異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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3章

正義 02

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 ふぅ、と息を吐き、コハクは無言でカグリの方を向く。
 

 コハクが外へ放り投げたミナツという少年は、地面の上で呻くだけで立ち上がる気配は無い。

 相当な速度で壁に叩き付けれたのだ。

 身体のあちこちが骨折している事だろう。  


「くははは。ちょー面白いなぁ。裏切り者ごときが被害者ツラするとか、ちょー面白いぞ」
 
 カグリは雪妃の肩から剣を引き抜く。


 兵士に対して攻撃を加えたコハクは、最早、裏切り者である。

 その裏切り者を始末する為に、カグリは剣を構えて前に出た。  

 
「・・・被害者ツラ? 何言ってんのよ」

「あ?」

 しかし、雪妃が、カグリの足首を掴んだ。



「ねぇ、異界人を奴隷にしてコキつかって―――
 そのせいで逆襲されて死んだアンタの親こそ、被害者ツラで面白いと思わない?」
 
 カグリの眉がぴくりと動く。
 
「ハッ。こんな状況でそんな冗談言えるとか、あんたも中々肝が据わってるな」

 カグリは、脚を掴んでいる雪妃の手首を踏みつける。

「ぐぅぁ・・・!!!」    

「雪妃ぃ。本当は、アンタには大事な大事なお仲間の反乱者共が死んでいくとこを見せたかったんだけどさぁ。残念」

 雪妃に止めを刺そうと、カグリは剣を振り上げる。

「お前は、ここで死ね―――!」


 が、その時。
 
 カグリの目掛け、魔法の弾丸が高速で飛来する。

「ッ・・・!」

 飛来する2発の弾丸を、カグリは剣で弾き返した。

 だが。

 カグリの右の頬から、血が噴き出す
 
「がッ!? いッ・・・今のは」
  
 カグリは右頬を抑えながら、顔をゆっくりとコハクの方へ向き直す。  


「よそ見してる方が悪い」

「あ―――、あっはっは。 見えない魔法弾か。器用だなぁ」


 最初の二発は、気を逸らす為のフェイクだ。

 魔法で形を隠した、透明<ステルス>の弾丸が本命である。

 ただし、込めた魔力の殆どを使う為、威力は低くなるが、
確実に攻撃を当てるには効果的な攻撃だ。


「一体、なんなんだアンタ。そんな芸当、Bランクで出来る事じゃあないよなぁ? 興味沸くなぁ・・・。でもまぁ、もったいないけど―――

 ―――殺すわ」


 カグリの顔から、笑みが消える。

 その瞬間、カグリは一瞬でコハクの目の前に接近し、剣を振るった。

「ッ・・・!!!」

 コハクは、迫る剣を盾で受け止めたが、カグリの蹴りがコハクの脚を払う。

「ぐっ・・・!」

 床に倒れるコハク。

 カグリは剣を振り下ろして追い打ちを仕掛けるが、コハクは盾でそれを防いだ。


「邪魔くせぇ盾だな」

 カグリの剣に魔力が流れ込み、剣の刀身が炎で包まれ、溶鉱炉で熱された鉄の様なオレンジ色に染まる。

嫌な予感を感じ、コハクはすぐに立ち上がったが。

息を付く間もなく、オレンジ色に熱された剣が振り下ろされる。

「っ!?」

 コハクは盾を構えたが、しかし。

 真っ赤に熱されたカグリの剣が、コハクの盾を真っ二つに切断した。

「なっ・・・!?」

 がらん、と音を立てて、切断されたコハクの盾が落ちる。


 そしてカグリは、盾を失ったコハクへと、剣を振るう。 

「ぐぅ・・・!」

 一度、カグリから離れようとしたコハクだが、カグリの方が速い。
      
 カグリの振るう高温の刃が、コハクの鎧を貫いて、コハクの腕を切り裂く。 


「ぐぅあぁぁあぁ!?!?」 

 斬られた鎧が床に落下する。

 続けて振るわれる灼熱の刃が、コハクの脚を斬り裂いた。

「がぁっ・・・!!!」

 焼き斬られた痛みに脚が耐えらえず、コハクはその場に膝を付いた。 

 腕も脚も、まだ斬り落とされてはいないが、傷は決して浅くはないだろう。

「そういう邪魔くさい防具付けても、私には意味ないんだよ。
まぁ、切り口が焼けるせいで出血しないのは、私としては残念なんだけど」
 
 カグリは、コハクに止めを刺そうとはしなかった。

 変わりに、床に倒れている雪妃へと近付いていく。 


「死ね」

 そして、カグリの握るオレンジ色の剣が、雪妃の身体を貫く。

「ぐぎゃあああああああああああ!!!」

 雪妃の悲鳴と、何かが焼ける嫌な音が響く。
 
「待て、待てぇぇぇ!!! やめろ!!!! やめろおお!!!」

 コハクは叫びながら魔法弾を乱射する。

 しかし、カグリは腰から2本目の剣を抜くと、飛来する無数の魔法弾を全て切り落とす。

 今度は、透明<ステルス>の弾丸も正確に防がれる。


「同じ手が二回も通用するか」
 
 カグリは、ふんと鼻で笑い飛ばし、雪妃から剣を抜き出す。

「ぁ・・・ぁ・・・」

 小さく声を漏らし、雪妃の手から力が抜ける。

 もう、彼女はぴくりとも動くことは無かった。  

 
 
「なんで、なんで・・・こうなるんだ」

 力尽きた雪妃の姿を見て、コハクは崩れる様にしてその場に座り込んだ。


 こんな事なら、力づくでも雪妃を説得するべきだった。

 彼女の意思を否定してでも、守るべきだったと。
 コハクは酷く後悔した。


「いい顔だな、裏切り者。そのまま殺してやろう」 
 
 カグリがコハクに近付く。

 そして、灼熱の剣を振り下ろす。

 コハクには、もうそれを防ぐ気力も、避ける気力もない。

 しかし。


「っ、なんだ?」

 しかし、カグリの振るう炎の剣はコハクには届かない。

「魔法壁・・・?」
 
 オレンジ色の刃は、厚い魔法壁に遮られていた。

 そして外から、植物の蔦が入り込んできたかと思うと。

 それはコハクを掴み、店内から外へと連れ出していく。


「ちっ・・・!」

 カグリの放つ炎が店の壁をぶち抜くが、コハクには当たらない。
 

「大丈夫ですか、コハクさん」

「フローラ、さん・・・?」

 蔦に抱きかかえられたコハクが見たのは、フローラの姿であった。

 植物で形作られた、馬ほどの大きさの使い魔に乗ったフローラが、蔦からコハクの身体を受け取る。

 そして使い魔から伸びる蔦が、シートベルトの様にコハクの身体を支える。


「オイ、あの裏切り者を逃がすな!!!」

 カグリが叫び、それに応じた一人の兵士がフローラに迫るが。

「ぐわっ!?!?」

 しかし、地面から生えた太い蔦が兵士の身体に巻き付き、拘束して邪魔をする。 


「コハクさん、しっかり掴まっていていてください」

 フローラが命令を出すと、使い魔は4本の脚を動かし、高速で走り出した。 


「逃げんなッ・・・!!!」

 カグリが炎の槍を放つが、高速で疾走する使い魔には当たらない。

 炎の槍は、近くの民家に突き刺さるだけである。


「チッ・・・クソが」

 逃げる二人の後ろ姿を尻目に、はぁ、とカグリは背伸びをした。

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