永遠故に愛は流離う

未知之みちる

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白む空が胸を突く

( 二 )

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 部員全員で食堂にて夕食を摂る。ざっくりした献立ではあるが、人数が少ないとそれなりに豪勢な食事ではある。
 その後は勉強の時間だ。
 篤もスパルタだが、留美も凄まじい。故に、天文部の面々は成績が良い。
 真摯に生徒に向き合う教師二人によって励みが生まれ、みんな夢中になって取り組む。
 質問が飛び交い、二人の性質を「よく理解している」部員たちへの指導は忙しいが、そんな状況を彼も彼女も好む。
 向上心ほど素晴らしいものはないと思っている二人は恐ろしいまでの負けず嫌いだ。その負けず嫌いが伝染したように頑張っている部員たちから、彼らが本当に慕われていることがわかる。
 一葉は、天音が入って最初の合宿の時、この勉強時間で彼女に慄いた。
 三年である真守と同じ問題を篤が彼女に渡した時点で驚き、ふと見ると平気で解いている。
 終わった後で天音ではなく真守に聞いてみたら、どこかの大学入試の過去問だった。
 今だって彼女は難しい問題を嬉しそうな顔で挑んでいる。そんな天音に真守が当たり前のように英語の質問をしたりする。図式がなにかおかしいと一葉はいつも思う。
 年中篤に勉強をみてもらっている天音はとにかく記憶力がいい。そのおかげで篤の持ってくる課題などは授業の先の先の先を行っている。真守と同じ課題を解く。すなわち学年の範疇も超えている。
 レベルの高い進学校だった転校する前の学校は今の学校よりも授業がだいぶ進んでいた。それも相まって、現状の授業はまるでおさらいだった。
 ただ、天音はとんでもなく変てこなわけのわからない欠点があり、それさえ無ければ確実に模試の結果もよくなるはずだが直らない。この勉強時間の間に何度か篤が渋い顔をして、げらげらと笑うさまが見受けられた。流石に理由はみんな知らない。天音本人も気にしているから人に言いたくない。
 勉強の時間が終わった後、一葉は思わず天音に言った。
「天音ってさ、絶対おかしいよ! なんでもかんでもやたらと小難しいことが大好きだよね」
 いきなりなんだろうと天音は思いつつも、言われた内容に関して率直に返した。
「面白いじゃない」
 その面白いの基準が間違っていると一葉は思う。
 隣に居た真守がくすくす笑って「天音ちゃんだから」と言うと、周りはそのまとめ方も大雑把過ぎてどうかと呆れた。
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