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3章
首謀者の隠れ家 03
しおりを挟むカミノの実験により正気を失い、兵士達へ襲い掛かった沢山のヴァーリア人達は、既にその大半が兵士達によって倒されていた。
「カミノ、貴様はもう終わりだ。ここで始末する」
班長の青年が剣を構え、カミノへ向かい駆ける。
「始末だと? 嫌だね!」
その瞬間、分厚い魔法壁が生成され、青年の行く手を遮った。
並の魔術師が作り出す魔法壁とは比べ物にならない強度の、カミノが得意とする強力な魔法壁だ。
「くどいな、貴様の手段はもう判っている・・・!」
だが青年は、魔法の杭を生成し、それを魔法壁へ突き刺す。
対魔術師の為に彼らが用意した、結界破りの魔法である。
ドッ、と低い音が響き杭の先端が魔法壁を貫通し、その衝撃で魔法壁にヒビが入る。
そして数秒も経たずに、強固な魔法壁は粉々に砕け散った。
「・・・ッ!!!」
班長の青年が、カミノへ迫る。
が、カミノは意味深ににやりと笑うと、手品でも披露する様に、指をパチンと鳴らした。
青年はカミノの反撃に備え、両腕に魔力を込めて魔法の準備を整えたが、カミノは魔法を繰り出す事も、罠を起動させる事もない。
何を企んでるのかと警戒しながら、青年は剣を構えカミノへ接近する。
その時、カミノの背後にある壁の一部が消え去り、向こう側の部屋と繋がった。
「手段が判っているのはお互い様だ、ヴァーリアの兵士さん」
その先にある部屋は、真っ暗であった。
だが、青年はすぐにそれが自分の見間違いだと気付いた。
「な、馬鹿な・・・」
部屋の先が、真っ暗なのではない。
黒い色の何かが蠢く。
黒く長い体毛に覆われた巨大な何かが、開いた壁の穴を通って現れる。
「魔物!? しかも、この種類は・・・!」
「危険度Sランク"ビースト"だ。対人の用意しかしていない班を寄越したのは、間違いだったな」
"ビースト"が強靭な腕を一歩踏み出し、天井まで届かんとする巨体を動かす。
黒い体毛に覆われた頭部から、鋭い牙が覗く。
「クソ、ありえない・・・!」
班長の青年は稲妻を放ち、ビーストの頭部を的確に命中させたが、ビーストの頭部には焼け跡一つ付くことは無かった。
ただでさえ皮膚が厚く、その上全身を覆う体毛が、魔法の威力をを分散させてしまうのだ。
続けて青年は、ビーストへ向け魔法の杭を投擲したが、魔術的な守りを貫く為の杭は、ビーストの皮膚を貫く事は出来ずに弾かれてしまった。
超高速の稲妻も、守りを貫く杭も、魔法を吹き飛ばす衝撃波も、魔術師相手には強力な魔法だが。
危険度Sランクの魔物相手には、あまりにも無意味である。
「・・・皆、撤退だ。早く、撤退しろ!!!」
班長の青年が、叫びながら班員達の方を振り向く。
だが。
先程入ってきた入り口の前には、もう一体の"ビースト"が壁の様に立ちはだかっていた。
それだけではない。
もう一方の扉の前にも、何時の間に現れたのか、ビーストが番犬の様に座り込んでいる。
「・・・班長」
そう呼びかける兵士達の声は、明らかに不安で、動揺していた。
「おい、そんな顔をするな。冷静になれ。相手は知能のない魔物だ。上手く動きをコントロールしーーー」
班長の青年が、そう指示を出そうとした瞬間。
ビーストの一体が、その巨体から想像つかない速さで、兵士達へ向かい突進する。
数回程、魔法の稲妻が瞬いたが、ビーストが怯む事はない。
ビーストがその強靭な腕を振るい、結界で身を守ろうとした兵士の一人を、その結界ごと叩き潰した。
「なんで、なんで、なんで反乱者共の基地に魔物がいるんだよ・・・!」
一人の兵士は、ビーストへ向け魔法を放ちながら後退する。
だが、冷静さを失っているせいか、もう一体のビーストがいる事を忘れていたのだろう。
「・・・あ」
兵士の背後に迫っていたビーストが兵士に喰らい付き、一瞬で噛み砕いた。
「貴様・・・! カミノォォォォ!!!」
班長の青年が、叫びながらカミノへ向かい駆ける。
だが、カミノは「さようなら」と言わんばかりに手を振ると、青年の目の前に、また魔法壁が展開された。
青年は素早く魔法の杭を生成するが、その背後にビーストが迫る。
「ッ・・・!!!」
ギリギリの所で、青年はビーストの鋭い爪の一撃を避けた。
そして青年は剣を振るい、ビーストの腕を斬り裂く。
致命傷には程遠いが、青年は続けて剣をビーストへ突き刺した。
しかしビーストは痛みを感じていないのか、全く怯むことなく、青年を叩き潰そうと腕を振り下ろす。
「クソ、お前の相手をしている暇など、ない!!!」
青年はビーストの腕を避けると、口内を狙って稲妻を放った。
的確に放たれた稲妻がビーストの口内を突き刺す。
ようやくその一撃で、ビーストは怯み、唸り声を上げた。
そのダメージに刺激され、ビーストは更に激しく腕を振るい、暴れ始めるが、青年は冷静にビーストの攻撃を避ける。
だがその時、青年の脚元に、ぐちゃりと音を立てて"何か"が飛来してきた。
青年は思わずそれを踏みつけてしまい、そしてその物体を見て、驚いた。
「・・・ッ!?」
それが、仲間の班員の上半身であったからだ。
更に驚いたのは、その班員がまだ生きていて、呻き声を上げた事である。
青年は、動揺と足の縺れで、態勢を崩してしまった。
「ぐっ、しまっ・・・!?」
その瞬間。
ビーストの腕が振るわれ、班長の青年を叩き潰した。
「さようなら、軍の操り人形ちゃん」
カミノは兵士達が全員死んだのを見届けると、デバイスを取り出した。
「もしもし? そろそろ潮時だ。さぁ、始めようか」
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