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第一部・第一章:神様の命令はゼッタイ!
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人間と神は、本来繋がりを持ってはいけない。それがこの世界の暗黙のルール。
14年前、俺はそれを知っていながら爽を神界に連れて来た。
勿論一部の神達には反対された。だが俺は反対を押しきって爽をここに居させることを選んだ。そのために、高位の神から中位の神に降格しちまった。
……爽には、仕事で人間界に行ったときにたまたま赤ん坊のお前を見つけて気まぐれに拾ったと言ったが、本当は違う。
あのことは、誰にも言っていない。
「爽は白帝学園高等部に入学するんだったな。あそこは2つの学科があると聞く。普通科と、霊能科。爽はどっちの学科なんだ?」
「普通科に決まっているだろう。お前が神界に留まらせたせいで我々神が見えているというだけで、本来なら我々を見ることは叶わない。入学してからしばらくは妖怪の類を見ることがあるだろうが、1週間程でそれもなくなり一般人となるだろう」
一般人になる……か。
そうなってほしいのは山々だが……
「爽の保護者はお前だ。だからこそ、このことを一番に伝えに来た。……お前とて、一時の感情に惑わされただけで、ずっと面倒をみようなんて思ってはいないだろ?」
まあ、間違ってねぇな。
あのときは無我夢中であいつを保護しただけだし、少しの間だけ面倒みてやるかって気持ちでこっちに連れて来ただけだったし。
え?じゃあなんで神達の反対を押しきったんだって?それは、あれだ。その……む、ムキになっちまったんだよ。
決して離れたくなかったとか自分の子供みたいに錯覚しただとかそんな人間みたいな感情で行動した訳じゃないからな。
まあとにかく、執着とかは皆無なはずなんだよ。…本来ならな。
「悪いが、俺と爽の縁はそう簡単に切らせやしねぇよ」
意地の悪い笑みを御叶神に向けて言い放った一言。
その予想だにしない一言にはさすがに驚いた表情を見せる。
神と人は繋がりを持ってはいけない。
なのに………
「……爽と繋がりを持つ前のお前とは、随分変わったな。まさかお前が人間に入れ込むとは思わなんだ」
「親心ってやつじゃねぇか?多分」
ため息をつきながらも、ホッとした様子の御叶神。俺がそう言うのを期待していたんだろうか?
いや。そうでなくともさっきの縁をすっぱり切ろう発言をぶっぱなしたときは嫌そうな顔をしていたし、爽を人間界に還す大事な機会だと踏んで言ったんだろうことは容易に想像がつくが。
「ではどうする?爽は人間だ。本来なら我々とは無関係の存在だ。人間は人間界で暮らすのが一番ではないのか?」
「馬鹿言え。それを決めるのは爽自信であって、俺達がつべこべ言うもんじゃねぇだろうが」
しばしの沈黙。
後に御叶神がぽつりと呟いたのを俺は聞き逃がさなかった。
「……そうだな。爽の気持ちを無視しちゃあ駄目だよな」
ふっと笑い、溢した言葉。
まるで爽の親みたいな表情浮かべやがって。
あいつの親は俺だぞ。
おっと、話が逸れた。
「爽が自ら人間界に留まりたいと願わない限り、繋がりを絶ち切ることはない。安心しろ」
「人間界に留まりたいだあ?んなこと願う訳あるか!ずっと神界にいたんだ、そう簡単に人間界に馴染むか!」
「わからんぞ?大事な友人や恋人なんかができたら神界より人間界を選ぶと思うが?人間は、そういう生き物だからな」
そう言われてしまったら何も言えない。
人間は、ほんの些細な出来事の積み重ねで大事だと思える、単純な奴らだ。
この先の人間にとっては長い、神にとっては瞬きするだけの短い時間を生きる爽が大事な人をつくらないとは限らない。
いや、あいつの性格を考慮したら間違いなくつくるだろう。
そうなったら親の俺の立場は……どうなるんだ?
「うわぁぁっ!!考えたくない考えたくない!!」
「うおっ!?いきなりどうした?」
何で俺が人間ごときに頭を抱えなきゃならんのだ!!
