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フェリックス・マルタン
試食会
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「……いかがでしょうか、フェル様」
雑穀入り特製パンを食べる俺を、心配そうに見つめるエリス。
「……うん、美味しい。びっくりだ。これに、アワだのヒエだのが入っているなんて。食感がおもしろくて、むしろ小麦だけのパンより美味しく感じる。サミュエルはどう思う?」
「ええ、私も同意見です。普通のパンより重い感じで、腹持ちも良さそうですね」
俺だけの意見なら、エリスを好きすぎるあまり美味しく感じてるって可能性もあるけど、サミュエルも言うなら本当だな。
今日は、エリスの作った料理の試食会をしている。
パンの他にも、雑穀で作ったクッキーや、パンケーキもある。
「雑穀は栄養価が高く、美容と健康にも良いのです。以前は食糧不足の時以外はあまり食べられていなかったので、もったいないと思い、調理方法をいろいろ考えてみたんです。我が侯爵家の領地や、わたくしが個人的に支援している地域の慈善事業として、学校に来た子供に配ってみたところ好評でしたし、軍の食事としても取り入れつつありました」
「なるほど……トマも食べたりしてたのか?」
「はっ。隊の訓練の時にエリス様が隊員に配ってくれて、よく食べていました。ルグラン卿の仰るとおり、腹持ちが良いので、すごく有難かったです」
エリスの専属護衛のトマが、ニコニコしながら言う。
エリスに懸想しているのでは、と疑ったこともあるトマだが、エリスの侍女のローラに恋をしているとわかり、安心して専属護衛を任せている。
エリスを慕う者同士意気投合し、エリスを追いかけてマルタンまで一緒に旅をするうちに惚れたらしい。
今も隣に立つローラをチラチラ見ている。
告白はまだできずにいるようだが、うーん、是非成就してほしいものだ。
「雑穀はあまり手を掛けなくても実りますし、荒れた地でもできるので、需要が増えれば農民たちも少しは楽になるのではないでしょうか? 興味をひくために、このパンやお菓子がガルシア帝国で流行っている物で、わたくしが好んで食べているという話を広めれば、マルタン王国でも話題になるのでは」
「なるほど……」
さすがエリスだ。賢い。
「そうだ、エリス様主催のお茶会など開いてみてはどうでしょう。そこでこれらの物も出せば、話題になると思います」
「それはいい考えだな、サミュエル。そうだ、一度母上と夫人に来てもらって、これらを試してもらえないか? エリス、サミュエルの母上と奥方は、菓子好きで有名なんだ」
「それは是非、お会いしてご意見を頂きたいですわ。それにルグラン卿のお母上様には、とても良くして頂きましたので、ご挨拶したいと思っていたんです」
「母も妻も喜ぶと思います。エリス様にお会いしたいと、いつも言っておりますので」
……楽しい。
なんだ、これ。
今までは、父親や兄の我が儘、横暴に振り回され、事後処理や問題解決の為に頭を悩ませてばかりいた。
それなのに今は、夢や理想の実現の為に案を出し合い、話し合いをしている。
めちゃくちゃ楽しいぞ?
「ところでフェル様、お願いがあるのですが……」
「ん? なんだ?」
エリスが『お願い』なんて、珍しい。
「宝石でも、ドレスでも、領地でも、なんでも欲しい物を言ってくれ」
「あ、いえ、そういうのは……あ、でも……」
そう言ってちょっと考えてから、
「もしかしたら、領地は頂きたくなるかもしれません」
と、いたずらっぽく笑った。
雑穀入り特製パンを食べる俺を、心配そうに見つめるエリス。
「……うん、美味しい。びっくりだ。これに、アワだのヒエだのが入っているなんて。食感がおもしろくて、むしろ小麦だけのパンより美味しく感じる。サミュエルはどう思う?」
「ええ、私も同意見です。普通のパンより重い感じで、腹持ちも良さそうですね」
俺だけの意見なら、エリスを好きすぎるあまり美味しく感じてるって可能性もあるけど、サミュエルも言うなら本当だな。
今日は、エリスの作った料理の試食会をしている。
パンの他にも、雑穀で作ったクッキーや、パンケーキもある。
「雑穀は栄養価が高く、美容と健康にも良いのです。以前は食糧不足の時以外はあまり食べられていなかったので、もったいないと思い、調理方法をいろいろ考えてみたんです。我が侯爵家の領地や、わたくしが個人的に支援している地域の慈善事業として、学校に来た子供に配ってみたところ好評でしたし、軍の食事としても取り入れつつありました」
「なるほど……トマも食べたりしてたのか?」
「はっ。隊の訓練の時にエリス様が隊員に配ってくれて、よく食べていました。ルグラン卿の仰るとおり、腹持ちが良いので、すごく有難かったです」
エリスの専属護衛のトマが、ニコニコしながら言う。
エリスに懸想しているのでは、と疑ったこともあるトマだが、エリスの侍女のローラに恋をしているとわかり、安心して専属護衛を任せている。
エリスを慕う者同士意気投合し、エリスを追いかけてマルタンまで一緒に旅をするうちに惚れたらしい。
今も隣に立つローラをチラチラ見ている。
告白はまだできずにいるようだが、うーん、是非成就してほしいものだ。
「雑穀はあまり手を掛けなくても実りますし、荒れた地でもできるので、需要が増えれば農民たちも少しは楽になるのではないでしょうか? 興味をひくために、このパンやお菓子がガルシア帝国で流行っている物で、わたくしが好んで食べているという話を広めれば、マルタン王国でも話題になるのでは」
「なるほど……」
さすがエリスだ。賢い。
「そうだ、エリス様主催のお茶会など開いてみてはどうでしょう。そこでこれらの物も出せば、話題になると思います」
「それはいい考えだな、サミュエル。そうだ、一度母上と夫人に来てもらって、これらを試してもらえないか? エリス、サミュエルの母上と奥方は、菓子好きで有名なんだ」
「それは是非、お会いしてご意見を頂きたいですわ。それにルグラン卿のお母上様には、とても良くして頂きましたので、ご挨拶したいと思っていたんです」
「母も妻も喜ぶと思います。エリス様にお会いしたいと、いつも言っておりますので」
……楽しい。
なんだ、これ。
今までは、父親や兄の我が儘、横暴に振り回され、事後処理や問題解決の為に頭を悩ませてばかりいた。
それなのに今は、夢や理想の実現の為に案を出し合い、話し合いをしている。
めちゃくちゃ楽しいぞ?
「ところでフェル様、お願いがあるのですが……」
「ん? なんだ?」
エリスが『お願い』なんて、珍しい。
「宝石でも、ドレスでも、領地でも、なんでも欲しい物を言ってくれ」
「あ、いえ、そういうのは……あ、でも……」
そう言ってちょっと考えてから、
「もしかしたら、領地は頂きたくなるかもしれません」
と、いたずらっぽく笑った。
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