灰かぶりと宝石姫

ナカナカ田

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サフィーリアの黄金姫。

それが、シリーの通り名だった。

輝くようなきらめく金色の髪に、爽やかな初夏の新緑を思わせるようなエメラルドグリーンの瞳。大きくも小さくもなく絶妙に通った鼻。薔薇色の頬と、熟れた林檎のように赤い唇。女性にしては少し低いが、いつも落ち着いていて耳に心地よい凛とした声。そして、手足や腰は細いのに胸はほどよく大きく、お尻はプリンとしている。

若干16歳ーー美人とはまさにこういうものだーーという見本のように美しい妹だった。

対する私は20歳、濃い灰色の髪に灰色の瞳、瞳は光の加減で時々紅く見えることもある。灰紅の瞳は王家の特徴で、亡き父王も同じ瞳をしていた。そういう意味では、私は正統な王家の血筋を体現しているのだが、シリーの美貌の前では、そんなものは光加減で見え方の変わる道端に落ちている石ころのようなものだった。光り輝く宝石の原石には逆立ちしたって敵わない。

そして、金髪にエメラルドグリーンの瞳は亡き王妃が持つものだった。
なんのことはない、美人の母に似た妹と平凡な容姿の父に似た姉だった。

シリーは決して自分の容姿を誇るタイプではなかったが、なまじ身分が王族なだけに、周りのおしゃべり雀が事あるごとにピーチクパーチク言ってくるのだ。

こちらは何ひとつ望んでいないのに、シリーと私の容姿をあげつらい、お気の毒な姉姫さま…と哀れむのだ。
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