姉上、それは悪役令嬢まっしぐらですぞ！ ～悪役ルートは拙者が全力回避いたす～

【第10章】『真実の愛を教えてあげます！～お花畑ヒロイン、革命を語る～』

晴れ渡った空の下、中庭のテーブルには四人の姿があった。
ユリウス、カイル、ノエル、そして――満面の笑みで紅茶をすするルルナ。

「私、思うんです」

そう切り出した彼女の声は、まるで天使のように無邪気で、そしてある意味では爆弾だった。

「政略結婚って、すっごく可哀想ですよね。だって、愛し合ってもいないのに、一生を一緒に過ごさなきゃいけないなんて……。私、貴族に生まれなくて本当によかったって、時々思います！」

一瞬の沈黙ののち、カイルが目を見開いた。

「ルルナって……やっぱ、優しいな」
「うんうん。強い家柄ほど、恋も不自由になる。何とも皮肉なものさ」ノエルが肩をすくめる。

ルルナはふふんと得意げに頷くと、カイルの方を見た。

「カイルさんも、決められた婚約者になんて縛られなくていいんですよ？
もっと、心のままに、自分の気持ちに正直になってほしいな」

「……っ！」
カイルの顔が赤く染まる。
（お、俺が……ルルナと……！？ いや、まさかな、でももし……もし……！）

視線が自然とルルナに吸い寄せられていく。

ルルナは続いて、ノエルに向き直った。

「ノエルさんも、ね。きっと、本当の愛にまだ巡り合えていないだけだと思うんです。
あなたみたいに優しくて魅力的な人なら、きっと素敵な恋ができるって……私、信じてます！」

ノエルは一瞬、微笑んだ。その笑顔はどこか苦く、それでいて――ほんの少し、心を溶かされかけていた。

「……君は、言葉が甘すぎる。でも……悪くない」

そして、最後にルルナの視線がユリウスへと向かう。

「ユリウス様……」
「……」

「セレナ様との婚約って、本当にお幸せなんですか？」

カイルとノエルが小さく息を呑む。だが、ルルナは臆する様子もない。

「なんていうか……私だったら、あなたに“真実の愛”を教えてあげられるのに……なーんて、冗談ですよ？」

ユリウスは、静かに微笑んだだけだった。
何も言わず、ただ――仮面のような完璧な笑みを浮かべたまま。

ルルナは、それを“肯定”と捉えてしまったようだった。

（やっぱり、私の気持ち……届いてる。殿下、きっともう――）


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「な、なんなのあれ……」セレナは目元をひくつかせていた。
「あれは、恋愛ルートの乱立バッドエンド一直線でござる……っ！！」レオは震えながら小声で叫んだ。

「フラグを片っ端から乱立させて、それぞれを誤作動させる戦術……これは――」
「“誤爆型逆ざまぁルート”……！」
「シリル……名付けるな……！」
「キラーン」

セレナは思った。
あの子は――本気で、すべてを“勝ち取れる”と信じている。
でも本当に、そんなに世の中は甘くない。

（私は……私のやり方で、私の立場を守る）