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【第1章】理想、落ちてましたわ☆ぴょん
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四月の朝。学院の門をくぐるマリエッタ・ルシアンの髪は、春風とともにふわりと跳ねた。
見事な金のツインテール。軽やかに揺れるリボン。
そして、両腕でぎゅっと抱えているのは、レースとビジューで飾り尽くされた、乙女全開な手帳。
(初日は印象が肝心ですわ……!)
ぴかぴかの笑顔と、ぴょんぴょん跳ねるような足取りで進むその姿に、
周囲の視線が集まるのは当然だった。
「相変わらず……その手帳、まぶしすぎる」
ため息まじりに隣を歩く青年――シリル・ルシアンが呟く。
「お兄さま、乙女の努力を軽く見てはいけませんわ!」
「乙女というより、“勇者っぽい何か”に近いな」
「それ、褒め言葉として受け取りますわ☆ぴょん♪」
いつものようにずれた会話を交わしながら、ふたりは学院の中央棟へと進む。
この日、マリエッタは兄の手引きで、学園のとある“重要人物”たちに紹介されることになっていた。
---
「こちら、グリフォード公爵家のご令嬢、セレナ嬢と……その弟君、レオナルド殿だ」
中庭のテーブルで待っていたのは、気品に満ちた美しい少女と――
猫背で、前髪で目元がまったく見えない、実に挙動不審な男子生徒。
「は、初めましてっ!マリエッタ・ルシアンですっ☆ぴょん!」
ツインテールがぱたん、と揺れて軽く会釈する。
その瞬間――レオの動きが、止まった。
「…………」
「………………」
「つ、ツインテール……!? ぴょん……!? これは幻覚か……!?
夢か……? いや、“具現化”……!?いやまさか、“転生特典”……!?!?
ふぉおおおおおおおおおおおおっっっ!?」
「お、弟がすみません。普段はもう少し……まともなんです」
セレナが深く頭を下げる。
「い、いえいえっ、面白~いですわね、レオ様って☆ぴょん!」
とびきりの笑顔でそう告げるマリエッタ。
その隣で、レオはぷるぷる震えていた。
(これは夢だ……理想の三次元具現化など、あり得ぬ……!
ぴょんて……ぴょんって……神がこの世にぴょんを落とされたというのかぁあああっ!?)
「……マリエッタ、淑女らしく落ち着きなさい」
シリルがいつもの冷静さで妹をたしなめるが、本人はまったく意に介さない。
「でもでもぉ~、初対面のご挨拶は印象が大事ですもの☆ぴょん!」
そんなやりとりを背に、セレナは「うちの弟、逃げ出さないでよ……」と頭を抱えていた。
---
その日の夜。寮の個室に戻ったマリエッタは、
荷ほどきを終えると、大事そうにリボン付きのポーチを取り出した。
中から現れたのは、ラメ入りのカバーに、ハートと王冠と魔法陣(なぜ)が散りばめられた、
目もくらむようなキラッキラの手帳。
彼女はページをそっと開くと、ピンク色のふわふわボールペンを手に取り――
なにやら、ぱたぱたと文字を書き込んでいく。
内容は見えない。けれど、ときおり「うふふっ」と笑ったり、
「うーん、ここは……アリ、ですわね☆」などと呟く姿は、微笑ましいというよりも、やや不気味である。
ひとしきり書き終えたあと、満足げにペンをくるくるっと回し、ぺたんと閉じた。
「よ~しっ、明日もがんばるぴょんっ♪」
彼女のツインテールが軽く跳ねた。
そしてその手帳が、“ただの可愛い日記帳ではない”と気づく者は、
この時点では誰もいなかった。
見事な金のツインテール。軽やかに揺れるリボン。
そして、両腕でぎゅっと抱えているのは、レースとビジューで飾り尽くされた、乙女全開な手帳。
(初日は印象が肝心ですわ……!)
ぴかぴかの笑顔と、ぴょんぴょん跳ねるような足取りで進むその姿に、
周囲の視線が集まるのは当然だった。
「相変わらず……その手帳、まぶしすぎる」
ため息まじりに隣を歩く青年――シリル・ルシアンが呟く。
「お兄さま、乙女の努力を軽く見てはいけませんわ!」
「乙女というより、“勇者っぽい何か”に近いな」
「それ、褒め言葉として受け取りますわ☆ぴょん♪」
いつものようにずれた会話を交わしながら、ふたりは学院の中央棟へと進む。
この日、マリエッタは兄の手引きで、学園のとある“重要人物”たちに紹介されることになっていた。
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「こちら、グリフォード公爵家のご令嬢、セレナ嬢と……その弟君、レオナルド殿だ」
中庭のテーブルで待っていたのは、気品に満ちた美しい少女と――
猫背で、前髪で目元がまったく見えない、実に挙動不審な男子生徒。
「は、初めましてっ!マリエッタ・ルシアンですっ☆ぴょん!」
ツインテールがぱたん、と揺れて軽く会釈する。
その瞬間――レオの動きが、止まった。
「…………」
「………………」
「つ、ツインテール……!? ぴょん……!? これは幻覚か……!?
夢か……? いや、“具現化”……!?いやまさか、“転生特典”……!?!?
ふぉおおおおおおおおおおおおっっっ!?」
「お、弟がすみません。普段はもう少し……まともなんです」
セレナが深く頭を下げる。
「い、いえいえっ、面白~いですわね、レオ様って☆ぴょん!」
とびきりの笑顔でそう告げるマリエッタ。
その隣で、レオはぷるぷる震えていた。
(これは夢だ……理想の三次元具現化など、あり得ぬ……!
ぴょんて……ぴょんって……神がこの世にぴょんを落とされたというのかぁあああっ!?)
「……マリエッタ、淑女らしく落ち着きなさい」
シリルがいつもの冷静さで妹をたしなめるが、本人はまったく意に介さない。
「でもでもぉ~、初対面のご挨拶は印象が大事ですもの☆ぴょん!」
そんなやりとりを背に、セレナは「うちの弟、逃げ出さないでよ……」と頭を抱えていた。
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その日の夜。寮の個室に戻ったマリエッタは、
荷ほどきを終えると、大事そうにリボン付きのポーチを取り出した。
中から現れたのは、ラメ入りのカバーに、ハートと王冠と魔法陣(なぜ)が散りばめられた、
目もくらむようなキラッキラの手帳。
彼女はページをそっと開くと、ピンク色のふわふわボールペンを手に取り――
なにやら、ぱたぱたと文字を書き込んでいく。
内容は見えない。けれど、ときおり「うふふっ」と笑ったり、
「うーん、ここは……アリ、ですわね☆」などと呟く姿は、微笑ましいというよりも、やや不気味である。
ひとしきり書き終えたあと、満足げにペンをくるくるっと回し、ぺたんと閉じた。
「よ~しっ、明日もがんばるぴょんっ♪」
彼女のツインテールが軽く跳ねた。
そしてその手帳が、“ただの可愛い日記帳ではない”と気づく者は、
この時点では誰もいなかった。
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