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3章
雪妃の行方
しおりを挟むとある街の一角。
そこの地下には反乱者達のグループが住む隠れ家がある。
雪妃は、そこに身を隠していた。
「眠れない様だな、雪妃?」
ソファに腰かけている雪妃へ、青年が問いかける。
このグループのリーダーである青年だ。
「最近、また嫌な夢を見る様になってね。ところで、あんたこそ夜遅くまで何処に行ってたの?」
「隣街の奴に会ってた」
そう言うと、青年は雪妃の向かいに椅子を移動し、腰かける。
「雪妃はどう思う? カミノの言う話について」
「えっと。それって、救世主の事?」
「あぁ、そうだ。そういえば、雪妃はこの前、その救世主に会ったと言っていたな
「・・・えぇ、会ったけど」
雪妃は、先日の事を思い出した。
兵士に追われている少年を助けた時。
その時に対峙した兵士が、コハクと式莉であった事。
そして彼らに捕まり、正体がバレた時、救世主と呼ばれる異界人に助けられた事。
もしあの時、救世主が助けに入らなければ、コハクは自分をどうしたのだろうか?
情けをかけて逃がしてくれただろうか?
それとも兵士として、自分を軍へ連行したのだろうかと。
雪妃は、そんなことを考えてしまう。
「カミノの話は、救世主がいる今こそ、反乱者達は互いに協力するべきだと。そして軍隊となるべきだという話だ」
ヴァーリアの反乱者達は、別に組織でも無ければ、軍隊でもない。
国へ対抗する為に武器を持つ者達もいれば、ただ表では生活出来ない為に犯罪を重ねている者達もいる。
ヴァーリアでは、それらの者を反乱者と区別しているだけだ。
「・・・世間から反乱者と呼ばれてる私達が、本当に反乱を始めるかどうかって訳ね」
あの時、雪妃は間近でユークリウッドを見て、確かにその強さを見た。
あの救世主の特異な力を見れば、カミノが本気で反乱を計画するのも判断出来る。
雪妃は一度気を落ち着かせようと、ソファの背もたれに大きく寄りかかった。
昔、雪妃達は、奴隷となった異界人を助ける為に武器を握り、民家へ乗り込んだ事もある。
だが、ここ数年はまともに戦いを行った事はない。
「俺は、こんな思いのままずっと隠れて、そのまま寿命を迎えて死のうとは思っていない。・・・雪妃、お前はどうだ?」
「私は・・・」
雪妃の脳裏に、一人の少年の顔が浮かぶ。
身体はボロボロで、顔色は悪く命が尽きる寸前。
何度も夢で見る光景。
彼の事を忘れないと誓い、自ら目に焼き付けた光景だ。
「私も、こんな気持ちのまま死ぬのは嫌よ」
「そうか。覚悟は決めてるか?」
「覚悟なら、もうずっと前から決めてる」
二人は目を合わせる。
「あれ? 二人ともまだ起きてたの?」
そこへ、一人の少女が雪妃達の前に現れる。
左目に眼帯、左腕に義手を付けた少女だ。
「はっ、もしかして男と女の・・・!?」
「ち、ちょっと待って。あんたが思っている様な事は何も無いから!」
雪妃はぶんぶんと手を振って否定する。
「えっ、本当に何もしてない?」
少女はじっと青年を睨みつける。
「本当だ。俺は一途だからな」
腕を組みながら、青年がそう返事を返す。
「そうよ。私も一途だから」
「そう? じゃあ安心、安心」
少女は落ち着いた様子で雪妃の隣に座る。
「あ、そうだ日向。あんたにも話があるんだけど」
日向と呼ばれた少女は、ん? と首をかしげる。
「ちょっとね、大事な話よ」
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