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2章
夢に見る
しおりを挟む「ねぇ、コハクってさ」
雪妃がコハクの耳元に顔を近づけて呟く。
ぞくりとする心地よい感覚に、コハクはどうすれば良いのかわからなくなり、その場で固まってしまった。
「コハクって、童貞なの?」
「な、な、な、いきなり何!?」
「その反応、やっぱり童貞なんだ」
慌てるコハクを見て、雪妃が楽しそうに笑う。
「そ、そうだけど、童貞だけど・・・何さ?」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、女の子と手を繋いだ事は?」
「え、えっと、わかんない。も、もしかしたら幼稚園の時とか、小学校の授業とかであるかも」
「もう、そういうのはナシだよ」
「え、えぇ・・・?」
なんで自分は雪妃に質問責めされているんだ!? とコハクが思っていると。
その時、店の入り口が乱暴に開いた。
そして、黒いローブに身を包んだ、見るからに怪しい人物が入ってくる。
「・・・ッ!」
何故だか分からないが、あの人物は"強盗"だとコハクは直感で理解した。
「雪妃さん、隠れて・・・! あれ?」
気がつくと、さっきまで隣にいたはずの雪妃が、いなくなっていた。
コハクが後ろを振り向くと、雪妃が店の裏へと逃げていく姿が見えた。
「ま、待っ・・・!」
いつの間に逃げたのかと思いながら、コハクは雪妃の後を追いかけようとしたが。
「ひっ!?」
その瞬間、コハクの目の前を虹色の魔法弾が横切った。
強盗が放ったものだ。
「ぐっ!? あいつ・・・!!!」
コハクは反撃しようと腕に魔力を込めるが、しかし。
いくら魔力を注ごうと、魔法が発動しない。
「な、なんで!? 一体、どうなってる・・・!?」
強盗は腰にかけた剣を抜き、コハクへと迫る。
魔法も使えず、武器も持たないコハクは、もう逃げるしかない。
雪妃の逃げた後を追って、店の裏へと走るコハク。
だが、足は沼に浸かったかの様に重く、上手く走れない。
「何なんだよ一体・・・!!!」
もはや足だけでは進めず、コハクは4速歩行の獣の様に両手を使って前へと進む。
「ぐっ、くそっ!!! なんなんだよ・・・!!!」
こんな状態では、逃げ切れない。
コハクがそう思った瞬間。
***
「うぐぅ・・・」
コハクが目を覚ますと、カーテンの隙間から朝日が差し込むのが見えた。
剣を持った強盗も、雪妃の姿もない。
ここは、コハクの自室である。
「うぇぇ、変な夢見た・・・」
コハクは一度、ベッドから身体を起こしたものの、もう少しだけと言い聞かせながら、コハクはまた枕に頭を落とした。
「最初の方は、いい感じの夢だったのに・・・」
***
コハクが初めて警備の任務に就いて一週間
警備は毎日ある訳ではなく、おおよそ三日に一回程の割合で依頼が周って来た。
コハクは、担当となる街が毎回異なる事は少し残念に思ったが(雪妃に会えないので)街をゆっくりと観察する事が出来るのは、良い刺激になると感じていた。
一度、反乱者が多く住んでいると噂の街を警備した時は、何度か"拘束魔法"を撃つ羽目になったのだが、それも良い経験というものだろう。
コハクはいつもも通り、任務へ出る為に受付へと向かった。
「おはようございます
コハクは警備の依頼が来ていないかと期待しながら、受付の女性に証明書を提示する。
ちなみに、警備の任務が無い場合は当然、外で魔物を狩る事になる。
「おはようございます、コハクさんですね。えーっと、今日は警備の依頼が来てますね」
コハクは受付の女性から書類を受け取ると、その場で任務の場所を確認した。
「あっ」
今日の警備の場所は、雪妃の働く店があるあの街であった。
「よ、よし!」
嬉しさの余り、つい声が出てしまった。
「あの、どうしました?」
受付の女性の不思議そうな目線が、コハクに突き刺さる。
「な、何でもありません! い、いってきます!」
「はい、いってらっしゃい」
気恥ずかしくなり、コハクは逃げる様に小走りで馬車の停留所へと向かった。
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