悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

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今日、家に帰ります

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「フフフフフフ」

王子の世話になりはじめて1ヶ月。

ついにこの日がやってきた。

完全とはいかないが、呪いと私の力の同化が進み、魔法が使えるようになったのだ。

試しに私の家にある茶葉になりそうな薬草をひと握り魔法で取り寄せてみた。欲しいものを完璧な形で
取り寄せることができた。もう大丈夫である。

1ヶ月世話になった王子に、挨拶なしで帰るわけにもいかないので、取り寄せた茶葉でお茶を入れた。

最後のお茶だ。

知らず笑みがこぼれる。

ティーセットを準備し、扉で繋がっている王子の執務室をノックした。

「入るぞ」

と言って扉を開ける。

書類から顔を上げた王子が少し目を見開いた。

「アリア。もう帰るんだね」

ほんの少ししんみりと王子は聞いた。この時もう私はあのメイド服を着ていなかったから、さとい王子は察したのだろう。

「力の同化は不完全とはいえ、転移の魔法は使えるようになったからな」

少し得意げに答えながら、王子と私のティーセットをいつものソファーに整える。そして、もはや定位置となってしまった2人掛けのソファーに、私は腰かける。すぐに王子も隣にやってきた。

「今日は新作だ」

そう言って王子に笑いかけた。王子は一瞬ビックリしたような顔をして、すぐにお茶を手にして飲んだ。横顔が少し赤い。

(あまり熱くは入れなかったのにな)

王子は猫舌だ。王子がアリアの入れるお茶に文句を言ったことはないが、いつも隣で休憩するうちに、わりとすぐにそのことに気づいた。以来、薬効が落ちない範囲で低めの温度のお茶を出すようにしている。

「これを飲んだら私は帰る」

「そっか。寂しくなるね」

そうして、言葉すくなに最後のティータイムが終わった。



「世話になったな」

「アリアも元気で」

王子に最後の挨拶をする。今度こそ、もう2度と会うことはないだろう。

「……」

「どうしたの?アリア。行かないの?」

「…っ、あ、あぁ。そうだな」

そう言いながらも、私はその場を去らずにいた。

「どうしたの?まさか戻れないとか?」

「そんなことはない!だが…」

王子は不思議そうにしている。

「なら、どうして?」

「君が、嫌にさっぱりしているのがどうも気になって」

寂しがって欲しいわけではない。決してそうではないが、この1ヶ月、コアラの親子のように、カンガルーの親子のように私にベッタリだった王子が妙にさっぱりしている。

(何か企んでるんじゃないだろうな)

ついつい警戒してしまう。

「もしかして、アリア、引き止めて欲しいの?」

「そうじゃない!そんなわけないが……昨日までの君とあまりに違って驚いている」

「アリアが望むことだからね。ボクはその意思を尊重したいんだ」

王子がまともなことを言っている!

とても驚いたが、それならば大丈夫だろうか。

「何か企んでるわけじゃないんだな?」

「嫌だなアリア。人聞きの悪い。ボクは何かを企んだりしないタチだよ」

アハハと王子が笑う。

(ウソつけ。息するみたいにだましたりめたり丸め込んだりするクセに)

ギロリと睨んだが、王子はどこ吹く風だ。

「まぁいい、なら、本当に帰ることにする。じゃあな」

「うん、アリアも元気で」

そう言って別れた。
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