異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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2章

思わぬ発見 01

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「あー、街ってこんなに平和だったんだ・・・」

 特に何も起こらないまま昼が過ぎた。


 ちなみに、警備の兵士達は基本、単独行動だ。

 街にはコハクと式利の他にも、数人程の兵士が見回りに出ているのだが、移動手段は徒歩である。

 この街は特別広いわけではないが、人間が徒歩で見回り出来る範囲には、限度があるだろう。

 なので、班を組み固まって行動するよりも、それぞれで別れて見回りする方が効率良いのだ。


「使い魔からの景色も、異常なし、と」

 建物の屋根に待機させてる使い魔から、街の景色を眺める。


 式利が言っていた通り、街には異界人が多いのだろう。 

 道を行き来する人の格好や建物は、中世的な物と異なり、何処と無く現代風なセンスが見える。


 そうしてコハクがしばらく使い魔から街を見ていると、かれて警備に就いていた式利から、デバイスにメッセージが届いた。

 メッセージには「私は少々寄るところがあるので、先に昼飯を済ませておいて下さい」と書かれている。


「・・・今日もまたボッチ飯かぁ」

 コハクは式利という少女に対して、普段の冷静な様子から「クールでカッコイイ」という印象を持っていた。

 だが良く見れば、どこか幼さを感じる可愛らしい顔立ちをしている少女でもある。

 いつも緊張感ある場面で会う事が多い為、あまり異性として意識した事がなかったのだが、良く考えると今のこの状況は中々美味しいのでは? などと、ついそんな事を思ってしまうコハクである。 

(って、なにさこの恋愛思考!? いつもより平和な任務だからって、浮かれちゃダメだ・・・)

 コハクは自分に戒めの言葉を聞かせながら、何処か昼飯に良い店は無いかと、街をふらつき始めた。


「あ、そうだ」

 ふとコハクは何かを思い出し、来た道を引き返して小道に入った。

 コハクがいた元の世界、日本と比べればヴァーリア国には娯楽と呼べる物は少ない。

 全く無い、という訳はないのだが、元の世界の様に電子機器が発達しておらず、テレビやパソコンは存在しない上、異界人の殆どが兵士と成らざるを得ないのだから、当然だろう。

 そんなヴァーリア国だが、コハクは先程見回りをしていた時に、気になる場所を見かけたのである。

「確かこっちの方向だったと思うけど」

 コハクは上空に飛ばした使い魔の視点を地図の様に利用し、目的地を目指す。

 そうしてしばらく道なりに歩いていくと。


「・・・あっ、見つけた」

 目を引く格好をした少女が、道で客引きをしているのが見えた。

 少々派手な魔導士の服装にも見えるが、胸や腹の露出が多く、スカートも短い。

 服の生地も、戦闘用のものとは思えない。


「さっきと違う子だけど、あれってやっぱり、アニメのキャラだ・・・」

 その服装は、アニメで見たことのあるキャラクターの物ととても良く似ていた。

「流石に、本物のキャラクターな訳ないよね? コスプレなのかな?」

 異世界では見ることが無いだろうと思っていたコンテンツに、コハクは思わず目を奪われてしまった。

 そうしていると、笑顔で客引きをするコスプレの少女が、コハクに気が付いた。

 コハクの姿を見た少女は、一瞬驚いたような表情を見せると、じっとコハクを睨み付けた。


「あれ、あの子って・・・」


 服装ばかりに目が行って気付かなかったが、長い黒髪に冷たい表情の少女を、コハクは見た覚えがあった。  

 カノールの店にいた、雪妃という少女だ。  

(ちょ、待っ・・・なんであの子がこの街に!? しかもあの格好は・・・!?)


 そう考えていると、コハクは肩を思い切り掴まれる。

 コハクが顔を上げると、雪妃がいつの間にか目の前まで迫っていた。


「ねぇ、あなたコハクでしょ?」

「え、はい。そうですが・・・」

 雪妃があまりにも凄い気迫で迫って来たので、コハクは思わず一歩後ろに下がってしまった。


「この事は忘れなさい。そして絶対誰にも言わないで。特にカノールには」

「わ、わかった。誰にも言わないから」   

 間近で雪妃と顔を合わせるのは気まずく感じて、コハクは視線を落す。

 すると、今度は衣装のせいで露出された胸の谷間が目に入ってしまった。


「そう。なら良かった。・・・それと、そんなに変な目で見ないで」

 ぎこちない様子で、雪妃は胸元を手で隠した。 


「ご、ごめん。なんだか懐かしくて」

「懐かしい? あなたこのキャラ知ってるの?」

「あ、うん。アニメを見たことがあって」

「ふーん。そうなの」


 二人が立ち話をしていると、店から出てきた一人の少女が近寄ってくる。

 少女もまた、雪妃と同じようにアニメで見たことがある可愛らしい衣装に身を包んでいた。


「こんにちは! お兄さん! さぁ、よかったらお店寄って行っ・・・って、ちょっと雪妃ちゃん!? なんて怖い顔してるの!?」

 雪妃の不機嫌そうな表情を見て驚く少女である。


「あー、この人は顔見知りだから別に良いの」

「そなの? じゃあ丁度いいね。お店にご案内しまーす!」


「え、あの、ちょっと!?」

 少女はコハクの手を握り、強引に店へと連れていく。

「お兄さん初めてだよね? じゃあ割引にするからさぁ」

 そう言いながら、少女はコハクに手を絡ませた。 


「あ、あの!? 待ってこの店って何!? 初めてってどういう!?」

「え? あ、別にエロい事するお店じゃないからね?」

「あっ、うん!? ってそうじゃなくて!」

 コハクは顔が熱くなるのを感じた。


「あれ、もしかして何か用事あったり? もしかしてデートとか? 彼女さんが待ってるとか?」

「いや、彼女はいないけど! 今は昼休憩で、この後仕事が・・・」

「なるほど彼女は無しねぇ。この異世界で恋人もなく一人でいるのは大変でしょう? このお店に来れば、きっと楽しいですよ?」

 そう言いながら、少女はコハクに顔を寄せる。 

「こ、ここって本当にいかがわしいお店じゃないんだよね・・・!?」

「違いますよ?」


「はぁ。相変わらず強引な客引きね」

 そんな少女とコハクのやり取りを、雪妃は冷めた目で見ている。


「あっ、そういえば雪妃ちゃんのお友達なんだっけ。うーん、なるほどなるほど」

 少女は一人でぶつぶつと言いながら、コハクと雪妃を交互に見て、にやりと怪しげに笑う。


「わかった、わかったよ。客引きは別の子に任せるから。雪妃ちゃんとお兄さんは私と一緒に来てくださいねー?」

 少女は、コハクに続いて雪妃の手も掴み、一緒に店へ引っ張り込んでいく。 


「なっ、なんで私も一緒になのよ!?」

「雪妃ちゃん客引き嫌いって言ってたじゃん? だから私が気を使ってあげたの!」

「今、絶対にそんな事考えてなかったでしょ!?」

「いいからいいから、入った入ったー」

 少女に引っ張られ、コハクと雪妃は店の中へと連れ込まれて行くのであった。

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