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49. ヒヨコVSはぐれワイバーン……?
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「ふんふんふーん♪チャージバードは魔石が有用~♪魔力溜めるのに最適だ~♪」
ズバッ!
「パラライズスネークは麻痺袋~♪痺れ玉を作ろうぜ~♪」
バシュッ!
「ボーンラビットは肉が美味~♪素材は取れない使えない~♪」
ゴッ!
即興でふんふん歌いながら視界に入った魔物を手当たり次第素材に換えていく。
先日商業ギルドで何人もの商人と取引してからすこぶる機嫌がいい俺。
あのときは商品登録だけするつもりだったのだが、ギルドを出てすぐに商人達に引き留められ、取引を持ちかけられたのだ。
量産体制が整っておらず売りに出すのはしばらく先だと告げても取引したいと言われ、何人かと商売契約した。ついでに他のノンバード族に対する風当たりを弱くしてほしいとお願いしておいた。
確実に利益を出す者からのお願いだ、心証を良くするためにも無下にはしないだろう。
そんな訳で歌を歌っちゃうくらいにご機嫌なのである。
尚、たまたま近くを通りかかった冒険者が、自身の何倍も大きい魔物を次々と魔法でぶちのめすちんまりヒヨコを見て戦慄したのを俺は知らない。
「おや?この反応は……」
フォレストラウルフの群れを風魔法で全滅させ、収納魔法にしまっていると、妙に強い魔力反応が探知魔法に引っ掛かった。
急いでそちらへ向かうと、予想通りの魔物がいた。
「やっぱりワイバーンか!」
思いのほか声が弾む。
なんでこんな辺境にいるんだろ?ワイバーンは王都周辺にしかいないはずなのに……
もしや、はぐれワイバーンか?たまに群れから離れる個体がいるからそれかも。
理由はなんだっていい。素材が自ら来てくれたんだ、有り難く頂戴しよう。
あちらさんが自分の接近に気付いてないうちにさっさと仕留めようとして、ふと思いとどまる。
ちょっと待てよ?これは最近新しく作った罠を試すいい機会なんじゃないか?
ここらに生息する低級の魔物で何度か実験したが、弱すぎて話にならないのだ。
ワイバーンは攻撃にそこそこ耐性があるし、ちょっとやそっとじゃ傷がつかない。罠一発でカタがつく低級の魔物より威力の検証がしやすいだろう。
予定変更。素材から実験台にチェンジ。
さっそく収納魔法から罠を取り出して検証開始。
まずは手始めに痺れ玉。パラライズスネークの麻痺袋を原材料にしたもので、少し衝撃を与えると破裂して麻痺液が飛び出す仕様。
投げた痺れ玉がワイバーンの頭に当たり、飛び出した麻痺液が容赦なく顔全体を覆い隠す。
「グオッッ!?ギャオオォォ!!」
突然頭に衝撃がきたと思ったら次の瞬間には顔面液体まみれ、そして時間を開けずに痺れが回り何がなんだか分からずのたうち回るワイバーン。
「ふむ、即効性はあるな。持続時間はどの程度だろう……」
ワイバーンに見つからないよう死角に隠れる。
麻痺の効果が切れ始めたのはそれから2分ほど経ってからだった。
「持続時間は長くないな。せいぜい足止めに使えるくらいか」
次に投げたのは爆弾。
ファイヤーバードとファイヤーウルフの血を粉末にして特殊加工したものだ。
痺れが収まり、自身を攻撃してきた何者かを鋭い目で探るワイバーンの足元に着弾。
―――――――ドゴォォンッ
「グガァッ!?」
何!?何が起きてるの!?と言いたげな顔で悲痛な声を上げるワイバーン。
直撃した足にはほんのり火傷の跡が。うーん、低級の素材だからかな?威力が思ったより弱い。
「これはもっと威力を上げたいな。要改善だ」
次はポイズンスネークの毒とチャージバードの魔石の粉末とコリカルシの実の粉末を混ぜあわせて作った眠り毒の液体。
これはこのまま使うのではなく、ウルフ系の魔物の牙に塗布して使う。
本当は投げナイフが一番最適なんだが、収納魔法に入ってるウルフ系魔物の牙の数がちょっとヤバいことになってきたので消費しておく。
適当に引っ張り出した牙に塗布して、ぽいっとな。
「ギャオオォンッ!?」
