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第十三話
(四)
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壮が嘘を吐くと言った雫に、いつだか嘘も方便だけど素直な方が傷付かないと言ったことを思い出した。
確かに嘘は吐いている。それは間違いない。
今の雫の気持ちを思うと素直な気持ちしか出てこなかった。
「俺、雫が好きだ。その気持ちがこれからも変わらないって信じたいし、そこだけは変わりたくない」
今、言ってもいい時だと思ったから伝えてみた。何度かしているように。
今、必要だと思ったから言った。
すると雫はとんでもないことを言い出した。
「壮君モテるから、高校生になってもきっとモテる。そうしたら素敵な人が見つかっちゃうかもしれない。あたし、なんだかそれが嫌なの。わかんないけどやだ!」
変な駄々をこねながらぐすぐす泣く。
告白されたようでされてないなと壮は思った。またふられたかと思うと仕方ないとはいえ、前よりも少し悲しい。泣きたいのは自分の方だ。
いつだか、翔の前で気付いたら泣いてた自分を、ふと思い出した。
どうせふられているようなものだから、言ってしまうことにした。まだ、この言葉は正確に口にしたことはなかったはずだ。
「雫、付き合おう? あいつみたいに傷付けるようなことはしない。絶対大事にする。ずっとそばにいる。あいつみたいに背伸びもさせない。いくら甘えてもわがまま言ってもいい。もっと、ずっとそばでずっと守ってあげたい。俺に出来ることならなんでもしてあげたい」
ぐずぐず泣いてた雫は黙って静かに壮の告白を聞いていた。
「うん……」
そしてわあっとまた泣き出した。
壮君のことが好きだ。今気が付いた。ずっとそばにいたから気付けなかった。そんな鈍感で酷い自分を壮はまだ待っててくれていた。笑わせてくれて甘やかされてくれることが当たり前過ぎた。目前のことばかりが頭の中を占めていたのに、今気付くなんて。
本当の好きはずっとこんなにそばにあったんだ。
「壮君、帰ったら、また言って。お願い。顔見て言われたい」
雫が無意識に言ったわがままが壮は嬉しかった。本当は壮だってちゃんと顔を合わせて目を見て伝えたかった。
「帰ってくるの待ってる」
「明日帰る!」
泣きながら涙のせいの鼻声で雫が電話口で叫んだ。
「は?」
いきなり突飛なことを言われて、思わず壮はそんな風に返してしまった。おばあちゃん孝行に行ったんじゃないのか、しかもまだ二日目だ。雫らし過ぎて呆れる。
「帰る! 早く会いたい、あたし。早く顔見て壮君に好きだって言いたい!」
好きだと言われたのに、壮は妙な気分だった。
そばでずっと雫の電話を聞いていた喜久枝は、相変わらずの行動力、というか本当に目の前のことに夢中だなと呆れた。
会いたい大切な人がいて早く帰りたいなら帰った方が良い。この場合、尚更だ。
「迎えに来て貰えばー?」
喜久枝は雫に近づいて耳打ちした。
「……壮君、早く会いたい。迎えに来て!」
入れ知恵したのは自分だけど、すごい甘え方だなと喜久枝は雫の隣で爆笑を堪えるのが大変だった。
長く滞在してくれなくても、雫の笑顔が見られれば喜久枝は充分だ。そしてこの展開である。壮君が壮君がって言っていた雫の鈍感さも充分楽しませてもらった。
「あー、母さんと透子おばさんに聞いてみるよ」
呆れ果てた壮は言った。そして一度電話を切った。
「良かったわね」
喜久枝が頭を撫でてやると、雫はうわーんとまた泣き出した。
自分の鈍感さに驚いていたり、嬉しかったり、ごちゃごちゃ頭の中がする。
このごちゃごちゃが本当の好きだってことなのかと喜久枝に泣きながら聞いた。
