神様と友達な彼と最強くん

深園 彩月

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第一部・第二章:出会いと再会は突然に

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「立ち入り禁止区域に侵入するのは校則違反で、侵入した生徒は罰則がある、とイオリは言ってる」

 通訳ありがとう金髪くん。

「今うちの霊能科1年は授業で妖怪を祓うために立ち入り禁止区域に入る許可がおりてるが、お前は編入してきたばかりなんだろう?」

「おう。普通科の1年に編入してきた柳 爽だ」

「普通科か……罰則はあるな」

 あれ?今のは流れ的に男の方も自己紹介してよろしくする場面じゃない?おかしいな、学園が舞台のマンガではそんな感じだったのに。

 え?神界にマンガなんかあったのかよって?

 うん、沢山あるよ。

 なんか白狐と嵐武様が人間界のことはこれを見ればだいたい分かるとか抜かしやがってもうほんっと沢山のマンガをずらりと並べてくれちゃってた。

 白狐が時間をかけて月に何回かに分けて人間界の書店に買いに行ってたらしいよ。そこまでしなくても良かったのにね。おかげで毎日読書三昧だったわ……目ぇ疲れて涙ボロボロでるまで。

「とにかく、ここもギリギリ立ち入り禁止区域だから学園まで行くぞ。こんなとこじゃあ迷うだろ」

 救いの手が!迷子の子羊に救いの手が差し伸べられたっ!

 金髪くんの右手をかたく握りしめて「ありがとう!助かった!」と言ったら頬が若干赤くなった。熱でもあるんかな。

「雪、照れてる……可愛い」

「……照れてない。ほら行くぞ柳」

「お、おぃっす!」

 そうか、照れてる顔だったのか。表情コロコロ変わるなぁ。パッと見は恐くて厳ついヤ◯ザのくせに……確かに可愛くないこともない。

 俺が進む道は学園への道のりで合ってたらしく、また前に歩き出した。

 でもゆっくり歩いてってお願いした。まだ足が痺れてるからそんなにはやく歩けない。ビキィンってな感じに痛みあるもん。

「……ん?どしたの?」

 ゆっくり歩いてる俺の隣にはいつの間にかイオリちゃんが同じ速度で歩いていて、制服の裾を小さな力で引っ張っていた。常に空気になってるから急に隣に居られるとびっくりするわぁ。

 イオリちゃんは暫しの沈黙のあと、金髪くんに指先を向けて

「奥ヶ咲……雪」

 次に自分に指先を向けて

「……イオリ。よろしく……」

 自己紹介してない金髪……いや、奥ヶ咲の代わりに紹介した……のかな?

 辿々しい話し方だけどいい子だな。

 二人と一緒に向かってると学園までの道はそう長くなく、ゆっくり歩いていたはずなのに数分でついた。

 神界に置いてきた数あるマンガに描かれているような馬鹿デカい鉄格子の門。その門の向こうには両端に花壇があり、少し先には噴水がある。

 ここからでも分かるくらいキレイに手入れされている。

 そしてその学園の物全てを覆い隠すようによじ登っても簡単に落ちてしまうだろう高い塀がセキュリティ万全だということを物語る。

 だって目ぇ凝らして見たら監視カメラとか異常な数あるもん。霊能科とかあるくらいだし、ここらは妖怪が出やすいんだろうな。

 さっきまでいた立ち入り禁止区域に霊能科の人が授業の一環で妖怪討伐してたぐらいだしなぁ……

「じゃあ俺達は戻るからな。あとは自分でどうにかしろよ」

 しれっと言ってくれちゃったよ。

 まあ、学園にはついたしあとはどうとでもなるか。ここまで案内してくれたことは感謝しないとな。

「ありがとー二人共!もう大丈夫だよ!んじゃ俺早く学園長室に行かなきゃだからもう行くね!」

 門をくぐって颯爽と駆け抜ける俺に後の二人の会話が耳に届くことはなかった。

「は!?理事長室!?おい、大丈夫かあいつ……理事長っつったらアレだよな?俺らも一緒に行ったほうが……」

「今、授業。編入生、絶対」

「ああ、編入生は絶対最初に挨拶しなきゃいけないんだっけ。……可哀想に、理事長に振り回される可能性大だなあいつ」

「…………」

「何ぼーっとしてるんだイオリ?ほら行くぞ。まだ授業中なんだから」

 言いながら学園前から遠ざかる雪。慌てて雪の背中を追いかけようとしたイオリだが、立ち止まって爽の去っていった方を振り返った。

「……確かに………人、匂いだった。けど、それと……違う、匂い、混ざってた。……あの匂い、何?」

 イオリは爽の匂いに違和感を感じてた。確かに人の匂いをしていたが、妖怪の匂いに近い、でもそれとも微妙に違う匂いを敏感に察知していた。

「……妖怪、人とも、言えない、微かな匂い………何者?」

 去っていった爽を疑いの眼差しで見つめるイオリ。

 その小さな呟きは、強く吹いた風に掻き消された。

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