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2章
恋してる者は大抵、挙動不審 01
しおりを挟む何か事件が起きるのは、決まって人の目が付かない裏路地だ。
コハクはそういった街の死角に使い魔を待機させ、監視カメラの様に監視させていた。
使い魔は術者本人が操作しなくても、何らかの命令を指示しておく事が出来る。
例えば、使い魔の視界に動く物体が映った際に知らせたり、特定の人物を尾行させたりなど。
使い魔がどの程度複雑な作業をこなせるかは、当然ながら術者本人の技術による。
時間は既に昼過ぎで、日が傾き始めていた。
「はぁー」
コハクはため息を吐きながら、人通りの少ない路地の隅に腰を下ろした。
そして、監視カメラの様に待機させている使い魔の様子を順番に確認していく。
使い魔越しに見える景色には、ちらほらと人が歩いているのが見えるが、何か問題が起きている様子はない。
今日一日で、コハクが反乱者と遭遇した回数はゼロだ。
"反乱者"と呼ばれている者達もさまざまであり、実際に"反乱"の様なテロ行為を起こしている者は稀である。
治安が悪い街であれば、現実世界で例えるなら暴走族だったり、違法な薬物を売買していたりと、そういう者達も多いが、今コハクがいるこの街の様な治安の良い場所であれば、いるのは住む家の無いホームレスの様な者達である。
そうして使い魔達の見ている景色を順番に眺めていくと、とある場所で目が止まった。
その視界に、一際目の引く格好の少女・雪妃彩香が映る。
使い魔が見ている場所は、丁度雪妃の働く店がある通りであった。
「って、これじゃあ、ストーカーじゃん!」
本音を言えば、コハクはちょっとした期待を込めてその近辺に使い魔を設置したのだが、いざ実際に使い魔越しに彼女の姿を見ると、急に罪悪感に襲われた。
ちなみに、使い魔は非常に汎用性が高く便利だが、それ故にその使用は非常に厳しく制限されている。
万が一、使い魔を用いて犯罪行為を行えば、一発で牢屋行きであり、最悪死刑である。
とはいえ、今のコハクの使い方であれば、全く警備の任務として認められる範囲なのではあるが。
「・・・折角だから、挨拶くらいしておこうかな」
そろそろ昼休憩の時間でもあるし、と呟きながらコハクは腰を上げる。
(そう、これは偶然警備をしていたら通りかかっただけ・・・)
そうしてコハクは、自分に言い訳を聞かせながら、雪妃がいる店の方向へと歩き出した。
そんなコハクの姿を、街角の影からこっそりと視ている人影がいた。
***
「・・・」
コハクは雑貨屋の角から顔を出し、通りの様子を伺う。
通行人は数人程で、客引きをしている雪妃の姿はすぐに目に入った。
コハクはまるで、これから高い買い物でもするかの様な緊張感を感じたが、意を決して通りに入ろうとした。
しかしその時。
「・・・コーハークーさーんー?」
コハクのすぐ後ろから、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
「ひっ!?」
コハクが恐る恐る後ろを振り向くと。
そこにいたのは、フローラであった。
「なっ、なんでフローラさんがこんな所に・・・!?」
「もう、なんでとは失礼ですね。私だって色々用事があるんですよ?
というか、コハクさんこそ何してるんですか? さっきから怪しい動きしてましたけど・・・」
「・・・そんなに怪しかった?」
「親に悪い事を隠している子供みたいでしたよ? それで、そこに何かあるのですか?」
「あー、いや。何もないですよ、そこには!」
通りを覗き込もうとするフローラを、身体で上手くブロックするコハク。
「うそです! だったらなんでそんなに必死に隠すんですか! 何を隠してるんですか!」
「み、見回りです! 警備の任務してたんです! 危ないのでフローラさんは下がっていて下さい!」
コハクはフローラの両肩を掴んで、雪妃がいる通路から遠ざけていく。
「警備の任務ですか? そういえば、式利さんが言ってました!」
「そうなんです! 最近、式利さんに警備の任務を紹介されまして!」
「へぇー、そうだったんですか・・・と、みせかけてえーーーい!!!」
コハクが上手く誤魔化せたと油断している所、フローラがコハクの脇腹を掴んでくすぐり出した。
「ひぎゃああああああ!?」
「ふふふ、コハクさんって脇腹が弱いんですね! かわいいですー」
「あぁっ! フローラさんってば!!!」
そうしてフローラはコハクをひらりと避けると、雪妃がいる路地へと入っていく。
「えーっと、あれ? あの子って・・・もしかして雪妃さん?」
フローラが雪妃の姿を見つけるのに、時間はかからなかった。
それは雪妃の方も同じである。
雪妃は「げっ!?」と驚いた声を漏らすと、挙動不審な様子で店内へと逃げ込んでしまった。
「・・・ははーん、なるほど」
フローラが、にやにやと笑いながらコハクを見る。
「な、なんですか、フローラさん? 僕は街の警備をしているだけですよ?」
「ふふーん、お姉ちゃんに隠し事とは、イケナイ子だなぁ。これはちゃんと確かめなきゃいけないなぁ」
「あっ!? ちょっとフローラさん!!!」
そしてフローラは、ふんふんと楽しげな様子で店内へと入っていった。
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