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3章
再会 01
しおりを挟む「重要な話がある」と、とある反乱者から雪妃に連絡があったのは、少し前のことであった。
相手の反乱者は、別のグループで生活している青年である。
会った事はあるものの、特別親しい相手ではない。
あくまでも、顔見知りであるというだけだ。
(悪い人じゃあ無かったはずだけど)
社会の秩序から外れた反乱者の中には、反乱者同士であろうと強盗や恐喝を行う者も少なくは無い。
この付近の街にはそんな危険な反乱者は見られないが、必ずしもゼロとは言えない。
念の為、雪妃はバレても問題のない隠れ家を待ち合わせの場所に指定していた。
しばらく雪妃が隠れ家で待っていると。
連絡用の魔術器に「待ち合わせ場所へ着いた」と応答が入る。
雪妃が「入り口は開いてるから」と返事を返すと、すぐに入り口が開き、反乱者の青年が顔を覗かせる。
その後にもう一人、少年が続く。
「えっ、コハク・・・!?」
その少年の顔を見て、雪妃は平手で叩かれたかの様な衝撃を感じた。
そして次の瞬間。
雪妃は隠し持っている拳銃型の魔術器を手に取り、それをコハクへ向ける。
「ま、待って、雪妃さん。僕は戦いもしないし、二人を軍に連行するつもりもない」
コハクは両手を挙げ、戦う意思はないと伝えながら、雪妃の様子を伺いゆっくりと部屋の中へと進む。
「兵士を連れてくるなんて、どういう事?」
雪妃は魔術器をコハクへ向けたまま、反乱者の青年へ問いかける。
「命の恩人と言うのは大げさかもしれないが、彼は僕を助けてくれてね。それで、どうしても君に会いたいと頼まれて」
「・・・そう。まぁ、細かい事情は分からないけど、来てしまった以上はしょうがないわ」
つまり、重要な話とはコハクを連れてきた事なのだと、雪妃はそう理解した。
「まず、貴方が本当に安全かどうか調べるわ。話はそれからよ」
雪妃は魔術器を構えたままコハクに近付く。
「わかった。警戒されるのは覚悟の上だ。それで話が出来るなら」
雪妃の手が、上へ挙げているコハクの腕に触る。その瞬間。
「・・・えっ」
コハクの両腕に、拘束用の魔術器が取り付けられる。
このタイプの拘束具はかなり強固であり、多少の力や魔法では解くことは難しいだろう。
「あの、雪妃さん? これは?」
「言ったでしょ? 本当に安全かどうか調べるの」
言っている間に、今度は両足を魔術器で拘束される。
更に、手錠から鎖が伸び、それは上に向かって伸び上がる。
そして鎖は天井に突き刺さって固定された。
足は床に付いているものの、コハクは洗濯物の様に天井から吊るされた状態である。
「あ、あの。でもこんなにがっちりと拘束されるのは・・・予想外というか」
「このくらいは当り前よ。貴方は兵士で、私は反乱者。どれだけ警戒しても足りないくらいだわ」
そう言いながら、雪妃はコハクが着ている上着を調べ始める。
「えーっと、それでは僕はそろそろお邪魔かな」
そう言う反乱者の青年は、なんだか苦笑いを浮かべている。
「そうね、本当は外で見張りをしいて欲しいくらいだけど、大丈夫よ」
「ちょっと待って、なんで笑ってるの!? ねぇ!」
「私は笑ってない。真面目だから」
確かに雪妃は真面目な顔だが、反乱者の青年はやはり苦笑いを浮かべていた。
「それじゃあ、若い兵士さん。今日はありがとうございました」
「あっ、あのー。もう少し"僕の"安全を確かめてからでも・・・!」
コハクがそう呼び止めるも、反乱者の青年は隠れ家から去っていく。
雪妃は一度コハクの上着を調べる手を止めて、出入り口に向かい戸を施錠した。
「それじゃ、続きを始めましょうか。上着には何も入ってないみたいだから。次は下ね」
雪妃は遠慮せずにコハクの穿くズボンのポケットに手を入れる。
「ひぃ・・・」
布越しではあるが、ふとももや尻を撫でられる感覚がくすぐったくて、コハクはなんだか恥ずかしく感じた。
「本当に何も持ってないのね、逆に兵士として大丈夫なの?」
「まぁ、今日は休日だし。それに警戒されると思って、剣は外に置いてきたんだよ」
「ふーん。まぁ、コハクらしいと言えばらしいか。ん、これは」
雪妃がコハクのズボンから見つけた物は、デバイスと、一枚の写真。
「これって・・・」
それは先ほどの青年に見せた、コハクと雪妃の二人が写った写真である。
「貴方、この写真持ち歩いてるの?」
雪妃は、引き気味でコハクを見る。
「しょうがないじゃん、雪妃さんが映ってる写真はそれしか持ってないんだから! その写真を頼りに、反乱者に聞いて周ったら見つかるんじゃないかと思ってさ」
「ふーん、そういうこと」
そう返事をして、雪妃はまた別の魔術器を取り出す。
先端に魔力の結晶が付けられた、手のひらに収まる程の小さく短い杖である。
形は少し違うが、コハクはそれに見覚えがあった。
「魔法の痕跡を辿る魔術器だ。反乱者なのに、よく色々な種類の魔術器を持っているね」
「そうでしょ。でも入手先はうっかり口を滑らしたりはしないからね? 魔法で盗聴されてるかもしれないし」
魔術器を手にした雪妃はコハクのシャツに手をかけると、ぺろんと勢いよく捲る。
「ひいっ!? 脱がすなら一言くらい言ってもいいのに・・・」
「何? やっぱり男でも裸を見られるのは恥ずかしいのものなの?」
雪妃はコハクの素肌に魔術器を翳していく。
身体に魔法をかけておき、位置を探ったり、盗聴していないかを探る為である。
「裸を見られるのが恥ずかしいと言うか、女の子に脱がされるのが恥ずかしいというか・・・」
「それじゃあ、次は下を脱がすから」
「えっ? 今なんて?」
コハクの返答などお構いなしに、雪妃はコハクのズボンに手をかけ、さっとベルトを外す。
コハクの履いているズボンが、ストンと勢いよく下に落ちる。
「きゃー!!!」
「ちゃんと脱がす前に一言言ったんだけど?」
うろたえるコハクを尻目に、雪妃は魔術器でコハクの脚を調べていく。
「ココは別だから! 男でも恥ずかしいから!」
「下着は履いてるからいいでしょ? それにしても、男のくせに綺麗な脚ね。なんか腹が立ってきたんだけど」
「じっくり見なくて良いから!?」
そうしてしばらく、コハクが脚のくすぐったさと羞恥に耐えていると。
雪妃は「はい終わり」と告げて、コハクの手足を拘束している魔術器を解除した。
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