48 / 80
3章
容赦のない任務
しおりを挟むヴァーリア国内。南方面にあるとある街。
その一角で、不気味な程真っ赤な火柱が上がる。
悲鳴を上げ、反乱者達が逃げ惑う。
その様子を、カグリと仲間の兵士達が建物の屋上から見下ろしていた。
「ホラホラ、さっさと行けー。偉そうな奴か、女を捕まえろ」
カグリの指示を受けた兵士達が建物の屋上を駆け、そして躊躇なく屋上から飛び降りる。
「さーてと」
カグリは、裏路地へ逃げる一人の反乱者の女性を見つけると、その獲物へ狙いを定めて、屋上から飛び降りた。
風の魔法で着地の衝撃を和らげ、カグリが地面に降り立つ。
そして、その風の魔法の形式を変化させると、鋭い風の刃へ変化させ、逃げ惑う反乱者へ向けて発射する。
放たれた無数の風の斬撃は、反乱者の片足を切断した。
「ひっ、ひぃぃ!!! いやぁぁぁ!!!」
女性の反乱者が、自分の切断された片足を見て悲鳴を上げる。
「おっと、気絶しないでよ? 話がしたいから、殺さないでおいたんだからさぁ」
カグリはひょこひょこと楽しげな足取りで反乱者へと近づく。
「こんな道の真ん中じゃあ、ゆっくりお話しも出来ないでしょ。ちょっとこっちに来てくんないかな?」
カグリは傍にある建物のドアを蹴りで壊すと、反乱者をゴミの様に引きずって建物の中へと連れていく。
「さて、無駄話しているヒマはないから単刀直入に聞くけどさ、この男知らない?」
カグリが手にしている紙には、殺人犯であり救世主であるユークリウッドの姿が映っていた。
「ひぃぃ、ぁぁっ、し、知らない、知らない!!!」
女性の反乱者は目を見開き、震える声でそう答える。
「ホント? よーく見て? コイツは最近現れた異界人で人殺しなんだけど、知らない?」
カグリは反乱者の傍に寄り、ユークリウッドが写っている写真を、女性の顔に突き付ける。
「コイツがさぁ、君ら反乱者と仲間だっていうのはもうわかってるから、嘘はつかないでね?」
「いぃぃ、嫌ぁぁぁ!!! 誰かぁぁぁ!!!
反乱者は残っている力を絞り出して、床を這いずり逃げようとする。
「誰か助けっ・・・!!! ぎゃあああ!!!」
だが、カグリはそんな反乱者の脚、切断された傷口を掴んで、逃げるのを阻止した。
「言っとくけど、アンタはあと少し経ったら出血多量で死ぬ。わかる?」
カグリは反乱者に近寄ると、野良猫に接する様に優しく頭を撫でた。
対する反乱者は、目の前の悪魔に恐怖してガクガクと身体を振るわせる。
「早く傷を手当しないと、アンタは死んじゃうワケ。だから、早く知ってる事を私に話してくれないかなぁ?」
血の匂いが漂うこの空間とはとても不釣り合いな、楽しそうな笑顔を浮かべるカグリ。
「あ、ぁぁぁ・・・!」
弱弱しく声を漏らしながら、女性の反乱者は首を縦に振った。
***
「さぁーて、こんなもんかなぁ?」
カグリは腕を伸ばして一息付く。
先程の部屋には、幾つもの反乱者達の死体が転がっており、
兵士達がその処理を始めている。
死体の中には、カグリが最初にこの部屋で拷問した女性の死体もあった。
「カグリさん、女性を生かして連れてこいと言ったのは何故ですか? 偉い位の者を狙うのは、詳しい情報を知っている為だと分かりますが」
一人の兵士が、カグリにそう尋ねる。
「そりゃあー、情報を聞き出しやすいからだけど? 女ってさぁ、自分が助かる為なら結構何でも話してくれるんだよねぇ」
「まぁ、錯乱して会話にならない奴もいるんだだけど」と付け足すカグリ。
「うっ、うぇ・・・」
そんな中、死体を見て気分を崩したのか、一人の若い兵士がその場で嘔吐する。
「おやおや、どしたの少年」
カグリはにやにやとした顔で、少年の兵士へと近寄る。
「うぐ、すいません。慣れていなくて」
「ほぉー。人間と戦うのは初めてかいな?」
「いえ、何度か反乱者と戦った事はありますが、こんなに酷い場面は初めてで」
「ふーん。あのさぁ、どう思った?」
カグリの質問に、少年は「えっ?」と声を漏らす。
「この異界人の死体を見て、どう思ったかって事」
「え、えっと、それは。正直に言いますと、見ていられないです」
「そ。じゃあ、キミは反乱者を殺せる?」
カグリは相変わらずにやにやと笑っているが、しかし質問された少年は少しも笑う事など出来なかった。
もし、彼女の機嫌を損ねる答えを返してしまったら、どうなるのかが恐ろしかったからだ。
少年の脚は小刻みに震え出していた。
「め、命令であえば、それに従います」
「そっかそっか。兵士としては、まぁ良い答えだねぇ」
「あ、ありがとうございます」
カグリの返事を聞いて、少年は少し緊張が解れる。
「そうだなぁ、じゃあアンタにはひとつお話をしておこう」
カグリはおもむろに反乱者の死体の一つを、少年へ見せつける様に掴み上げた。
「反乱者、つまり異界人っていうのは。人の物を奪い、人を犯し、社会を蝕む害虫なんだよ」
そして、それをゴミの様に投げ捨てる。
「想像してみたまえ。キミの大切な人が異界人に犯される姿を」
「大切な人・・・?」
「そう。その人が、身体を痛めつけられ。服を破かれ。犯される姿をね」
カグリは少年がどんな反応をするのか確かめる様に、一言一言を粘つく体液の様に垂らしていく。
「ひ、ぃ・・・」
少年は、カグリの異様な威圧感に、また身体が震えるのを感じた。
「少年、名前は?」
「ミっ、ミナツ、です」
「そうかい。ミナツくんと言うのか。それじゃあ、私が立派な兵士となれるように訓練してあげるから、私の班に入りたまえ」
「は、はい・・・」
カグリは「がんばってねぇ」と、震えている少年の肩を軽く叩いた。
0
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる