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エリス・ルロワ
侍女の嘆き
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しばらく経ち、気持ちが少し落ち着いたわたしは、さっきシャルロットに叩き落され、床に転がったパンを見た。
古くなって表面がカチカチのせいで、かえって埃が付きにくそうだ。
泥に落ちたわけでもないから十分食べられる。
そう思い、拾い上げようと近づいたとき、扉が叩かれ、少しだけ開かれた。
「エリスお嬢様、ローラです」
外から小さな声で告げられ、わたしは急いで扉に駆け寄った。
「ローラ?」
「ああ、エリスお嬢様!」
わたしの専属侍女のローラが、スルッと部屋の中に入って来た。
「申し訳ございません、お許しもなく勝手に中に……」
「いいのよ、会えて嬉しいわ」
「うっ……エリスお嬢様……」
わたしより二歳年上だけれど、小柄でかわいらしい容姿をしていて、年下のようにも見えるローラ。
いつもニコニコと笑顔で仕えてくれていた彼女が、大粒の涙をこぼす。
「お嬢様……」
泣きながら抱きついてきたローラの背中を摩りながら『そんなに泣かないで』と言ったけれど、
「ううっ……あんまりです……エリスお嬢様がせっかく無事にお戻りになったのに……旦那様も奥様も……」
「いいのよ。歓迎されないことはわかっていたわ。でも、マルタン王国へ行く前にあなたに会えて良かった」
「では、本当なのですか? エリスお嬢様がマルタン王国へ行かなければいけないという事は」
「ええ、本当よ。明日立つわ」
「そんな……」
「仕方が無い事なのよ。わたしはもう、納得しているわ」
「酷すぎます、酷すぎますぅぅ……」
そう言って、ローラは泣き続けた。
しばらくの間泣き続け、ようやく落ち着きを取り戻したローラは『取り乱して申し訳ございませんでした』と涙をぬぐって、肩にかけていた布袋を外した。
「机をお借りしますね」
そう言うと、中の物を出しはじめた。
中身が半分ほどになったワイン瓶と、布に包まれた何か。
「……これは?」
「料理長から預かってきました」
布を開くと、中身は大きなパンだった。
切り込みが入れられている上の部分を持ち上げてみると、肉とチーズと野菜が大量に挟まれていた。
「これ……」
「エリスお嬢様が厨房へいらっしゃった後、急いで作ったそうです。奥様やシャルロットお嬢様の目があるかもしれないので、何も無いふりをしたそうですが『エリスお嬢様にあんな態度をとってしまって申し訳ございませんでした』と伝言を頼まれました」
「そんな……気にしないでと伝えてちょうだい」
あまりにも美味しそうで、行儀が悪いけれど、薄切りの肉を一つつまんで口に運んでみた。
「ああ、美味しい。すごくいい燻製肉」
「本当は、きちんとお皿に盛りたかったのですが、バレないようにととにかくパンに挟んだそうです。ワインも半分空いてますが、良い物だって……」
そう言いながら部屋の中を見回し、困った顔になった。
「……グラスも、無くなってしまったんですね」
「ええ、なにもかも片付けられてしまったみたいね……いいわ、ワインはそのまま飲むから」
「そんな! 荒くれ者でもあるまいし、お嬢様がそんな……」
「いいのよ。戦場では、部隊のみんなと回し飲みもしていたわ。……うん、良いワイン」
「あっ! カップがあるじゃないですか。せめてこれに入れて飲んで下さい!」
「ええ、わかったわ」
いつもの元気が戻ってきたローラに、わたしも笑顔になりながら、残っていた水を飲み干し、カップにワインを注いだ。
古くなって表面がカチカチのせいで、かえって埃が付きにくそうだ。
泥に落ちたわけでもないから十分食べられる。
そう思い、拾い上げようと近づいたとき、扉が叩かれ、少しだけ開かれた。
「エリスお嬢様、ローラです」
外から小さな声で告げられ、わたしは急いで扉に駆け寄った。
「ローラ?」
「ああ、エリスお嬢様!」
わたしの専属侍女のローラが、スルッと部屋の中に入って来た。
「申し訳ございません、お許しもなく勝手に中に……」
「いいのよ、会えて嬉しいわ」
「うっ……エリスお嬢様……」
わたしより二歳年上だけれど、小柄でかわいらしい容姿をしていて、年下のようにも見えるローラ。
いつもニコニコと笑顔で仕えてくれていた彼女が、大粒の涙をこぼす。
「お嬢様……」
泣きながら抱きついてきたローラの背中を摩りながら『そんなに泣かないで』と言ったけれど、
「ううっ……あんまりです……エリスお嬢様がせっかく無事にお戻りになったのに……旦那様も奥様も……」
「いいのよ。歓迎されないことはわかっていたわ。でも、マルタン王国へ行く前にあなたに会えて良かった」
「では、本当なのですか? エリスお嬢様がマルタン王国へ行かなければいけないという事は」
「ええ、本当よ。明日立つわ」
「そんな……」
「仕方が無い事なのよ。わたしはもう、納得しているわ」
「酷すぎます、酷すぎますぅぅ……」
そう言って、ローラは泣き続けた。
しばらくの間泣き続け、ようやく落ち着きを取り戻したローラは『取り乱して申し訳ございませんでした』と涙をぬぐって、肩にかけていた布袋を外した。
「机をお借りしますね」
そう言うと、中の物を出しはじめた。
中身が半分ほどになったワイン瓶と、布に包まれた何か。
「……これは?」
「料理長から預かってきました」
布を開くと、中身は大きなパンだった。
切り込みが入れられている上の部分を持ち上げてみると、肉とチーズと野菜が大量に挟まれていた。
「これ……」
「エリスお嬢様が厨房へいらっしゃった後、急いで作ったそうです。奥様やシャルロットお嬢様の目があるかもしれないので、何も無いふりをしたそうですが『エリスお嬢様にあんな態度をとってしまって申し訳ございませんでした』と伝言を頼まれました」
「そんな……気にしないでと伝えてちょうだい」
あまりにも美味しそうで、行儀が悪いけれど、薄切りの肉を一つつまんで口に運んでみた。
「ああ、美味しい。すごくいい燻製肉」
「本当は、きちんとお皿に盛りたかったのですが、バレないようにととにかくパンに挟んだそうです。ワインも半分空いてますが、良い物だって……」
そう言いながら部屋の中を見回し、困った顔になった。
「……グラスも、無くなってしまったんですね」
「ええ、なにもかも片付けられてしまったみたいね……いいわ、ワインはそのまま飲むから」
「そんな! 荒くれ者でもあるまいし、お嬢様がそんな……」
「いいのよ。戦場では、部隊のみんなと回し飲みもしていたわ。……うん、良いワイン」
「あっ! カップがあるじゃないですか。せめてこれに入れて飲んで下さい!」
「ええ、わかったわ」
いつもの元気が戻ってきたローラに、わたしも笑顔になりながら、残っていた水を飲み干し、カップにワインを注いだ。
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