なんだ、この気持ちは!?
爽が大事な人をつくったら俺がぼっちになるもんだから寂しいってか?
んな訳あるか!全然寂しくなんか……寂しく……なんか………
そこで思考を無理矢理止めた。
ああ……親になると本当変わったって思うよ。
まさか自分が親バカという未知なるものになるとは思わなかった。
そうか、これが親バカの心境か。
「嵐武神、さっきから何をそんなあわただしくしているんだ?見てて飽きないから一向に続けてくれて構わんが」
しまった、目の前に御叶神がいるということをすっかり忘れていた。
当の本人は俺に異常なものでも見るかのような目を向けたと思ったら笑いを堪える態勢だ。右手で口を押さえ、必死に笑いを堪えている。笑うな。殴るぞ。
「お、おい!話ってのはそれだけなんだろ?ならさっさと仕事に戻れ!お前は仮にも最上の神なんだ、こんなとこでのんびりしてる暇なんかねぇだろ!」
言いながら、部屋から追い出す形で出ていってもらった。
実際に最上の神は一番忙しい。
のんびりできる時間なんて5分とないはずなのに、このアホはちょくちょく抜け出して俺の屋敷、つまりここに頻繁に来ては酒飲もうだの面白い話しようだの人間達の間で今流行ってる遊びをしようだの爽と遊びたいだの口実を作って逃げているがために通常ならあり得ない量の書類の山が堆く積み上げられていることが多い。
こいつがここに出入りしてると他の神から羨望の眼差しを向けられたり「お前が最上の神をたぶらかすから……」とかお叱りを受けたりするから嫌なんだよ。
だが唯一の飲み友なので許す。こいつがいなきゃ、ぼっちで酒飲むことになるからな。
爽はまだ未成年だから飲酒は駄目だし。
御叶神を追い出したあと、俺は俺で仕事に戻った。
何故かって?
ふっ、愚問だな。
御叶神が帰ったあとすぐに白狐が睨みを効かせて仕事を再開しろと言わんばかりのただならぬ威圧の籠ったオーラが放たれていたからだ。
白狐は怒ると怖いからな。
大人しく言うことを聞くに限るぜ。
「嵐武様」
言われた通りに仕事に手をつけようとしたとき、白狐が珍しく話しかけてきた。
本当に珍しいな。
いつもなら黙々と書類整理してる筈なのに。一言も話さないのに。
書類を手に持ったままそちらを振り向く。
「なんだ?」
「爽の所に行きますが、決してサボらないで下さいね。では」
一瞬目が合ったかと思えばすすすっと音もなく部屋から出ていく白狐。
ていうかなんだよ皆して爽爽爽爽って!!!!
爽に執着しすぎだろ!!俺もだけど!!
白狐に至っては隙あらば爽のもとに行って世話をやくしよぉ……
ついさっきも御叶神と話しこんでるときはいなかったし。
本当どうしちまったんだよ……昔はあんなにツンケンしてたのに。可愛げなかったのに。誰かの世話をやくなんて絶対なかったのに。
高位妖怪の威厳はどうした。
今じゃもう只の世話好きの狐じゃねぇかよ。(爽限定で)
「てか、この仕事の山を1人で片付けろと…?」
最上の神の部屋にある書類の山と比べりゃ屁でもないくらいの書類の山。だがそれでも多いか少ないかで言えば断然多い量の書類が積み上げられている。
サボりたい。開始15分しか経ってないけど早くもサボりたい。
でもサボれない。
サボったあとが怖い。
神が神使に怯えるってあり得ねぇ。
だがその後も黙々と書類を片付けていく俺は偉いと思う。
ひたっすらカリカリカリカリペンを走らせて書類に目を通す。
当然ながら1人なため黙ってる。
カリカリ…
カリカリ……
「だぁぁぁぁぁっっ!!!耐えらんねぇぇ!!」
片付けた書類の山をバサッと撒き散らして、とうとう限界突破して叫んだ。
もう嫌だ!サボる!サボってやるぅ!!
