58 / 80
3章
首謀者の隠れ家 02
しおりを挟むまず、地下の隠れ家に降り立った兵士達の一班を出迎えたのは、薄汚れたローブを羽織った人物であった。
薄暗い部屋のど真ん中で、こちらに背を向け、ただじっと立ち尽くしている。
どうみても怪しい、そう感じた兵士達はそれぞれ武器を握り、無言で戦闘の隊列を組む。
「そこのお前、反乱者だな? 無駄な殺しはしたくない。抵抗せず、俺たちの指示を聞いてもらおう」
班長の青年がそう呼びかけるが。
次の瞬間。
その怪しい人物は、まるで昆虫の様な素早く直線的な動きで、兵士達に襲いかかった。
「ッ!!!」
青年は握っていた魔法の杭で、丁度向かって来るボールを打ち返す様に、向かい来る襲撃者を強打する。
バキリと骨の砕ける音が鳴り、襲撃者が床に転がる。
だがしかし、襲撃者は痛がる様子もなく、壊れた機械の様なカクついた動きで立ち上がると、再び青年へと襲いかかった。
「コイツ・・・!?」
襲撃者は班長の青年へ腕を振り下ろすが、強く振るわれた魔法の杭がその腕を打ち返す。
そして、青年は襲撃者の無防備な身体へ、杭の鋭い先端を突き刺した。
襲撃者は一瞬だけ身体を大きく逸らして抵抗した様だが、すぐに身体が硬直し、動きを止めた。
青年が杭を引き抜くと、動かなくなった襲撃者はその場に崩れ落ちた。
「魔物、ではなないな。人間か? 正気ではない様子だったが・・・」
その時、部屋にあるドアの一つが、静かに開いた。
兵士が横目を向けると。
先程のヴァーリア人反乱者と同じ格好の、薄汚れたローブを羽織った者達が、足を引きずる様にぞろぞろと出てくるのが見えた。
「反乱者共め、奴らは一体、ここで何をしていたんだ?」
兵士達が武器を構えると同時に、ローブを羽織った反乱者達が兵士達へと襲いかかった。
「ふざけた事を・・・!」
班長の青年は魔法の杭を振りかぶり、向かって来る反乱者へ向け投擲した。
放たれた魔法の杭は、反乱者の一人に突き刺さると急に発光し出し、そして破裂した。
反乱者の身体がバラバラに吹き飛び、その衝撃が周囲にいる他の反乱者を突き飛ばす。
しかし、開いた扉の先からは、まだ沢山の反乱者達が沸いて出る。
「皆、一度隣の部屋へ退くぞ」
「了解しました」
班長の青年と兵士達は、手のひらから青白い稲妻を放ち、向かって来る反乱者達を撃ち抜きながら、反対側の扉へと後退する。
「・・・っ!」
しかし、兵士達が反対側の壁まで近付いたその時。
突然、魔法発動の合図である霧が、壁から漏れ出す。
そして壁から、無数の鋭い刃が飛び出した。
「クソ、罠か・・・!」
間一髪、兵士達は魔法壁を展開して無数の刃を防いだ。
不意打ちだったが、その刃に貫かれた者は一人もいない。
「あっははは。良い反応だな」
女性の声が響く。
「扱う魔法をみるに、対人特化の部隊ってところか? なるほど、本気で私を殺しに来たか」
いつから居たのか、そこには元ヴァーリアの魔術師であるカミノが立っていた。
「・・・カミノか」
挨拶の代わりにと、班長の青年はガンマンが早撃ちをする様に、片手から青白い稲妻を放つ。
凄まじい速度で放たれた稲妻だが、しかし、カミノの身体を覆う結界がそれを遮った。
「皆、反乱者共を抑えていろ」
「了解しました」
魔法ではカミノを倒せないと判断した班長の青年は、剣を抜いた。
元々、ヴァーリア軍の魔術師の中でもかなりの実力者であったカミノに魔法で対抗出来るのは、指で数えられる程しかいないだろう。
だが、彼女はどちらかといえば魔法の研究者であり、戦場に立つタイプではない。
接近戦に持ち込めば、勝てない相手ではない。
カミノは両腕から虹色の炎を放ち対抗するが、班長の青年は片手から衝撃波を放ち、炎を吹き飛ばして消火する。
ならばと、カミノは反乱者の一人を魔法で掴んで引き寄せ、青年へ向かい投げ飛ばす。
青年は、飛来する反乱者を剣で斬り伏せたが、床にに転がり落ちた反乱者は、昆虫の様に地面を這って青年に襲いかかった。
青年は舌打ちを吐いて、向かって来る反乱者の頭部を斬り落とした。
「っ!? これは・・・!」
床に転がる反乱者の頭部を見て、青年は驚愕した。
「ヴァーリア人・・・? 何故、反乱者の中にヴァーリア人が?」
ヴァーリア人の反乱者もまったく居ないという訳ではないが、表立って兵士に襲いかかってくるヴァーリア人など、希少種の魔物を見つける事と同じ程度には珍しい事だ。
「くくく。おいおい、そんな簡単に殺すのは止めてやれよ。可哀そうなヴァーリア人だぞ」
カミノが嫌らしい笑みを浮かべる。
「カミノ、貴様・・・一体、彼らに何をした?」
「言っておくが、そのヴァーリア人共は反乱者じゃあないぞ。ただの普通のヴァーリア人だ」
言いながら、カミノはまた魔法でヴァーリア人を掴むと、青年の行く手を遮る様に投げ込む。
「知っているだろう? 私は魔法の研究者だ。研究する為には実験しなければいけない、そして実験するには、その対象がいなくてはいけない」
「実験だと? まさか、このヴァーリア人たちは・・・」
「私だって心のある人間だ。仲間である反乱者達で実験する事など出来ないよ。だから、ヴァーリア人を使った」
更にもう一体、ヴァーリア人が投げ込まれる。
「私は優しいんだ。実験に失敗したからと言って、用済みだと捨てる事はしないよ。最後まで生きる意味を与えてあげるのさ
「この、クズ魔術師が・・・」
班長の青年の前に投げ込まれたヴァーリア人が、昆虫の様な動きで立ち上がる。
最早、彼に正気は残っていないだろう。
そもそも、このヴァーリア人が生きているのかすら怪しい。
青年は剣を振るい、向かって来るヴァーリア人を切り倒していく。
ここで剣を振るう事を躊躇えば、カミノを逃がす事になってしまうだろう。
犠牲になったヴァーリア人の為にも、彼ら兵士が出来るのは迷わず剣を振るう事だと、青年はそう思ったからだ。
0
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる