異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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2章

狂った異能の異世界転移

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 ヴァーリア国外・危険度Aランク帯。


「"乱れ"が観測されたのはこの辺か?」

「ああ。地図によればもうすぐだ」

「乱れが観測されて、結構時間が経ってますから、もうこちら側に来ているかもしれませんね」


 3人の戦士達が、会話をしながら林を進む。


 彼らの任務は空間の歪みの調査、すなわち別世界から異界人が来たかどうかを調べる事である。

 今は昼間であるが木々の生い茂る林は薄暗く、

 あまり視界の良くない林の中を、3人は注意深く観察し、進んでいく。 


「血の気の多い奴が落ちてこなけりゃいいんだけどな」

「でもその方が兵士として優秀かもしれませんよ」

「けどよ、この前みたいなデカイ竜やら召喚してくる様な奴は相手したくないぜ? ・・・ん?」


 先頭を進む、体格の良い戦士が何かに気が付いて立ち止まる。


「人だ。あそこに誰かいるぜ」  

 大柄な戦士が、林の奥を指さす。

 どうやら誰かを発見したらしい。


 生い茂る木々の間から、人影が見え隠れする。

「ああ、見えた。異界人かもしれないな」

「気をつけてください。先日、人間に化ける魔物が現れたという話がありましたから」


 3人は人影へ向かい歩き始める。

 ある程度近付くと、その人影の風貌がはっきりと見えてくる。 

 反対の方角を向いている為顔は見えないが、古臭さを感じる長いローブに身を包んだ人物である。 


 3人の戦士たちが近付く事に気が付いたのか、ローブに身を包んだその人物はゆっくりと頭だけ動かし、後ろを振り向く

 ローブを深く羽織っており、その顔は確認出来ない。


「おい、そこの奴、聞こえるか?」

 兵士の一人は手を振り合図するが、ローブ姿の人物から返事はない。

「もう少し近付いてみましょう」

「そうだな」


 3人は草木を避けながらローブ姿の人物へと近寄る。


「おう、ここで何をしてーーー」

 十分に近付き、兵士の一人がもう一度声をかけた時。

 ローブ姿の人物は、3人へその全身を向ける。


「おい、嘘だろ」

 それを見た3人の表情は、驚愕へと変わる。


 ローブ姿の人物が、人間の死体を掴み上げていたからだ。

 その死体は今さっき死んだばかりなのだろう、まだ大量に血が流れている。


「魔物か!? いや、コイツは・・・!?」

 そしてその人物は左腕で死体の頭部を掴むと、ぐしゃりと握り潰した。


 よく見れば、彼の左腕はドス黒く、人間の物とは思えない程に異形の姿をしていた。


「コイツ・・・!」 


 3人の兵士は剣を抜き、ローブの人物へ剣を向ける。


 その瞬間。

 ローブ姿の人物が、兵士に襲い掛かる。


「この・・・ッ!!!」

 兵士が剣を振るい、ローブ姿を斬り払う。

 振るわれた刃が襲撃者の身体を捕らえるが、しかし。


 ローブ姿の襲撃者は剣の一撃に怯む事なく、逆にその異形の左腕を突き出し、兵士の胸部を貫いた。

「うぐァッ・・・!?」

 そして襲撃者は兵士の首を掴むと、そのまま頭部を引きちぎる。  

「なっ!? テメェ、よくも!!!」


 それを見た大柄な兵士が、ローブ姿へ向け剣を振り下ろす。  

 兵士の振るう剣が、ローブの人物を斬り裂く。


 襲撃者の羽織っているローブが大きく裂かれる。

 しかし、剣は間違いなく身体を捕えたにも関わらず、襲撃者は血の一滴も流さない。


「おいおい、なんだよ、ふざけやがって・・・!!!」

 兵士が振るった剣は、まるで水でも切ったかのように全く手ごたえを感じなかったのだ。


 襲撃者は首だけ動かして背後にいる兵士を睨むと、後ろに脚を突き出して兵士を蹴り飛ばす。

「ぐぁ!?」

 その一撃で、兵士の大柄な身体が大きく突き飛ばされる。


「くっ・・・!!!」

 魔術士の兵士が虹色の魔法弾を乱射するが、しかし放たれた弾丸は全てローブ姿の襲撃者をすり抜けていく。


「こ、これは透過の魔法!? ですが・・・!!!」
 襲撃者は放たれる魔法の弾丸を物ともせずに高速で魔術士に接近すると、左腕の黒い刃でその身体を貫いた。


「ぐはッ・・・!!!」

 黒い刃が魔術士の身体を貫通する。


「ぐっ・・・、こうなれば、仕方、ありません・・・!!!」

 魔術士は口から血を吐きながらも、両腕に魔力を込め始める。


 その両腕から虹色の霧が溢れ出し、やがて魔術士の身体を覆い尽くす。


「お、おい!!! お前、何する気だ!?」

 大柄な兵士は、立ち上がると魔術士の元へ向かい駆けつける。

 だがその瞬間、魔術士の身体を覆っていた魔力が眩しい光を放つ。


「だ、ダメです!!! 離れて、くださいッ!!! 巻き込まれますから!!!」

「お、お前ッ・・・!?」


 そして、魔術士の青年はローブ姿の襲撃者もろとも爆発した。


「ぐッ!!!」

 即席で展開した結界が、飛び散る石や木の破片から大柄な兵士の身体を護る。 


 やがて爆発が収まり、辺りは土ぼこりと煙に覆いつくされた。  



「うっ、ゲホッ、ゴホッ! クソッ! なんでこんな事に!!!」

 大柄な兵士は悪態を付きながら、八つ当たりか近くに生えている木を殴りつけた。



 その時。

「ッ・・・!?」


 土ぼこりの中から人影が飛び出し、そして大柄な兵士の背中を刃で貫いた。


「な、なんで!? まだ生きて・・・!?」

 現れたのは、爆風によってローブを剥ぎ取られた謎の襲撃者である。



 その姿は、長い金髪に、女性にも見える中性的な顔立ちの青年であった。

 青年は左腕の黒い刃を振るい、大柄な兵士に深く突き刺して止めを刺す。


 そして刃が引き抜かれると、大柄な兵士の身体はぐらりと揺れ、地面に倒れこんだ。



「・・・今日は豪勢だな」 

 地面に倒れた3人の兵士達を眺めながら、ローブ姿の人物が呟く。


「これだけご馳走があれば、流石の君も満足だろう? ・・・なんだ、こんな筋肉質な人間じゃなくて、もっと食べやすい奴が食べたいのかい?」

 その口調は、まるで誰かと親しく会話をしているかの様であったが、しかし彼の周りに生きている者は誰もいない。

「全く、贅沢な子だなぁ。君は」

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