カケス男とウグイス女

しっかり村

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ウグイス女の谷渡り~

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喰われちまったか・・・・・。

ベンケェは立ち尽くした。

凪いで静まり返った池面を風がほのかに通り過ぎて小さく波打つ。

「ホケチョケチョケチョ、ホケチョケチョ。ケチチョケチチョホケチョケチョ!」

風は、巨大な鳥が上空から近づいていることを知らしめた。

「ウグイス女か」

「ベンケェはぁん」


ウグイス女にぶら下がったカケス男が手を振っている。

「おぉ、カケス男も……」

「早かったでんな」

カケス男はウグイス女の脚から手を放し、ふわりと降り立った。

「いやいや早いことない。遅かった。スマン。ワシがついていながら……」

ベンケェは跪いて深々と頭を下げた。

「そっちはウグイス女さんじゃな。せっかくアンタが助けてくれたホケチョをワシは助けられんかった。申し訳ない。とほほほほ……せめては、あの崖の途中から駆けつけてくれた柏の樹を墓標とし、かの好青年を偲ぼうぞ」

ベンケェは三日月池に斜めに立つ柏の樹に向かって深くニ礼し、静かに手を合わせた。

「てぇことは?ホケチョは・・・・・」

「すまぬ。池の中じゃ」

「は・・・・・・・?」







カケス男は静まり返った池の前で呆然と立ち尽くした。

ホウホウケチョ、ホケチョケチョケチョホケチョケチョ、ケチョケチョケチチョホケチョケチョ

ウグイス女の谷渡りが厳かに響いた。




 響きに呼応した池面がにわかにざわめく。

ぶくぶくと泡が立ち昇ってきたかと思うと

「ぶはぁ~っ!」

突然、大きな水飛沫と共に何者かが浮かび上がってきた。

「おお~っ!」

「ホケチョオォ!」

飛沫の中から現れたのは、びしょ濡れのホケチョだ。

「おお~っ!無事だったかぁ」

ホケチョは、そのまま水面を滑るように泳ぎ岸へと向かった。着岸すると、両腕を万歳するような形で岸を掴み、身体を湖面から引き上げた。すでに着ていた服は跡形もなく、程よく引き締まった若い肉体が、大胸筋、腹筋と顕わになり、そして腰から下が、ズルズルと、ズルズルと、重たそうに、ズルズルズル……?

 

「ありゃ?」

「こりゃ、また何としたことか?」

「ホ・ケチョ……」

「ちょっと見ない間にえらい変わったもんやな」

ホケチョは尚も重たそうな下半身をズルズルと引きずり上げる。上げても上げても、長い尾は途切れず、およそ二十メートル。腰から下にびっしりとぬめりを含んだウロコをまとい、長く長くうねっている。

ホケチョは大蛇と合体してしまった。顔は間違いなくホケチョで手はあるし、大胸筋も腹筋も鍛えられた若い男性のものだ。しかし、ウロコをまとう長い下半身は紛れもなく先ほど闘った大蛇だ。

全長およそ二十一メートルの蛇男が誕生した。当のホケチョは、どうしてそんな目で見るの? という顔だ。ベンケェとカケス男は呆然と立ち尽くし、ウグイス女は涙を流している。

「ホケチョ!」

いつものウグイス女とは少し違うトーンのひと鳴きだった。その声に顔を上げたホケチョの視線は、初めて真正面からウグイス女の顔をとらえた。ウグイス女の黒々とした瞳の行方とまっすぐに合わさる。

「母さん! 」

見覚えのある顔、聞き覚えのある声、探し求めていた人。もう一度確かめるようにお互いを呼び合う。

「ホケチョ!」

「母さん!」

変わり果てた互いの異形を確かめながら近づきあい、これ以上近づいたらさらに合体しそうなくらい近づいたところで二人は固く抱擁しあった。




「グスッ・・・とりあえずは良かったんじゃろうか?」

「よかったん・・・・ちゃいまっか。どう見てもシマフクロウと大蛇の相撲にしか見えへんけど・・・・」



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