撒き散らした書類をそのままに、俺は逃げるように駆けていった。
……ようにってか、ガチで逃げた。
14年前、俺はそれを知っていながら爽を神界に連れて来た。
勿論一部の神達には反対された。だが俺は反対を押しきって爽をここに居させることを選んだ。そのために、高位の神から中位の神に降格しちまった。
……爽には、仕事で人間界に行ったときにたまたま赤ん坊のお前を見つけて気まぐれに拾ったと言ったが、本当は違う。
あのことは、誰にも言っていない。
「爽は白帝学園高等部に入学するんだったな。あそこは2つの学科があると聞く。普通科と、霊能科。爽はどっちの学科なんだ?」
「普通科に決まっているだろう。お前が神界に留まらせたせいで我々神が見えているというだけで、本来なら我々を見ることは叶わない。入学してからしばらくは妖怪の類を見ることがあるだろうが、1週間程でそれもなくなり一般人となるだろう」
一般人になる……か。
そうなってほしいのは山々だが……
「爽の保護者はお前だ。だからこそ、このことを一番に伝えに来た。……お前とて、一時の感情に惑わされただけで、ずっと面倒をみようなんて思ってはいないだろ?」
まあ、間違ってねぇな。
あのときは無我夢中であいつを保護しただけだし、少しの間だけ面倒みてやるかって気持ちでこっちに連れて来ただけだったし。
え?じゃあなんで神達の反対を押しきったんだって?それは、あれだ。その……む、ムキになっちまったんだよ。
決して離れたくなかったとか自分の子供みたいに錯覚しただとかそんな人間みたいな感情で行動した訳じゃないからな。
まあとにかく、執着とかは皆無なはずなんだよ。…本来ならな。
「悪いが、俺と爽の縁はそう簡単に切らせやしねぇよ」
意地の悪い笑みを御叶神に向けて言い放った一言。
その予想だにしない一言にはさすがに驚いた表情を見せる。
神と人は繋がりを持ってはいけない。
なのに………
「……爽と繋がりを持つ前のお前とは、随分変わったな。まさかお前が人間に入れ込むとは思わなんだ」
「親心ってやつじゃねぇか?多分」
ため息をつきながらも、ホッとした様子の御叶神。俺がそう言うのを期待していたんだろうか?
いや。そうでなくともさっきの縁をすっぱり切ろう発言をぶっぱなしたときは嫌そうな顔をしていたし、爽を人間界に還す大事な機会だと踏んで言ったんだろうことは容易に想像がつくが。
「ではどうする?爽は人間だ。本来なら我々とは無関係の存在だ。人間は人間界で暮らすのが一番ではないのか?」
「馬鹿言え。それを決めるのは爽自信であって、俺達がつべこべ言うもんじゃねぇだろうが」
しばしの沈黙。
後に御叶神がぽつりと呟いたのを俺は聞き逃がさなかった。
「……そうだな。爽の気持ちを無視しちゃあ駄目だよな」
ふっと笑い、溢した言葉。
まるで爽の親みたいな表情浮かべやがって。
あいつの親は俺だぞ。
おっと、話が逸れた。
「爽が自ら人間界に留まりたいと願わない限り、繋がりを絶ち切ることはない。安心しろ」
「人間界に留まりたいだあ?んなこと願う訳あるか!ずっと神界にいたんだ、そう簡単に人間界に馴染むか!」
「わからんぞ?大事な友人や恋人なんかができたら神界より人間界を選ぶと思うが?人間は、そういう生き物だからな」
そう言われてしまったら何も言えない。
人間は、ほんの些細な出来事の積み重ねで大事だと思える、単純な奴らだ。
この先の人間にとっては長い、神にとっては瞬きするだけの短い時間を生きる爽が大事な人をつくらないとは限らない。
いや、あいつの性格を考慮したら間違いなくつくるだろう。
そうなったら親の俺の立場は……どうなるんだ?
