悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

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side王子 ボクの最愛

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ボクの最愛は5歳の時に決まった。

いや、もっと前から決まっていたのかもしれないが、気づいたのは5歳だった。

ボクはこの国の第二王子で、たびたび命を狙われていた。うまく危機を避けれる時もあれば、避けきれない時もあった。

5歳の時、ボクは呪いにかかった。
胸がつぶされたように息ができなくて苦しくて、全身が痛かった。
身体ももちろん辛かったが、心はもっと苦しかった。

ボクはどうして生きている?ーー

殺してやりたいと思われ、それを行動に移されるくらい、疎まれているのに。

生きていることが辛かった。

王子という身分はボクにとって魅力的ではなかったし、立派な王宮に住むことも豪華な服を着ることも父親が王だということも、何ひとつボクを幸せにしなかった。

表面上、周りの人間はボクにかしずいている。だが、その裏でこうして呪ったり毒を盛ったりしてくるのだ。

誰もがニコニコ笑って近づいてくるが、腹の中は分からない。誰を信じていいのか分からず、かといってすべてを疑い拒絶することもできなかった。

そんな周りも自分も大嫌いで、いっそ世界から消えてしまいたかった。




そんな時、彼女を知った。







「相変わらず、私好みのすごい呪いにかかっているな」


毒で苦しむボクの枕元に、それは突然やってきた。

当然、ボクはものすごく緊張したけれど、相手はそうではないようで、ものほほんとした空気をしている。

(ボクを殺しにきたわけじゃない…?)

死神ならそれでもよかった。それくらい、生きることに希望が見出せなかった。

思いとは裏腹に、身体は勝手に緊張していたけれど。

側に何かがいても、苦しくて動けない。されるがままになるしかなかった。

(死神なら、いっそ早く殺せーー)

そう思っていると、額にひんやりとした感触がした。と、身体に何か温かいものが巡ってくる。ゆっくりひたひたとソレは染み入ってくる。不思議な感覚で、気持ち悪くはなかった。むしろ、心地いいくらいだった。温かい何かが全身にいき渡り、その感覚にひたっていると、突然ズルッとそれが引きずり出された。

(!)

訳がわからなかった。けれど、さっきまでの辛いもろもろが嘘のようになくなっていた。

(今、何が起きた⁉︎)

苦しさは去ったが、身体の衰弱まではなくならなかった。起き上がることはおろか、腕を上げることもできない。それでもなんとか首を動かし、うっすらと目を開けた。

(長い髪のーー女ーー?)

ボクが見つめているのにも気づかず、侵入者ーー黒い服を着た長い黒髪の女ーーはフッと煙のように部屋から消えていった。
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