「ま、恋なんてそんなもんよ」
何度もそう聞きてきた雫に、喜久枝は可笑しそうにそう返した。
確かに嘘は吐いている。それは間違いない。
今の雫の気持ちを思うと素直な気持ちしか出てこなかった。
「俺、雫が好きだ。その気持ちがこれからも変わらないって信じたいし、そこだけは変わりたくない」
今、言ってもいい時だと思ったから伝えてみた。何度かしているように。
今、必要だと思ったから言った。
すると雫はとんでもないことを言い出した。
「壮君モテるから、高校生になってもきっとモテる。そうしたら素敵な人が見つかっちゃうかもしれない。あたし、なんだかそれが嫌なの。わかんないけどやだ!」
変な駄々をこねながらぐすぐす泣く。
告白されたようでされてないなと壮は思った。またふられたかと思うと仕方ないとはいえ、前よりも少し悲しい。泣きたいのは自分の方だ。
いつだか、翔の前で気付いたら泣いてた自分を、ふと思い出した。
どうせふられているようなものだから、言ってしまうことにした。まだ、この言葉は正確に口にしたことはなかったはずだ。
「雫、付き合おう? あいつみたいに傷付けるようなことはしない。絶対大事にする。ずっとそばにいる。あいつみたいに背伸びもさせない。いくら甘えてもわがまま言ってもいい。もっと、ずっとそばでずっと守ってあげたい。俺に出来ることならなんでもしてあげたい」
ぐずぐず泣いてた雫は黙って静かに壮の告白を聞いていた。
「うん……」
そしてわあっとまた泣き出した。
壮君のことが好きだ。今気が付いた。ずっとそばにいたから気付けなかった。そんな鈍感で酷い自分を壮はまだ待っててくれていた。笑わせてくれて甘やかされてくれることが当たり前過ぎた。目前のことばかりが頭の中を占めていたのに、今気付くなんて。
本当の好きはずっとこんなにそばにあったんだ。
「壮君、帰ったら、また言って。お願い。顔見て言われたい」
雫が無意識に言ったわがままが壮は嬉しかった。本当は壮だってちゃんと顔を合わせて目を見て伝えたかった。
「帰ってくるの待ってる」
「明日帰る!」
泣きながら涙のせいの鼻声で雫が電話口で叫んだ。
「は?」
いきなり突飛なことを言われて、思わず壮はそんな風に返してしまった。おばあちゃん孝行に行ったんじゃないのか、しかもまだ二日目だ。雫らし過ぎて呆れる。
「帰る! 早く会いたい、あたし。早く顔見て壮君に好きだって言いたい!」
好きだと言われたのに、壮は妙な気分だった。
そばでずっと雫の電話を聞いていた喜久枝は、相変わらずの行動力、というか本当に目の前のことに夢中だなと呆れた。
会いたい大切な人がいて早く帰りたいなら帰った方が良い。この場合、尚更だ。
「迎えに来て貰えばー?」
喜久枝は雫に近づいて耳打ちした。
「……壮君、早く会いたい。迎えに来て!」
入れ知恵したのは自分だけど、すごい甘え方だなと喜久枝は雫の隣で爆笑を堪えるのが大変だった。
長く滞在してくれなくても、雫の笑顔が見られれば喜久枝は充分だ。そしてこの展開である。壮君が壮君がって言っていた雫の鈍感さも充分楽しませてもらった。
「あー、母さんと透子おばさんに聞いてみるよ」
呆れ果てた壮は言った。そして一度電話を切った。
「良かったわね」
喜久枝が頭を撫でてやると、雫はうわーんとまた泣き出した。
自分の鈍感さに驚いていたり、嬉しかったり、ごちゃごちゃ頭の中がする。
このごちゃごちゃが本当の好きだってことなのかと喜久枝に泣きながら聞いた。
「ま、恋なんてそんなもんよ」
何度もそう聞きてきた雫に、喜久枝は可笑しそうにそう返した。
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