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懐古の音が鳴り響けば
( 三 )
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女子三人が使う部屋で荷物を整理していた小夜と柚葉は篤と天音の変な関係性について笑いながら話をしていた。
舜から聞く篤経由の天音の話と天音からやって来る変てこな恋の相談、初めて会った実際の篤、その三つを対比してみるとひどく面白い。
「篤さん面白過ぎ! かっこいいのに中身が残念過ぎ」
くすくす笑いながらそう言った小夜の好みから篤のようなタイプは外れている。落ち着きのある歳上の彼氏がいる彼女は大人びた男性が好みである。
「舜の話より天音の話の方が正しそうだよね?」
同じように笑う柚葉が小夜に同意を求めた。
「……あのさ。天音のあれってただの恋話なのかな?」
直前まで笑っていたのに、小夜が突然神妙な顔で柚葉へ同意を返すでもなく問いかけた。
同じことを前に洸に尋ねたら、彼も小夜と同じような意見を持っていた。
二人ともに天音は篤のことが好きであることは確かだと思う。しかし、天音がその好きに対して恋愛を求めているのかなにを求めているのかがよくわからない。
「ただの恋じゃないってどういうこと?」
小夜の神妙さとは裏腹に柚葉は楽しそうなままで、彼女は言葉を詰まらせた。言葉にしづらい、天音の話から受けた感覚的なものでしかない。
「なんていうのかな……」
突然煮え切らない表情で小夜は言葉を探してみるが、感覚的な憶測ほど言葉にすることは難しい。
「恋と恋愛は違う?」
適当に当てはめた結果、疑問形になってしまった。
「曖昧でよくわからない。それにどうして突然」
流石に真面目な表情を浮かべて柚葉が返事をすると、小夜は突然自分で言い出したくせに、「突然」と言われたことに困ってしまった。いつも賑やかな柚葉の声の真剣さに、言わなければよかったとさえ思った。
「天音はさ、恋愛偏差値低いから。恋を恋愛に持っていく方法がわからないのかもね。そもそもあたしたち、好きだとしか聞いてない。好きだからどうしたいかなんて、人それぞれだと思うよ。迷い方も、選び方も、その先の答えも結末もね」
そんな風に言った柚葉の声色はいつも通りだったから、小夜の疑問に彼女の言葉がすとんと嵌る。
柚葉は天音が出す答えに期待している。天音らしい結論に興味を惹かれて止まない。心配はなにもしていない。心配する要素が見つからない。天音は天音らしく決めるだけだろうから。
「あー、天音の心配より、篤さんの心配をしてあげた方がいいんじゃない?」
続けられた言葉に小夜は首を傾げた。柚葉が気の毒そうに苦笑いを浮かべている。
篤も自由人に見えるけれど、きっと天音の方が輪をかけて自由気ままだ。
天音はきっと恋なんて歯牙にかけずに自分が進みたくなった道をまっすぐ歩いていく。
「天音はさー、興味に貪欲だから」
この柚葉の言葉の意味を小夜は完全に取り違えた。柚葉はわかりづらい言い方をしたことに気づかなかった。
意味を勘違いしながらも納得した小夜は再び楽しそうに話の方向性を元に戻した。続いた会話の中で小夜が捉え間違えたと気付いた柚葉は、言いたい意味の正解を伝え直すことにひどく苦労した。
親友たちの天音に対する見解は見事である。天音自身がまるで自覚しているままに捉えている。
ただ、天音が無意識に誰かを求めていることまでは洸しか考えついていない。
舜から聞く篤経由の天音の話と天音からやって来る変てこな恋の相談、初めて会った実際の篤、その三つを対比してみるとひどく面白い。
「篤さん面白過ぎ! かっこいいのに中身が残念過ぎ」
くすくす笑いながらそう言った小夜の好みから篤のようなタイプは外れている。落ち着きのある歳上の彼氏がいる彼女は大人びた男性が好みである。
「舜の話より天音の話の方が正しそうだよね?」
同じように笑う柚葉が小夜に同意を求めた。
「……あのさ。天音のあれってただの恋話なのかな?」
直前まで笑っていたのに、小夜が突然神妙な顔で柚葉へ同意を返すでもなく問いかけた。
同じことを前に洸に尋ねたら、彼も小夜と同じような意見を持っていた。
二人ともに天音は篤のことが好きであることは確かだと思う。しかし、天音がその好きに対して恋愛を求めているのかなにを求めているのかがよくわからない。
「ただの恋じゃないってどういうこと?」
小夜の神妙さとは裏腹に柚葉は楽しそうなままで、彼女は言葉を詰まらせた。言葉にしづらい、天音の話から受けた感覚的なものでしかない。
「なんていうのかな……」
突然煮え切らない表情で小夜は言葉を探してみるが、感覚的な憶測ほど言葉にすることは難しい。
「恋と恋愛は違う?」
適当に当てはめた結果、疑問形になってしまった。
「曖昧でよくわからない。それにどうして突然」
流石に真面目な表情を浮かべて柚葉が返事をすると、小夜は突然自分で言い出したくせに、「突然」と言われたことに困ってしまった。いつも賑やかな柚葉の声の真剣さに、言わなければよかったとさえ思った。
「天音はさ、恋愛偏差値低いから。恋を恋愛に持っていく方法がわからないのかもね。そもそもあたしたち、好きだとしか聞いてない。好きだからどうしたいかなんて、人それぞれだと思うよ。迷い方も、選び方も、その先の答えも結末もね」
そんな風に言った柚葉の声色はいつも通りだったから、小夜の疑問に彼女の言葉がすとんと嵌る。
柚葉は天音が出す答えに期待している。天音らしい結論に興味を惹かれて止まない。心配はなにもしていない。心配する要素が見つからない。天音は天音らしく決めるだけだろうから。
「あー、天音の心配より、篤さんの心配をしてあげた方がいいんじゃない?」
続けられた言葉に小夜は首を傾げた。柚葉が気の毒そうに苦笑いを浮かべている。
篤も自由人に見えるけれど、きっと天音の方が輪をかけて自由気ままだ。
天音はきっと恋なんて歯牙にかけずに自分が進みたくなった道をまっすぐ歩いていく。
「天音はさー、興味に貪欲だから」
この柚葉の言葉の意味を小夜は完全に取り違えた。柚葉はわかりづらい言い方をしたことに気づかなかった。
意味を勘違いしながらも納得した小夜は再び楽しそうに話の方向性を元に戻した。続いた会話の中で小夜が捉え間違えたと気付いた柚葉は、言いたい意味の正解を伝え直すことにひどく苦労した。
親友たちの天音に対する見解は見事である。天音自身がまるで自覚しているままに捉えている。
ただ、天音が無意識に誰かを求めていることまでは洸しか考えついていない。
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