投げた牙は放物線を描き、翼を貫通して背中にグサリ。血が吹き出した。
なんなの!?もうやだよぉ!と言いたげな泣きそうな顔で悲鳴を上げるワイバーン。
「即効性はなし、と。おっ、効いてきたな」
少し間を空けてからワイバーンの動きが鈍くなり、やがてドシンっと倒れた。
苦しげな寝息が聞こえてくるが、段々と呼吸が浅くなっていき、探知に引っ掛かる魔力反応も微弱なものに変わっていく。
「これは使える。課題は即効性だな」
一通り実験を済ませて満足する。
前世では剣と魔法を上手く使い分けていたが、今の俺はご覧のとおりヒヨコ。
剣を握れず、魔法主体の戦い方になった。
未だに手元に残っているオークキングの剣で鍛練しているのだが、結果は芳しくない。
何らかの手段で剣を使えるようになるまで魔法だけで戦わなくてはいけないと悟った。
しかしいくら魔力量が膨大でも、魔道具製作などで日常的に魔力を使っている上で戦闘面でもかなり消費しているとなると少し不安になる。
そこで魔力消費を抑えるために罠を使うことを決断。
多少素材が駄目になってしまうが、万が一魔力が枯渇したらそれこそ命取りだ。最悪の事態になる前に対策は取っておくに限る。
前世だったら魔力が枯渇したら剣で補えばいいと開き直っていたが、ヒヨコな今そんな無謀なことはできないからな。
「……とはいえ、問題点は多いがな」
ため息混じりにぽつりと呟く。
罠なんてほとんど使ったことないし、市場に出回ってるものはほんの足止めにしか使えないような粗悪品ばかり。
だから自力で作ったのだが、まだまだ改善の余地ありだ。
「とりあえず今日はもう帰ろう。……と、その前に」
魔力反応はかなり弱いが、念のため風の刃で首を両断。
探知魔法に引っ掛かっていた微弱な反応がスッと消えた。
「皮はだいぶ傷んでるが、魔石だけでも持っていこう」
魔石を剥ぎ取ってワイバーンを火葬。
ありがとう、ワイバーン。君の犠牲は無駄にはしない。
ふふ、この魔石はどう使おうかな?想像を膨らませるだけでワクワクする。
下位とはいえ竜種の魔石。かなり大きい。これほど大きいと特殊な性能の魔道具も作れそうだが、この辺境では素材を揃えられない。
今は大事に取っておこう。
「いい収穫だったなぁ」
来たときよりも上機嫌で帰っていく俺であった。
尚、ワイバーンの第一発見者は俺であり、しかも速攻倒したので、アネスタ内ではぐれワイバーンの話題が出ることはなかった。
ズバッ!
「パラライズスネークは麻痺袋~♪痺れ玉を作ろうぜ~♪」
バシュッ!
「ボーンラビットは肉が美味~♪素材は取れない使えない~♪」
ゴッ!
即興でふんふん歌いながら視界に入った魔物を手当たり次第素材に換えていく。
先日商業ギルドで何人もの商人と取引してからすこぶる機嫌がいい俺。
あのときは商品登録だけするつもりだったのだが、ギルドを出てすぐに商人達に引き留められ、取引を持ちかけられたのだ。
量産体制が整っておらず売りに出すのはしばらく先だと告げても取引したいと言われ、何人かと商売契約した。ついでに他のノンバード族に対する風当たりを弱くしてほしいとお願いしておいた。
確実に利益を出す者からのお願いだ、心証を良くするためにも無下にはしないだろう。
そんな訳で歌を歌っちゃうくらいにご機嫌なのである。
尚、たまたま近くを通りかかった冒険者が、自身の何倍も大きい魔物を次々と魔法でぶちのめすちんまりヒヨコを見て戦慄したのを俺は知らない。
「おや?この反応は……」
フォレストラウルフの群れを風魔法で全滅させ、収納魔法にしまっていると、妙に強い魔力反応が探知魔法に引っ掛かった。
急いでそちらへ向かうと、予想通りの魔物がいた。
「やっぱりワイバーンか!」
思いのほか声が弾む。
なんでこんな辺境にいるんだろ?ワイバーンは王都周辺にしかいないはずなのに……
もしや、はぐれワイバーンか?たまに群れから離れる個体がいるからそれかも。
理由はなんだっていい。素材が自ら来てくれたんだ、有り難く頂戴しよう。
あちらさんが自分の接近に気付いてないうちにさっさと仕留めようとして、ふと思いとどまる。
ちょっと待てよ?これは最近新しく作った罠を試すいい機会なんじゃないか?
