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エリス・ルロワ
引き渡し
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朝から晩まで長時間馬車に揺られ、小さな宿に宿泊しながら四日後、マルタン王国の国境にたどり着き、国境警備隊の施設に案内された。
「私はサミュエル・ルグランです。ここからは我々が王都へお連れします。書類にサインを」
短髪で大柄な二十代半ばくらいの男性がそう挨拶をし、フォーレ卿がそれに対応している。
いよいよ、マルタン王国に引き渡されるのだ。
「えーと……エリス・ルロワ侯爵令嬢様、ですね?」
「はい」
「サミュエル・ルグラン侯爵です。フェリックス陛下の命を受けお迎えに参りました。王都まで安全にお連れ致します」
ルグラン侯爵は、わたしをまじまじと見ながら言った。
……器量も良くないし、みすぼらしい格好だもの。侯爵令嬢とは思えないでしょうね。
「王都までは馬車で四日かかります。申し訳ありませんが、荷物と身体検査をさせて頂きます」
「わかりました」
その場で調べられるものと思ったら、奥の部屋で女性が検査をしてくれた。
マルタン王国は、敵国だった人間に対しても礼を尽くしてくれるらしい。
「問題ないようですね。荷物はあれだけですか?」
「はい」
ほとんど処分されていたせいで、小さなバッグの中に入っているのはローラがくれた侍女用の黒いワンピースと残っていた数枚の下着だけだ。
「そうですか……まあ、すぐ必要なくなるか……」
独り言のような小さな呟きに、ドキッとする。
「もし、この移動の最中に必要な物があったら言って下さい」
そう言いながら、ルグラン侯爵はバッグを持ち『じゃあ、行きましょう』と外に出た。
「エリス様、お別れです」
「フォーレ卿、ここまでありがとうございました。わざわざ、アレクシ様の側近である貴方に送っていただき、本当にありがたかったです。どうぞ、お気をつけてお戻り下さい」
「……エリス様……」
別れの挨拶をすると、フォーレ卿は小さな声で言った。
「お守りできず、申し訳ございませんでした」
数年前、アレクシ様とフォーレ卿と、これからのガルシア帝国をどうやって繁栄させていくか、語り合った事を懐かしく思い出した。
「どうか、アレクシ様を……」
「かしこまりました」
別れを告げ、わたしは一人でマルタン王国の馬車に乗りかえ、死への旅を続けた。
王都まで四日と言われたけれど、それはとても余裕をもって組まれた日程だった。
途中で何度も休憩をし、夕方には宿に入り、朝は遅めの出発。
これまでの旅よりだいぶ楽だった。
「もう、王都は目の前です」
四日目の朝、ルグラン侯爵が言った。
「一時間もしないうちに王都に入ります。それで、王に会う前に身支度を整えていただきます。この者が手伝いますので」
「おはようございます、エリス侯爵令嬢様。わたしはエマ・ルグラン、サミュエルの母です」
背はあまり高くなく、少しふくよかで優しそうなご婦人は、ニコニコとそう言った。
「母上、余計な事は言わないで下さいよ」
「はいはい、わかりましたよ。じゃあ、黙って支度をしますから、貴方は部屋の外に出ていなさい」
「わかりました。では、食堂で待ちますが、いいですね? 何も話さないように!」
「はいはい。まったく煩いったら……ねえ?」
息子が出て行くのを見送ってから、彼女はわたしを見てニッコリ笑った。
「私はサミュエル・ルグランです。ここからは我々が王都へお連れします。書類にサインを」
短髪で大柄な二十代半ばくらいの男性がそう挨拶をし、フォーレ卿がそれに対応している。
いよいよ、マルタン王国に引き渡されるのだ。
「えーと……エリス・ルロワ侯爵令嬢様、ですね?」
「はい」
「サミュエル・ルグラン侯爵です。フェリックス陛下の命を受けお迎えに参りました。王都まで安全にお連れ致します」
ルグラン侯爵は、わたしをまじまじと見ながら言った。
……器量も良くないし、みすぼらしい格好だもの。侯爵令嬢とは思えないでしょうね。
「王都までは馬車で四日かかります。申し訳ありませんが、荷物と身体検査をさせて頂きます」
「わかりました」
その場で調べられるものと思ったら、奥の部屋で女性が検査をしてくれた。
マルタン王国は、敵国だった人間に対しても礼を尽くしてくれるらしい。
「問題ないようですね。荷物はあれだけですか?」
「はい」
ほとんど処分されていたせいで、小さなバッグの中に入っているのはローラがくれた侍女用の黒いワンピースと残っていた数枚の下着だけだ。
「そうですか……まあ、すぐ必要なくなるか……」
独り言のような小さな呟きに、ドキッとする。
「もし、この移動の最中に必要な物があったら言って下さい」
そう言いながら、ルグラン侯爵はバッグを持ち『じゃあ、行きましょう』と外に出た。
「エリス様、お別れです」
「フォーレ卿、ここまでありがとうございました。わざわざ、アレクシ様の側近である貴方に送っていただき、本当にありがたかったです。どうぞ、お気をつけてお戻り下さい」
「……エリス様……」
別れの挨拶をすると、フォーレ卿は小さな声で言った。
「お守りできず、申し訳ございませんでした」
数年前、アレクシ様とフォーレ卿と、これからのガルシア帝国をどうやって繁栄させていくか、語り合った事を懐かしく思い出した。
「どうか、アレクシ様を……」
「かしこまりました」
別れを告げ、わたしは一人でマルタン王国の馬車に乗りかえ、死への旅を続けた。
王都まで四日と言われたけれど、それはとても余裕をもって組まれた日程だった。
途中で何度も休憩をし、夕方には宿に入り、朝は遅めの出発。
これまでの旅よりだいぶ楽だった。
「もう、王都は目の前です」
四日目の朝、ルグラン侯爵が言った。
「一時間もしないうちに王都に入ります。それで、王に会う前に身支度を整えていただきます。この者が手伝いますので」
「おはようございます、エリス侯爵令嬢様。わたしはエマ・ルグラン、サミュエルの母です」
背はあまり高くなく、少しふくよかで優しそうなご婦人は、ニコニコとそう言った。
「母上、余計な事は言わないで下さいよ」
「はいはい、わかりましたよ。じゃあ、黙って支度をしますから、貴方は部屋の外に出ていなさい」
「わかりました。では、食堂で待ちますが、いいですね? 何も話さないように!」
「はいはい。まったく煩いったら……ねえ?」
息子が出て行くのを見送ってから、彼女はわたしを見てニッコリ笑った。
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