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side王子 おそらく彼女は魔女である
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あれから2年。
ボクは7歳になった。
あの日、突然現れて、ボクを救っていった彼女について、ボクは調べて調べて調べまくった。
黒い服に黒髪の不思議な力を持つ女ーーそれっぽっちの情報から調べていくのは大変だったが、この時ばかりは王族の身分が役に立った。王宮所蔵の本を片っ端から読みあさり、人を使って調べさせたり、魔術や呪いに詳しいものを王宮に招いて教えを請うたりした。
その結果、おそらく彼女は魔女だと結論づけた。
魔女とは、超自然的な方法によって他人に災いをもたらす妖術を使うものーー
(ボクにとって彼女は災いではなかったけれど)
ただ、人間にとって魔女はあまり印象のいい生き物ではなかった。嫌われている、といった方がいいかもしれない。
今まで意識することがなかったが、注意深く魔女の気配を探りながら生きていくと、生活のあちこちに魔女の痕跡を感じることがあった。
たとえば、城下の薬屋に行けば、おそらく魔女が調合したであろう鎮痛剤や熱さましの薬、もっと怪しいものであれば惚れ薬などが、ひっそりとだが売られている。
また、魔術師と呼ばれる者の中には、密かに魔女とやりとりし、情報交換したり、教えを乞うたりしている者もいた。
(王宮魔術師の中にもいるとはね…)
無意識に生きているだけでは、分からないものである。
(あの時、彼女はボクの呪いを吸い上げていったはず)
ボクが呪いにかかれば、彼女はまたやってくるかもしれない。
その仮説は、わりと近い未来に実証された。
◇
ボクが7歳の秋のある日。
呪いにかかったボクが部屋で苦しんでいると、案の定、枕元に彼女がやって来た。
いつ彼女が来てもいいように、呪いにかかった時点で部屋の人払いはすんでいる。
額にひんやりしたものが触れ、サワサワと温かい何かがボクの身体を巡っていく。
(ひんやりした手が心地いい。温かいものは、彼女の魔力だろうか…?)
そんなことを考えながら、そっと薄目を開けてみる。
彼女にバレて、逃げられたら終わりだから、苦しみながらも、ほんのチラッと盗み見る。
彼女は目をつむっていた。
チャンスとばかりに渾身の力を振り絞って目を開け、じっと見つめる。
今は夜で、部屋には明かりもついていない。
それでも。
あの日以来、何度も、それこそすり切れそうなほど何度も思い出し、夢に描いていた彼女が目の前にいた。
目をつむり、ボクに魔力を流している彼女は、美しかった。
(どんな目の色をしてるんだろう)
のんきなことを考えているが、身体の方はそうはいかない。呪いの苦しさに力なく目を閉じた。
本当はもっと彼女を見つめていたいのに。
そうして今回も魔力が満ちると、一気に引きぬかれる。
(!)
そして、それと同時に呪いによる苦しさがなくなる。
しかし、今回も残った衰弱のせいで起き上がることも目を開けることもできない。
ふと、彼女が笑った気がした。
何とか目を開けてその姿を捉えようとするが、すでに彼女は去っていた。
ボクは7歳になった。
あの日、突然現れて、ボクを救っていった彼女について、ボクは調べて調べて調べまくった。
黒い服に黒髪の不思議な力を持つ女ーーそれっぽっちの情報から調べていくのは大変だったが、この時ばかりは王族の身分が役に立った。王宮所蔵の本を片っ端から読みあさり、人を使って調べさせたり、魔術や呪いに詳しいものを王宮に招いて教えを請うたりした。
その結果、おそらく彼女は魔女だと結論づけた。
魔女とは、超自然的な方法によって他人に災いをもたらす妖術を使うものーー
(ボクにとって彼女は災いではなかったけれど)
ただ、人間にとって魔女はあまり印象のいい生き物ではなかった。嫌われている、といった方がいいかもしれない。
今まで意識することがなかったが、注意深く魔女の気配を探りながら生きていくと、生活のあちこちに魔女の痕跡を感じることがあった。
たとえば、城下の薬屋に行けば、おそらく魔女が調合したであろう鎮痛剤や熱さましの薬、もっと怪しいものであれば惚れ薬などが、ひっそりとだが売られている。
また、魔術師と呼ばれる者の中には、密かに魔女とやりとりし、情報交換したり、教えを乞うたりしている者もいた。
(王宮魔術師の中にもいるとはね…)
無意識に生きているだけでは、分からないものである。
(あの時、彼女はボクの呪いを吸い上げていったはず)
ボクが呪いにかかれば、彼女はまたやってくるかもしれない。
その仮説は、わりと近い未来に実証された。
◇
ボクが7歳の秋のある日。
呪いにかかったボクが部屋で苦しんでいると、案の定、枕元に彼女がやって来た。
いつ彼女が来てもいいように、呪いにかかった時点で部屋の人払いはすんでいる。
額にひんやりしたものが触れ、サワサワと温かい何かがボクの身体を巡っていく。
(ひんやりした手が心地いい。温かいものは、彼女の魔力だろうか…?)
そんなことを考えながら、そっと薄目を開けてみる。
彼女にバレて、逃げられたら終わりだから、苦しみながらも、ほんのチラッと盗み見る。
彼女は目をつむっていた。
チャンスとばかりに渾身の力を振り絞って目を開け、じっと見つめる。
今は夜で、部屋には明かりもついていない。
それでも。
あの日以来、何度も、それこそすり切れそうなほど何度も思い出し、夢に描いていた彼女が目の前にいた。
目をつむり、ボクに魔力を流している彼女は、美しかった。
(どんな目の色をしてるんだろう)
のんきなことを考えているが、身体の方はそうはいかない。呪いの苦しさに力なく目を閉じた。
本当はもっと彼女を見つめていたいのに。
そうして今回も魔力が満ちると、一気に引きぬかれる。
(!)
そして、それと同時に呪いによる苦しさがなくなる。
しかし、今回も残った衰弱のせいで起き上がることも目を開けることもできない。
ふと、彼女が笑った気がした。
何とか目を開けてその姿を捉えようとするが、すでに彼女は去っていた。
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