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第十六話
(二)
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由美は惚気も散々聞かされた。
惚気の最後に、壮と居ると楽しくいのに不安なこともたくさんあって、なんだかんだでごちゃごちゃするのと言った雫の笑った顔は笑っていた。
好きだと気付く前は、まだ好きでいてくれているのかが無意識に不安だったのかもしれない。今の不安とそれは全然違うものだった。不安の正体にまではまだ行き着けていないけれども。
もっとね、他のこともしたいのと言った雫に、由美はくすっと笑ってしまった。
最近の壮には会っていないが、時々妙に自制心を出すところは変わらないのだなと由美は思った。昔の壮も由美の目にはそんな感じで映っていた。
なんとなくふたりの性格的にこのまま付き合い続けて結婚まで行っちゃいそうと想像する。そうしたら一生、壮は透子に遊ばれることになるのかと由美は面白くなった。
それにしても、翔は自分を押し付けてばかりいた反面、壮は雫が雫で在れるように昔からずっと本当の意味で大切にすることを知っていたのだなと改めて思った。幼い頃は無意識であったかもしれないが。
雫は壮に泣かされて笑わされて、翔君が翔君がと言いながら、なんだかんだで壮君がね壮君がねといつも嬉しそうな顔をしていた。
壮が引っ越す時、色々な事情が押し寄せていたけれど、由美はもう実家を出ていたからその時のことを聞き伝でしか知らない。
きっと一度離れ離れになった時、あんなに雫は淋しそうで、哀しそうな顔に号泣しながら由美に話したのは、好きだと言われて、またねと言われて、そのまたねがいつまでのまたねかわからなくて、キスをされたことよりも不安がまさったのだろうと、由美は思う。
壮の好きがどんな好きの意味か、そして自分も同じ好きを抱えていることに、雫はその時は理解していたのに、まるで現実味に感じられない別れが雫の中から色々な全てを消し去ってしまった。
あの時、雫は壮のTシャツを掴んだところから全て無意識のことだった。
自然と手が伸びて離せなくなった壮のTシャツ。大好きという言葉。
雫は覚えていない。壮は鮮明に覚えている。
由美に色々話しながら雫は納得したことがある。翔が特別だったように、全く違う形でずっと壮も特別だった。
自分をごちゃごちゃさせる壮は、そういう意味で特別だったのだ。
本当の恋はごちゃごちゃするの? と雫は由美にも聞いてみたら、そうだよと優しく微笑んでくれた。
今感じるごちゃごちゃは、よくよく考えると時々だけれど確かになんだか嬉しい時もある。
惚気の最後に、壮と居ると楽しくいのに不安なこともたくさんあって、なんだかんだでごちゃごちゃするのと言った雫の笑った顔は笑っていた。
好きだと気付く前は、まだ好きでいてくれているのかが無意識に不安だったのかもしれない。今の不安とそれは全然違うものだった。不安の正体にまではまだ行き着けていないけれども。
もっとね、他のこともしたいのと言った雫に、由美はくすっと笑ってしまった。
最近の壮には会っていないが、時々妙に自制心を出すところは変わらないのだなと由美は思った。昔の壮も由美の目にはそんな感じで映っていた。
なんとなくふたりの性格的にこのまま付き合い続けて結婚まで行っちゃいそうと想像する。そうしたら一生、壮は透子に遊ばれることになるのかと由美は面白くなった。
それにしても、翔は自分を押し付けてばかりいた反面、壮は雫が雫で在れるように昔からずっと本当の意味で大切にすることを知っていたのだなと改めて思った。幼い頃は無意識であったかもしれないが。
雫は壮に泣かされて笑わされて、翔君が翔君がと言いながら、なんだかんだで壮君がね壮君がねといつも嬉しそうな顔をしていた。
壮が引っ越す時、色々な事情が押し寄せていたけれど、由美はもう実家を出ていたからその時のことを聞き伝でしか知らない。
きっと一度離れ離れになった時、あんなに雫は淋しそうで、哀しそうな顔に号泣しながら由美に話したのは、好きだと言われて、またねと言われて、そのまたねがいつまでのまたねかわからなくて、キスをされたことよりも不安がまさったのだろうと、由美は思う。
壮の好きがどんな好きの意味か、そして自分も同じ好きを抱えていることに、雫はその時は理解していたのに、まるで現実味に感じられない別れが雫の中から色々な全てを消し去ってしまった。
あの時、雫は壮のTシャツを掴んだところから全て無意識のことだった。
自然と手が伸びて離せなくなった壮のTシャツ。大好きという言葉。
雫は覚えていない。壮は鮮明に覚えている。
由美に色々話しながら雫は納得したことがある。翔が特別だったように、全く違う形でずっと壮も特別だった。
自分をごちゃごちゃさせる壮は、そういう意味で特別だったのだ。
本当の恋はごちゃごちゃするの? と雫は由美にも聞いてみたら、そうだよと優しく微笑んでくれた。
今感じるごちゃごちゃは、よくよく考えると時々だけれど確かになんだか嬉しい時もある。
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