「うわぁぁっ!!考えたくない考えたくない!!」
「うおっ!?いきなりどうした?」
何で俺が人間ごときに頭を抱えなきゃならんのだ!!
なんだ、この気持ちは!?
爽が大事な人をつくったら俺がぼっちになるもんだから寂しいってか?
んな訳あるか!全然寂しくなんか……寂しく……なんか………
そこで思考を無理矢理止めた。
ああ……親になると本当変わったって思うよ。
まさか自分が親バカという未知なるものになるとは思わなかった。
そうか、これが親バカの心境か。
「嵐武神、さっきから何をそんなあわただしくしているんだ?見てて飽きないから一向に続けてくれて構わんが」
しまった、目の前に御叶神がいるということをすっかり忘れていた。
当の本人は俺に異常なものでも見るかのような目を向けたと思ったら笑いを堪える態勢だ。右手で口を押さえ、必死に笑いを堪えている。笑うな。殴るぞ。
「お、おい!話ってのはそれだけなんだろ?ならさっさと仕事に戻れ!お前は仮にも最上の神なんだ、こんなとこでのんびりしてる暇なんかねぇだろ!」
言いながら、部屋から追い出す形で出ていってもらった。
実際に最上の神は一番忙しい。
のんびりできる時間なんて5分とないはずなのに、このアホはちょくちょく抜け出して俺の屋敷、つまりここに頻繁に来ては酒飲もうだの面白い話しようだの人間達の間で今流行ってる遊びをしようだの爽と遊びたいだの口実を作って逃げているがために通常ならあり得ない量の書類の山が堆く積み上げられていることが多い。
こいつがここに出入りしてると他の神から羨望の眼差しを向けられたり「お前が最上の神をたぶらかすから……」とかお叱りを受けたりするから嫌なんだよ。
だが唯一の飲み友なので許す。こいつがいなきゃ、ぼっちで酒飲むことになるからな。
爽はまだ未成年だから飲酒は駄目だし。
御叶神を追い出したあと、俺は俺で仕事に戻った。
何故かって?
ふっ、愚問だな。
御叶神が帰ったあとすぐに白狐が睨みを効かせて仕事を再開しろと言わんばかりのただならぬ威圧の籠ったオーラが放たれていたからだ。
白狐は怒ると怖いからな。
大人しく言うことを聞くに限るぜ。
「嵐武様」
言われた通りに仕事に手をつけようとしたとき、白狐が珍しく話しかけてきた。
本当に珍しいな。
いつもなら黙々と書類整理してる筈なのに。一言も話さないのに。
書類を手に持ったままそちらを振り向く。
「なんだ?」
「爽の所に行きますが、決してサボらないで下さいね。では」
一瞬目が合ったかと思えばすすすっと音もなく部屋から出ていく白狐。
ていうかなんだよ皆して爽爽爽爽って!!!!
爽に執着しすぎだろ!!俺もだけど!!
白狐に至っては隙あらば爽のもとに行って世話をやくしよぉ……
ついさっきも御叶神と話しこんでるときはいなかったし。
本当どうしちまったんだよ……昔はあんなにツンケンしてたのに。可愛げなかったのに。誰かの世話をやくなんて絶対なかったのに。
高位妖怪の威厳はどうした。
今じゃもう只の世話好きの狐じゃねぇかよ。(爽限定で)
「てか、この仕事の山を1人で片付けろと…?」
最上の神の部屋にある書類の山と比べりゃ屁でもないくらいの書類の山。だがそれでも多いか少ないかで言えば断然多い量の書類が積み上げられている。
サボりたい。開始15分しか経ってないけど早くもサボりたい。
でもサボれない。
サボったあとが怖い。
神が神使に怯えるってあり得ねぇ。
だがその後も黙々と書類を片付けていく俺は偉いと思う。
ひたっすらカリカリカリカリペンを走らせて書類に目を通す。
当然ながら1人なため黙ってる。
カリカリ…
カリカリ……
「だぁぁぁぁぁっっ!!!耐えらんねぇぇ!!」
片付けた書類の山をバサッと撒き散らして、とうとう限界突破して叫んだ。
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