てっぺんかけたか(カケス男とウグイス女Ⅱ)

しっかり村

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拾 紅いパラパラ鳥とズルコビッチ

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拾  紅いパラパラ鳥とズルコビッチ
「不老不死の泉というのを知っとりますじゃろうか?」
「フローフシノイズミ?」
「それやそれカマクラはんがその話をしよったからじゃ」
「あの不老不死の泉のことじゃろ?」
「先程呑まれたものがまさしくそれ。といってもワシのところに湧いて出るのはシッカリ山からの伏流水で希釈されとります」
「はあ~っ。どうりで」
「希釈された伏流水で生活しとるワシがこうじゃから、源泉のほとりに棲むことを選んだホケチョ君らの暮らしぶりを想像するのは、そう難しいことではなかろう」
「ふむふむ」
「昨日、パラパラと鳴く紅い大きな鳥が来おったんじゃ。変な鳥でな、こうして羽を回すようにしてゆっくり飛ぶんじゃ」
ベンケェが両腕を頭の上に上げてグルグル回す。
「鳥は着地する場所を見つけられずに、上空でホバリングしながら、あろうことかお腹から長いへその緒を出し、ヒトを吐き出しよった。しかも生きたままじゃ。食べたはいいが消化しきれなかったんじゃろか? それとも産んだんじゃろか? そうこう思うておるうちにヒトがワシの目の前に降りてきた」
「何やヘリコプターみたいな鳥やな」
「ヘリコプター?」
「いや、話の腰を折ってすまん。続けてくれんか」
「その男がズルコビッチだ、と大きな声で名乗ったので、ワシはベンケェじゃと答えた。そしたらベンケェいう名前は昔学校でヨシツネという名前と一緒に習った覚えがあるが、そのベンケェで間違いないか?と聞くから、ああ、ヨシツネ様と一緒に居たベンケェじゃと答えた。すると、今年は二〇二五年だからお主は八百七十歳は超えとると言いおった。その時初めて自分の歳というものがわかってビックリ仰天したわな。で、そのズルコビッチとやらが青年を捜しているとか言ったから、ホケチョ君のことじゃと思い、あの頂上で楽しくやっとりますと教えてやったんじゃ。そうしたら奴は急に慌てた様子で、『そんな馬鹿な。あんなとこでヒトが暮らせるはずなどなかろう。あすこはヒトの触れてはならぬ禁断の領域のはず。恐ろしい猛毒の泉と、炎を吐く大蛇が猛り狂っているという噂。何よりどうやって頂上まで辿り着いたのだ。シッカリの滝のある鋭角に切り立ったあの崖はゆうに二百メートルはあろう。若い屈強な男とて易々と登れるもんでもなかろう。ましてや空からだって厚い雲に覆われて近づけやせんのだ』とまくし立てた。ワシは猛毒の泉はわからんが、不老不死の泉なら知っとるし、ホケチョは大蛇と仲良くやってると教えてやった。すると奴は少し焦った様子ですぐに何とかせねば、早急に対処せねばとウロウロ呟いていたから、まあまあこれを!とさっきと同じ徳利の水を呑ましてやったんじゃ。そう、さっきのと同じ泉を」
ベンケーは長い話に一息ついて、徳利の水で口を湿らせた。
「ズルコビッチは落ち着きを取り戻して長々と続けた。『ナルホドこの水を毎日呑んでいれば、その永きに渡る人生も納得のいくもの。しかし毒と薬は紙一重。量を誤れば命取り。即刻調査と研究開発が必要。コレは酒樽ですかね。ひとつお借りします。調査のためです。ホケチョ君が危ない。いいですか。私は再びここを訪れます。その時迷わず着地できるように、出来ればこの島のもっとも安全で見晴らしの良い所にノボリを立てておいて下さい。そうですね。~不老不死の泉あります~とでも書いてもらいましょうか。そしてさらに頂上にも頂上の標を造りましょう。ホケチョ君たちが安心安全に暮せるように。もちろん私も都合が付き次第合流します。ホケチョ君を救い出さねばなりません。ナニ?字が書けないとですか?ああそうですか。それでしたらお隣のヘヴン島とか当たってみてはどうでしょう。助けになる人が棲んでいるかも知れませんよ。ここオシリ島とヘヴン島はたったふたつだけ、国境をまたぎながら世界のどの国にも属さない異空の島ですから、助け合っていくことが大事です。どうぞお互いの幸せのために、持続可能な地球のために、すみやかに行動してください』喋り切った奴は、また紅いパラパラ鳥に吸い込まれてどこぞに飛んでいきおった」
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