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割り切れない答えの導き出し方
( 五 )
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長いこと口付けを交わし続けた末に、顔を逸らした天音が呟いた。
「これ以上はやだ」
「まだしていたい」
「あたしが、変になる」
彼女がおかしくなる瞬間を見たいと思ってしまった奏は、覆い被さっていた天音をひっくり返し、再び唇を押し付けた。
奏の情熱的な口付けがどんどん激しさを増していく。
彼はこんな風に自分を晒すのかと思うと、天音はもっと奏のことを知りたいという衝動に駆られそうだった。
遂に天音の声が甘く漏れ、部屋に響きだした。
口付けが激しくなっていけば、身体を襲う刺激も強くなる。
自分たちの声すら聴こえないくらい夢中だった。少しだけ身体を擦り合わせて唇を押し付け合い、只管に舌を絡ませ合った。
天音の口から「もっと」と言われたら、奏は完全に我慢など出来なくなる自信がある。けれども彼女は始める前に「奏はしない」と言い切った。
求められれば答えたくて、けれども彼女の言葉を裏切るようで、奏は怖くなった。
顔も身体も離して天音を見ると、彼女は肩で息をしながら目を熱く火照らせていた。堪らないという顔に見えた。
天音は自分が今、どんな状況にあるのか理解していた。
奏の情熱的なキスが漸く終わって、結局奏のせいで変になって、ぎりぎりのラインまで来てしまった。
あのままいたら、相手は奏なのにもっと他を知りたくなる自分が想像付く。
奏は起き上がり座り込んだ。
天音は寝転がったまま、なんとなく上を見ている。
彼は、自分が少なくとも今はこれ以上要らないことがわかったが、ここまではまた欲しくなると感じていた。
そんなことを思いながら、天音を見遣った。
疲れたのかぼうっとしているようだった。
奏が苦しいと自分も苦しいと言った天音は、自分が苦しくなる度にこうしてくれるのだろうか。
問いたくても、出来なかった。
否定されたら嫌だ。
「姉さんが好きだった」
過去形を使った奏に、天音はよくわからないと思った。過去形なのにこの行為は必要だったのかわからない。
「実際に会ったら、どうしようもなく好きで堪らない」
奏は天音のことを見ず、前をただ見つめながら言った。
天音も天井を仰いだまま聴いていた。
「ねえ、奏。苦しいの取れた?」
黙っていた天音が呟くように言った。奏の言葉など聞いていなかったように問うた。
「取れたよ。でもきっとまた苦しくなる時があると思う」
「そうしたらまた取ってあげる。その代わり、あたしが泣いたら絶対に助けに来て」
相変わらず変にわがままな言い方するなと思ったら、奏は笑えてきてしまった。
自分が泣かす予定で助けてあげることもきっと出来ないと思うと、今だけはすっきりとした。
「お腹空いた。夕飯食べたい」
「そうね。すぐ作るわ」
智也の出張に花純も同行している。今日から三日間不在だ。
花純はわざわざ作り置きをしていくことはない。一人暮らしをしていた天音が家事全般を完璧にこなせることを知っている。
「姉さんの料理初めてだよね」
すぐ作ると言いながら寝転がったままの天音を奏は引っ張り起こした。
作ると言いながら、まるで天音は動きそうになかったのだ。
「ねえ、奏。これ以上はきっとなにかを失くす」
自分もそう思ったから、奏は悲しい。
自分たちはいつもなにかがおかしくて、しかしそれで繋がって成り立っているように思えてきてしまった。
「これ以上はやだ」
「まだしていたい」
「あたしが、変になる」
彼女がおかしくなる瞬間を見たいと思ってしまった奏は、覆い被さっていた天音をひっくり返し、再び唇を押し付けた。
奏の情熱的な口付けがどんどん激しさを増していく。
彼はこんな風に自分を晒すのかと思うと、天音はもっと奏のことを知りたいという衝動に駆られそうだった。
遂に天音の声が甘く漏れ、部屋に響きだした。
口付けが激しくなっていけば、身体を襲う刺激も強くなる。
自分たちの声すら聴こえないくらい夢中だった。少しだけ身体を擦り合わせて唇を押し付け合い、只管に舌を絡ませ合った。
天音の口から「もっと」と言われたら、奏は完全に我慢など出来なくなる自信がある。けれども彼女は始める前に「奏はしない」と言い切った。
求められれば答えたくて、けれども彼女の言葉を裏切るようで、奏は怖くなった。
顔も身体も離して天音を見ると、彼女は肩で息をしながら目を熱く火照らせていた。堪らないという顔に見えた。
天音は自分が今、どんな状況にあるのか理解していた。
奏の情熱的なキスが漸く終わって、結局奏のせいで変になって、ぎりぎりのラインまで来てしまった。
あのままいたら、相手は奏なのにもっと他を知りたくなる自分が想像付く。
奏は起き上がり座り込んだ。
天音は寝転がったまま、なんとなく上を見ている。
彼は、自分が少なくとも今はこれ以上要らないことがわかったが、ここまではまた欲しくなると感じていた。
そんなことを思いながら、天音を見遣った。
疲れたのかぼうっとしているようだった。
奏が苦しいと自分も苦しいと言った天音は、自分が苦しくなる度にこうしてくれるのだろうか。
問いたくても、出来なかった。
否定されたら嫌だ。
「姉さんが好きだった」
過去形を使った奏に、天音はよくわからないと思った。過去形なのにこの行為は必要だったのかわからない。
「実際に会ったら、どうしようもなく好きで堪らない」
奏は天音のことを見ず、前をただ見つめながら言った。
天音も天井を仰いだまま聴いていた。
「ねえ、奏。苦しいの取れた?」
黙っていた天音が呟くように言った。奏の言葉など聞いていなかったように問うた。
「取れたよ。でもきっとまた苦しくなる時があると思う」
「そうしたらまた取ってあげる。その代わり、あたしが泣いたら絶対に助けに来て」
相変わらず変にわがままな言い方するなと思ったら、奏は笑えてきてしまった。
自分が泣かす予定で助けてあげることもきっと出来ないと思うと、今だけはすっきりとした。
「お腹空いた。夕飯食べたい」
「そうね。すぐ作るわ」
智也の出張に花純も同行している。今日から三日間不在だ。
花純はわざわざ作り置きをしていくことはない。一人暮らしをしていた天音が家事全般を完璧にこなせることを知っている。
「姉さんの料理初めてだよね」
すぐ作ると言いながら寝転がったままの天音を奏は引っ張り起こした。
作ると言いながら、まるで天音は動きそうになかったのだ。
「ねえ、奏。これ以上はきっとなにかを失くす」
自分もそう思ったから、奏は悲しい。
自分たちはいつもなにかがおかしくて、しかしそれで繋がって成り立っているように思えてきてしまった。
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