からなかったが、あまり穏便ではない事が始まるのではないか、という予感を察した。


「・・・我が名はアルスフォード。カードに選ばれし最強の魔術師だ。

我を兵士として従えたいと言ったな? であれば、まずは我と戦いその力を見せ・・・ッ!?」

 アルスフォードが手錠をかけられた両手を前に突き出したその瞬間。


「ひいっ!?」

 アルスフォードの身体が吹き飛び、そして出入り口のドアを突き破る。


 部屋の外からは、皆の驚いた声が聞こえる。

 そしてカギツキは手をかざすと、廊下に転がっていたアルスフォードは見えない何かに引っ張られ、部屋まで引きずり戻される。 


「うぐ・・・な、なんだ今のは!? いきなり何をするんだ!!!」

「勝負を望んだのはお前だろう」

「ふざけるな! 勝負はこれからっ・・・!!!」

 アルスフォードはぐぬぬ、と唇を噛みながら起き上がるが、カギツキの操る見えない力が上から圧し掛かり、アルスフォードは再び床に叩きつけられた。


「言っておくが、これはこの国の法で決まっている事だ。お前達に決定権はない」


 アルスフォードという少女は、森で巨大な竜を従えていた。

 あんな巨大な魔物を従える彼女は、恐らく相当な強者なのだろう。

 しかし、そんな彼女がこうも容易くあしらわれている光景に、コハクは呆気にとれていた。


「寝床くらいは我々が用意しよう。お前らが"兵士"としてヴァーリアに尽くすのであればな」

 
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