異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

文字の大きさ
51 / 80
3章

再会 01

しおりを挟む

 
「重要な話がある」と、とある反乱者から雪妃に連絡があったのは、少し前のことであった。


 相手の反乱者は、別のグループで生活している青年である。

 会った事はあるものの、特別親しい相手ではない。

 あくまでも、顔見知りであるというだけだ。


(悪い人じゃあ無かったはずだけど)
 
 社会の秩序から外れた反乱者の中には、反乱者同士であろうと強盗や恐喝を行う者も少なくは無い。

 この付近の街にはそんな危険な反乱者は見られないが、必ずしもゼロとは言えない。

 念の為、雪妃はバレても問題のない隠れ家を待ち合わせの場所に指定していた。


 しばらく雪妃が隠れ家で待っていると。
 
 連絡用の魔術器に「待ち合わせ場所へ着いた」と応答が入る。

 雪妃が「入り口は開いてるから」と返事を返すと、すぐに入り口が開き、反乱者の青年が顔を覗かせる。
 
 その後にもう一人、少年が続く。


「えっ、コハク・・・!?」

 その少年の顔を見て、雪妃は平手で叩かれたかの様な衝撃を感じた。

 そして次の瞬間。

 雪妃は隠し持っている拳銃型の魔術器を手に取り、それをコハクへ向ける。 
 

「ま、待って、雪妃さん。僕は戦いもしないし、二人を軍に連行するつもりもない」

 コハクは両手を挙げ、戦う意思はないと伝えながら、雪妃の様子を伺いゆっくりと部屋の中へと進む。

「兵士を連れてくるなんて、どういう事?」

 雪妃は魔術器をコハクへ向けたまま、反乱者の青年へ問いかける。

「命の恩人と言うのは大げさかもしれないが、彼は僕を助けてくれてね。それで、どうしても君に会いたいと頼まれて」

「・・・そう。まぁ、細かい事情は分からないけど、来てしまった以上はしょうがないわ」

 つまり、重要な話とはコハクを連れてきた事なのだと、雪妃はそう理解した。
 
「まず、貴方が本当に安全かどうか調べるわ。話はそれからよ」

 雪妃は魔術器を構えたままコハクに近付く。

「わかった。警戒されるのは覚悟の上だ。それで話が出来るなら」
  
 雪妃の手が、上へ挙げているコハクの腕に触る。その瞬間。
 

「・・・えっ」

 コハクの両腕に、拘束用の魔術器が取り付けられる。

 このタイプの拘束具はかなり強固であり、多少の力や魔法では解くことは難しいだろう。
  
「あの、雪妃さん? これは?」

「言ったでしょ? 本当に安全かどうか調べるの」

 言っている間に、今度は両足を魔術器で拘束される。

 更に、手錠から鎖が伸び、それは上に向かって伸び上がる。

 そして鎖は天井に突き刺さって固定された。

 足は床に付いているものの、コハクは洗濯物の様に天井から吊るされた状態である。

 
「あ、あの。でもこんなにがっちりと拘束されるのは・・・予想外というか」

「このくらいは当り前よ。貴方は兵士で、私は反乱者。どれだけ警戒しても足りないくらいだわ」

 そう言いながら、雪妃はコハクが着ている上着を調べ始める。


「えーっと、それでは僕はそろそろお邪魔かな」

 そう言う反乱者の青年は、なんだか苦笑いを浮かべている。

「そうね、本当は外で見張りをしいて欲しいくらいだけど、大丈夫よ」

「ちょっと待って、なんで笑ってるの!? ねぇ!」

「私は笑ってない。真面目だから」

 確かに雪妃は真面目な顔だが、反乱者の青年はやはり苦笑いを浮かべていた。

「それじゃあ、若い兵士さん。今日はありがとうございました」

「あっ、あのー。もう少し"僕の"安全を確かめてからでも・・・!」

 コハクがそう呼び止めるも、反乱者の青年は隠れ家から去っていく。

 雪妃は一度コハクの上着を調べる手を止めて、出入り口に向かい戸を施錠した。


「それじゃ、続きを始めましょうか。上着には何も入ってないみたいだから。次は下ね」

 雪妃は遠慮せずにコハクの穿くズボンのポケットに手を入れる。

「ひぃ・・・」

 布越しではあるが、ふとももや尻を撫でられる感覚がくすぐったくて、コハクはなんだか恥ずかしく感じた。

「本当に何も持ってないのね、逆に兵士として大丈夫なの?」

「まぁ、今日は休日だし。それに警戒されると思って、剣は外に置いてきたんだよ」

「ふーん。まぁ、コハクらしいと言えばらしいか。ん、これは」

 雪妃がコハクのズボンから見つけた物は、デバイスと、一枚の写真。

 
「これって・・・」

 それは先ほどの青年に見せた、コハクと雪妃の二人が写った写真である。

「貴方、この写真持ち歩いてるの?」 
   
 雪妃は、引き気味でコハクを見る。

「しょうがないじゃん、雪妃さんが映ってる写真はそれしか持ってないんだから! その写真を頼りに、反乱者に聞いて周ったら見つかるんじゃないかと思ってさ」

「ふーん、そういうこと」

 そう返事をして、雪妃はまた別の魔術器を取り出す。 

 先端に魔力の結晶が付けられた、手のひらに収まる程の小さく短い杖である。

 形は少し違うが、コハクはそれに見覚えがあった。


「魔法の痕跡を辿る魔術器だ。反乱者なのに、よく色々な種類の魔術器を持っているね」

「そうでしょ。でも入手先はうっかり口を滑らしたりはしないからね? 魔法で盗聴されてるかもしれないし」

 魔術器を手にした雪妃はコハクのシャツに手をかけると、ぺろんと勢いよく捲る。

「ひいっ!? 脱がすなら一言くらい言ってもいいのに・・・」

「何? やっぱり男でも裸を見られるのは恥ずかしいのものなの?」


 雪妃はコハクの素肌に魔術器を翳していく。 

 身体に魔法をかけておき、位置を探ったり、盗聴していないかを探る為である。

「裸を見られるのが恥ずかしいと言うか、女の子に脱がされるのが恥ずかしいというか・・・」

「それじゃあ、次は下を脱がすから」

「えっ? 今なんて?」


 コハクの返答などお構いなしに、雪妃はコハクのズボンに手をかけ、さっとベルトを外す。

 コハクの履いているズボンが、ストンと勢いよく下に落ちる。
 
「きゃー!!!」

「ちゃんと脱がす前に一言言ったんだけど?」

 うろたえるコハクを尻目に、雪妃は魔術器でコハクの脚を調べていく。


「ココは別だから! 男でも恥ずかしいから!」

「下着は履いてるからいいでしょ? それにしても、男のくせに綺麗な脚ね。なんか腹が立ってきたんだけど」

「じっくり見なくて良いから!?」

 そうしてしばらく、コハクが脚のくすぐったさと羞恥に耐えていると。

 雪妃は「はい終わり」と告げて、コハクの手足を拘束している魔術器を解除した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...