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フェリックス・マルタン
緊張の対面
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戦場で見たときよりも、ずっと華奢で美しい女性が、ピンクのドレスのスカートをつまんで、深く頭を下げる。
「エリス・ルロワでございます」
これまで俺に対する貴族の女性達は、扇子で口元を隠してクスクス笑ったり、わざと聞こえるように悪口言ったりするばかりだったから、こうやってきちんと挨拶されると、その美しい所作に目を奪われるけど……そうだ、ボーっとしていられない。
「エリス嬢、長旅ご苦労。さあ、座って」
「いえ、わたくしはこのままで結構でございます」
ええっ?
そんなこと言われるなんて……よし、じゃあこれならどうだ?
「少し話がしたいんだ。首が疲れる、座ってくれ」
「……かしこまりました」
よーっし、座らせる事に成功したぞ!
タイミング良く、お菓子も運ばれてきた。
宮廷菓子職人に最高の材料で作らせた、最高の菓子だ。きっと喜んでくれるだろう。
「日程上、昼食の時間をとれなかったようなので用意させた。飲み物は、お茶でいいだろうか」
「はい」
そう返事をしたものの、何も手に取ろうとしない。お茶さえもだ。
え、どうしよう……。
「気に入らなかっただろうか。それなら別の物を用意させるが……あ、毒など入っていないぞ。ほら」
俺は安心させようと、彼女の前のタルトを食べて見せた。
「お茶も入れ直させよう」
「い、いえ、このままで大丈夫です、いただきます」
細い指でカップの取っ手をつまみ、口に運ぶ。
その仕草も気品がある。
……こんな細い手で、剣を振るうとはな……。
よく見ると、あちこちに傷が見える。
「……美味しいです」
少しだけ、緊張がほぐれたような声にホッとしながら、俺はさっきサミュエルに言われたドレスの事を謝った。
「寸法が合っていなかったようで……いや、それ以前に、古いデザインの物のようで……悪気はなかったのだ、決して。ただ私は、あまりそういう事には詳しくなくて……」
「い、いえ……ご用意下さり、有難く思っております」
「ん、そうか……」
はぁぁ、優しい!
今まで会った貴族の女達と全っ然違う!
しかも可愛い。いや、美人だとは思っていたけど、可愛さもある。ピンクのドレスだから、余計そう感じるのか? というか、そんなに悪くないじゃないか、このドレス。ああ! 彼女が美人で可愛いから、なんでも似合うって事か! ああ、まともに顔を見られない。
「わたくしのような者のために、ありがとうございます。こちらも、いただきます」
「ああ、食べてくれ。口に合うといいのだが」
銀のフォークを持ち、俺なら一口で食べてしまうような小さなケーキを更に小さく取り、口に運ぶ。
「……とても、美味しいです」
はあぁぁ、そんな、花がほころぶように微笑むなんて!
い、いやいや、俺は王なんだから、デレデレしないで威厳をもって話さなければ。
「それは良かった。ああ、夕食も、今日は豪勢な物を用意するように命じておいたから、楽しみにしていてくれ」
「夕食……」
彼女の表情が変わった。
「ああ。ん? もしかして、長旅で疲れているのか? 今日は早く休みたいか? それだったら無理に一緒に食事をとらなくてもいい。これからいつでも一緒に食べられるし」
「これから、一緒に?」
怪訝そうな顔をしている。
ああ、そういえばさっきサミュエルが言っていた。
彼女は死ぬ気なのかもしれないと。
敵国の王になど、嫁ぎたくないのかもしれない……。
「エリス・ルロワでございます」
これまで俺に対する貴族の女性達は、扇子で口元を隠してクスクス笑ったり、わざと聞こえるように悪口言ったりするばかりだったから、こうやってきちんと挨拶されると、その美しい所作に目を奪われるけど……そうだ、ボーっとしていられない。
「エリス嬢、長旅ご苦労。さあ、座って」
「いえ、わたくしはこのままで結構でございます」
ええっ?
そんなこと言われるなんて……よし、じゃあこれならどうだ?
「少し話がしたいんだ。首が疲れる、座ってくれ」
「……かしこまりました」
よーっし、座らせる事に成功したぞ!
タイミング良く、お菓子も運ばれてきた。
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「日程上、昼食の時間をとれなかったようなので用意させた。飲み物は、お茶でいいだろうか」
「はい」
そう返事をしたものの、何も手に取ろうとしない。お茶さえもだ。
え、どうしよう……。
「気に入らなかっただろうか。それなら別の物を用意させるが……あ、毒など入っていないぞ。ほら」
俺は安心させようと、彼女の前のタルトを食べて見せた。
「お茶も入れ直させよう」
「い、いえ、このままで大丈夫です、いただきます」
細い指でカップの取っ手をつまみ、口に運ぶ。
その仕草も気品がある。
……こんな細い手で、剣を振るうとはな……。
よく見ると、あちこちに傷が見える。
「……美味しいです」
少しだけ、緊張がほぐれたような声にホッとしながら、俺はさっきサミュエルに言われたドレスの事を謝った。
「寸法が合っていなかったようで……いや、それ以前に、古いデザインの物のようで……悪気はなかったのだ、決して。ただ私は、あまりそういう事には詳しくなくて……」
「い、いえ……ご用意下さり、有難く思っております」
「ん、そうか……」
はぁぁ、優しい!
今まで会った貴族の女達と全っ然違う!
しかも可愛い。いや、美人だとは思っていたけど、可愛さもある。ピンクのドレスだから、余計そう感じるのか? というか、そんなに悪くないじゃないか、このドレス。ああ! 彼女が美人で可愛いから、なんでも似合うって事か! ああ、まともに顔を見られない。
「わたくしのような者のために、ありがとうございます。こちらも、いただきます」
「ああ、食べてくれ。口に合うといいのだが」
銀のフォークを持ち、俺なら一口で食べてしまうような小さなケーキを更に小さく取り、口に運ぶ。
「……とても、美味しいです」
はあぁぁ、そんな、花がほころぶように微笑むなんて!
い、いやいや、俺は王なんだから、デレデレしないで威厳をもって話さなければ。
「それは良かった。ああ、夕食も、今日は豪勢な物を用意するように命じておいたから、楽しみにしていてくれ」
「夕食……」
彼女の表情が変わった。
「ああ。ん? もしかして、長旅で疲れているのか? 今日は早く休みたいか? それだったら無理に一緒に食事をとらなくてもいい。これからいつでも一緒に食べられるし」
「これから、一緒に?」
怪訝そうな顔をしている。
ああ、そういえばさっきサミュエルが言っていた。
彼女は死ぬ気なのかもしれないと。
敵国の王になど、嫁ぎたくないのかもしれない……。
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