ここらに生息する低級の魔物で何度か実験したが、弱すぎて話にならないのだ。
ワイバーンは攻撃にそこそこ耐性があるし、ちょっとやそっとじゃ傷がつかない。罠一発でカタがつく低級の魔物より威力の検証がしやすいだろう。
予定変更。素材から実験台にチェンジ。
さっそく収納魔法から罠を取り出して検証開始。
まずは手始めに痺れ玉。パラライズスネークの麻痺袋を原材料にしたもので、少し衝撃を与えると破裂して麻痺液が飛び出す仕様。
投げた痺れ玉がワイバーンの頭に当たり、飛び出した麻痺液が容赦なく顔全体を覆い隠す。
「グオッッ!?ギャオオォォ!!」
突然頭に衝撃がきたと思ったら次の瞬間には顔面液体まみれ、そして時間を開けずに痺れが回り何がなんだか分からずのたうち回るワイバーン。
「ふむ、即効性はあるな。持続時間はどの程度だろう……」
ワイバーンに見つからないよう死角に隠れる。
麻痺の効果が切れ始めたのはそれから2分ほど経ってからだった。
「持続時間は長くないな。せいぜい足止めに使えるくらいか」
次に投げたのは爆弾。
ファイヤーバードとファイヤーウルフの血を粉末にして特殊加工したものだ。
痺れが収まり、自身を攻撃してきた何者かを鋭い目で探るワイバーンの足元に着弾。
―――――――ドゴォォンッ
「グガァッ!?」
何!?何が起きてるの!?と言いたげな顔で悲痛な声を上げるワイバーン。
直撃した足にはほんのり火傷の跡が。うーん、低級の素材だからかな?威力が思ったより弱い。
「これはもっと威力を上げたいな。要改善だ」
次はポイズンスネークの毒とチャージバードの魔石の粉末とコリカルシの実の粉末を混ぜあわせて作った眠り毒の液体。
これはこのまま使うのではなく、ウルフ系の魔物の牙に塗布して使う。
本当は投げナイフが一番最適なんだが、収納魔法に入ってるウルフ系魔物の牙の数がちょっとヤバいことになってきたので消費しておく。
適当に引っ張り出した牙に塗布して、ぽいっとな。
「ギャオオォンッ!?」
投げた牙は放物線を描き、翼を貫通して背中にグサリ。血が吹き出した。
なんなの!?もうやだよぉ!と言いたげな泣きそうな顔で悲鳴を上げるワイバーン。
「即効性はなし、と。おっ、効いてきたな」
少し間を空けてからワイバーンの動きが鈍くなり、やがてドシンっと倒れた。
苦しげな寝息が聞こえてくるが、段々と呼吸が浅くなっていき、探知に引っ掛かる魔力反応も微弱なものに変わっていく。
「これは使える。課題は即効性だな」
一通り実験を済ませて満足する。
前世では剣と魔法を上手く使い分けていたが、今の俺はご覧のとおりヒヨコ。
剣を握れず、魔法主体の戦い方になった。
未だに手元に残っているオークキングの剣で鍛練しているのだが、結果は芳しくない。
何らかの手段で剣を使えるようになるまで魔法だけで戦わなくてはいけないと悟った。
しかしいくら魔力量が膨大でも、魔道具製作などで日常的に魔力を使っている上で戦闘面でもかなり消費しているとなると少し不安になる。
そこで魔力消費を抑えるために罠を使うことを決断。
多少素材が駄目になってしまうが、万が一魔力が枯渇したらそれこそ命取りだ。最悪の事態になる前に対策は取っておくに限る。
前世だったら魔力が枯渇したら剣で補えばいいと開き直っていたが、ヒヨコな今そんな無謀なことはできないからな。
「……とはいえ、問題点は多いがな」
ため息混じりにぽつりと呟く。
罠なんてほとんど使ったことないし、市場に出回ってるものはほんの足止めにしか使えないような粗悪品ばかり。
だから自力で作ったのだが、まだまだ改善の余地ありだ。
「とりあえず今日はもう帰ろう。……と、その前に」
魔力反応はかなり弱いが、念のため風の刃で首を両断。
探知魔法に引っ掛かっていた微弱な反応がスッと消えた。
「皮はだいぶ傷んでるが、魔石だけでも持っていこう」
魔石を剥ぎ取ってワイバーンを火葬。
ありがとう、ワイバーン。君の犠牲は無駄にはしない。
ふふ、この魔石はどう使おうかな?想像を膨らませるだけでワクワクする。
下位とはいえ竜種の魔石。かなり大きい。これほど大きいと特殊な性能の魔道具も作れそうだが、この辺境では素材を揃えられない。
今は大事に取っておこう。
「いい収穫だったなぁ」
来たときよりも上機嫌で帰っていく俺であった。
尚、ワイバーンの第一発見者は俺であり、しかも速攻倒したので、アネスタ内ではぐれワイバーンの話題が出ることはなかった。
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