ガール・ミーツ・エイリアン

佐熊カズサ

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ガール・ミーツ・エイリアン

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「ねえ、地球人。僕にこの惑星を案内してくれないかな?」

 すでに一番星すら目立たなくなっている10月下旬の午後6時。1日で全教科を強行突破する模試を終え、干からびた脳みそをゆらゆら揺らしながら駅へと向かう途中、人気のない公園を通り過ぎたとき、見知らぬ少女に背後から呼び止められた。ついでに妙なお願いも。

 言葉の内容とは不釣り合いに、軽く涼やかな声色。立ち止まって振り返れば面倒で厄介なことに巻き込まれてしまう。わずかに残ったまともな判断をする領域が「関わるな」と警告している。それでも振り返らずにはいられなかった。

 見えない力に操られるようにふらりと振り返る。そこには、そのフルートのような声にふさわしく、なぜか電波な発言とも調和する、どこか人間離れした雰囲気の美少女が立っていた。

 同い年か少し年下だろうか。どこか遠くを見ているような目はアンタレスのように赤く、肩までまっすぐに伸びた黒髪に、ランダムに混じる銀髪が公園を照らす青白い光を受けて輝いていた。

「ええと……」私は余計に混乱した頭の中から比較的まともな言葉を選んで、並べる努力をした。「この惑星というか、この辺りでええなら……」

「ああ、それで問題ないよ。ただ――」少女は形のいい眉をわずかにひそめた。「それで君たち地球人の望む結果が得られるかは、わからないけれどね」

 瞬間、ヒヤリとした風が彼女と私の間を通り抜けた。それほど寒くはないはずなのに、心臓がぞくりと震えた。

「それってどういう……」

 よくぞ聞いてくれた、とでも言いたげに少女は柔らかく不敵にニヤリと笑った。

「僕は君たちが言うところのいわゆる宇宙人だ。宇宙情報部のエージェントとして、この惑星が太陽系銀河に居座り続けるにふさわしいかを調査しにきた」

 * * *

 厄介な話は座ってするに限る。

 自称宇宙人と私は公園に入り、ひとつしかないベンチに並んで座った。腰を下ろした途端に脱力して、思わずため息をついた。常識を超えた情報量に頭がくらくらしてきた。模試を終えたばかりだし、明らかに情報過多だ。

「どこから知りたい、地球人?」少女は言った。

「そうやね……まずは名前が知りたいな。私もいつまでも地球人なんて呼ばれとったら落ち着かんよ」私は言った。「島村ホノやよ」

「僕の名前は地球にはない音を含んでいる。だからコードネームを教えておく。ピートだ」

「そんで、ピート。君が地球を調査してその結果が良くなかったって場合、地球はどうなるん?」

「当然、抹消することになる」ピートは冗談からは程遠いトーンで言った。「惑星の運営には高額な費用がかかるんだ。無駄があれば削らなければならない」

「なるほど……?」私は無理やり理解しようと努力した。「ところで、なんでそんなことを私に教えてくれるん?」

「僕のクォーターマスターからの指示でね。君は私の地球でのパートナーに選ばれたんだ」

「そうなんや……」

 私は背もたれに背中を預けてまばらに瞬く星を見上げた。ため息。宇宙人……地球抹消……宇宙情報部のエージェント。ハリウッド映画のような単語が頭をうろつく。私は彼女の話を本気にすることができなかった。

「他に質問は?」

「いいや、もう大丈夫やよ、ありがとう」

 もう恐らく脳みそは頭蓋骨の中で、縮んで使い物にならなくなっているのだろう。なにしろ干からびているのを自覚してからずいぶん経つのだ。疑問に思うべきことはたくさんあるだろうに、今は何も思いつかない。

「そうか、ならまずは手始めに君の部屋に案内してもらおう」とピートは言った。

「なんで?」

「なんでって……これから君の部屋に住むことになっている。そこで詳しく説明させて欲しい」
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