神様と友達な彼と最強くん

深園 彩月

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第一部・第三章:これが日常とか拷問だろ!

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 南雲は俺に近付き胸ぐらを掴み、吐き出すように言う。

「この学園に入学したということは数多の可能性を秘めた将来有望な陰陽師ということだ。今はただ妖怪が視えるだけでも、そう遠くない未来で霊能力を扱えるかもしれない。そんな生徒が通うのが普通科だ。そしてもちろん入学したからには霊能力の開花のための鍛練をする真面目な生徒もいる」

 淡々と述べられる事実に少しばかり驚愕の色を見せる。

「努力に努力を重ねてようやく霊能科に異動できた者が沢山いる。それだけの努力をしてきた者が今の一連の会話を聞いたらどう思う?」

『俺と違って妖怪を制圧できる力があるんだろ!?』

『俺なんか連れてくなよ!!』

「………あ……」

 南雲の言葉の意味は割りとすぐ理解できた。
 霊能力開花のためにどんな鍛練をしてるのかは分からないけど、それでも、自分の中の可能性を信じてここに来たことは分かる。
 皆そうなんだ。自分の可能性を信じて、最初から諦めるなんて卑怯なことはせず前向きに努力して。
 そうだよな。さっき言った言葉は、自分の可能性を全否定する発言だもんな。これ聞いた普通科のやつは絶対怒るよな。

「………ごめん」

 俺は努力するどころか、自分には力がないって思いこんで投げ出して。情けないよなぁ。
 力があるかどうかは、努力すれば分かる。逆に言えば何もせずただじっとしていたら開花するものも開花しない。

 南雲は胸ぐらを掴んでいた手をおろした。

「僕は矛盾してる人間が一番嫌いだ。特に、力を欲するくせになんの努力もしないやつは学園を辞めれば良いとすら思う」

 南雲の言葉がツキンと胸に刺さる。

「うん……だから、ちょっとだけ……努力してみようかなぁって思っ……たり」

 あ。やべぇ。これじゃあ言い訳みたいに聞こえる。そんでもって南雲の目がまだ鋭い。コワイ。

「ちょっとだけ……?」

 目がスッと細められ……っきゃあ!!怒気が殺気に変わったあ!!おお落ち着け俺!平常心だ平常心。ほら深呼吸してー、さあ言え!!ありったけの想いをぶちまけろ!!
 ………これだけ聞くと愛の告白みたいだな。キモッ。

 意を決して今思うことを、俺の本心を、すべて口にした。

「その……俺、実は半ば無理矢理この学園に入学させられたんだよね。だから、普通科の人達が霊能力を開花させるために努力してるなんて知らなかったんだ」

「無理矢理入学させられた?自分の意思ではなく?」

「うん。それで、その……これを言ったら多分また南雲怒るかもだけど、大事な人達を守りたくて今まで色んなこと必死に覚えたんだけど、その人達は俺より遥かに強くて、その強さを間近で見たときに俺がどんなに強くなってもこの人達には敵わない。守られるほど弱くないって分かったとたんに全部やめちゃったんだ。自分には才能ないって思って……」

 思ったとおり、南雲の瞳には苛立ちが籠っていた。
 でも最後まで聞く体制を崩さない。

「多分、無意識に甘えてたんだと思う。自分の限界を自分で決めて、ここまでって一線引いて。自分に可能性があるなんて思えなくて投げ出して。本当、びっくりするくらい臆病だよなー」

 カラカラと乾いた笑い声をあげる。
 ずっとそらしていた瞳に南雲が映る。まっすぐ見据え、真剣に言葉をつむぐ。

「でも、もうそれはお終い」

 すぐには無理だと思うけど、俺だけ置いてきぼりは嫌だ。皆が努力しているのに俺だけ何もしないのも嫌だ。
 だから、迷いながらでも進まなきゃ。
 投げ出すんじゃなくて、可能性を信じて手を伸ばそう。皆がそうしてるように。

「まだ迷いはあるけど、力なんてないって思ってても、やれるとこまでやりたい」

 俺の覚悟が伝わったのか、南雲の纏う空気が柔らかいものになった。そしてふっと笑みをこぼし、肩の力を抜いた。

「僕は矛盾してる人間は嫌いだ。だが、矛盾してるなりに努力しようとする馬鹿は嫌いじゃないぞ」

「なっ!?馬鹿ってなんだよ!今日クラスの女の子に頭良いねって褒められたんだぞ!」

「そこじゃないんだが」

 良かった。ケンカには発展しなかった。南雲もすっかり怒りを修めていつもの調子に戻ってるし、とりあえずは一件落着ってとこかな。

「ところで柳」

 ホッとして窓の外のいまだ降り止まぬ豪雨を見る。遠く離れた場所に小さめの雷が落ちたみたいだ。
 雷の感じを見て、雷神様の何かしらの強い感情が鎮まったんだと悟る。
 そんなこと思ってたら南雲が呼び掛けてきた。

「ん?南雲、何?」

 ちょっと真剣な面持ちで俺の顔を見つめる南雲。え、何ナニ!?今度は何!?俺なんもしてないじゃん!とか思ってると南雲の瞳が輝きを帯びた。

「霊能力開花のためならどんなこともするんだよな?」

「え?ま、まあ、努力するとは言ったな」

「なら早速妖怪討伐しよう!」

 結局そこに戻るんかい!!

「いやいや駄目だから!校則違反駄目だしそれにこの豪雨の中妖怪討伐とか無理あるでしょ!!」

「気合いで乗り切る。当たって砕けろって言うだろう?」

「当たったらマズイ壁に当たるって!最悪砕けたらポックリ逝っちゃうってぇぇ!!」

 何言い出すのこの人。気合いだー!!とか言って頑張っちゃう熱血タイプ?それとも単に単細胞の馬鹿?いやまあそれは別に良いとして。

「口車には乗せられないからなあぁ!!」

 両手で耳を塞いで扉の閉まった自室にこもる。

「校則違反は駄目校則違反は駄目……」

 しつこく自分に言い聞かせる。
 だが南雲の発言により少しながらも妖怪に対抗できる力を有していると分かった瞬間、高揚した気持ちを抑えられなくなった。

 可能性がある。
 そう思うだけで自信が溢れてくる。

 共同スペースから聞こえてくる南雲のどこかキラキラした声。危うく応えそうになったが校則違反の言葉が頭の隅でちらつき、鍵をかける。
 そんな中も空気を読まずに鳴り響く雷鳴。

 一際大きな雷の一撃が地上に落ちたとき、雷神様と焔神様の戦が終局を迎えたことは知る由もなかった。

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