祖母がざまぁされたヒロインだったので、孫の私はひっそりと暮らしたい

ナカナカ田

文字の大きさ
6 / 20

6 side王子

しおりを挟む
「お尋ねのとおり、わたくしはアース男爵家の長女、ルナ・アースと申します。学びたい学問があるため恥知らずにも学院にやって参りましたが、殿下たちに近づくつもりは全くありませんので、私のことは以後、空気のように取り扱っていただければと思います」

エメラルドの瞳は、まさに宝石のようだった。

ピンクブロンドにエメラルドの瞳。色白の思ったよりも小柄な少女。

それが、アース男爵家令嬢ルナ・アースだった。


⭐︎


入学式が終わったあと、学院長室に来て欲しいと言われていたので、向かっていた先の廊下で彼女を見かけた。

こちらに気づくと彼女はさっと廊下の脇に寄り道を譲った。


今思えば、どうして彼女に声をかけたのかー。


(彼女は、関わりたくない相手のはずなのに)

気づけば声をかけていた。

「君がアース男爵家の令嬢だろうか?」

そう声をかけたのに、彼女は顔をあげることもなく、返事もしない。

「顔をあげてくれないか?君がアース男爵家令嬢なんだろう?」

もう一度、声をかけた。

すると、やや間があってゆっくりと彼女が顔をあげた。強い光を宿した瞳の少女だと思った。

そして、返ってきたのは予想外の返答だった。

彼女の後ろにいる人物がブッと吹き出している。

吹き出した人物はそのまま声をかけてきた。

「エトワール子爵家の嫡男ノーヴァと申します。殿下、発言をお許しくださいますか?」

(エトワール家の嫡男…)

こいつが噂の…というのが頭をよぎった。

輝く彗星すいせいエトワール。数年前から急に力をつけてきた一族。

爵位は子爵だが、その功績は内外問わず輝かしいものばかりだ。子爵自身はおっとりした人物だが、領地でやっていること、また王都に持ってくる政策は凄まじいと言っていいほど斬新で画期的。

先日の他国の王侯貴族を招いた会議でも、子爵の案が採用されつつがなく、自国も他国も大きな満足を持って会議を終えられた。

通常であれば、当主でも王族に認識されない者がいるクラスの爵位であるにも関わらず、王子である自分でさえ意識せざるを得ない一族。

「エトワール子爵家のノーヴァ。発言を許そう」

ノーヴァはアース家の娘を庇うように立っている。それが妙に落ち着かない。

「…っ、殿下!」

焦った様子のメルキュールが止めに入るも、邪魔はされたくなかった。

「メルキュール、2度言わせないでくれないか」

「ですが…!」

普段ではあまり使わないやや強い調子で言えば、メルキュールは引き下がった。


ノーヴァは王子に何を言うのか。


「お許しが出たので発言させていただきます。アース男爵家の令嬢については、エトワール子爵家が責任を持って対応いたしますので、殿下がたは安心して学院生活をお過ごしください。殿下やその側近の方々はもちろん、まわりの生徒の方にもご迷惑をおかけしないよう私が責任を持って彼女を見張りますので」

ひどく挑戦的な目で、ノーヴァは言った。
物腰は優雅で穏やかな声で。
しかし、笑顔の奥に光る目は笑ってなどいなかった。

さながら強力な肉食獣ーーそんな目をして王子以下、側近たちを睨めつけた後、何事もなかったかのようにニコリと笑うノーヴァ。


その目は雄弁に語っていた。


ルナアース家の娘に手を出すなーーと。


「そうか。だが、そのような気づかいは無用だ。彼女も我々と同じ学院の生徒だ。のぞむままに学院生活を楽しむといい」

だから、こう言ってしまったことに他意はない。

大人気なくもノーヴァの敵意に対抗してしまっただけで、彼女はどんな人物だろうかー?などという疑問が湧いたなど、あるわけがないのだ。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無実ですが、喜んで国を去ります!

霜月満月
恋愛
お姉様曰く、ここは乙女ゲームの世界だそうだ。 そして私は悪役令嬢。 よし。ちょうど私の婚約者の第二王子殿下は私もお姉様も好きじゃない。濡れ衣を着せられるのが分かっているならやりようはある。 ━━これは前世から家族である、転生一家の国外逃亡までの一部始終です。

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。~婚約破棄され家出したために命拾いしました~

四季
恋愛
ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...