46 / 55
帝国海軍の猫大佐 裏話
一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 9
しおりを挟む
帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです
+++++
艦長室に招待されたご家族の皆さんは、それぞれの場所に座った。
「本日はお忙しい中。お越しいただきありがとうございます。初めてのかたもいらっしゃいますので、あらためて御挨拶させていただきます。現在、当艦の艦長をつとめる大友と申します。こちらは副長の藤原です。そしてこちらが、副長の奥様の藤原さん、それから当艦の先任伍長の奥様の清原さんです」
艦長の紹介が終わると、それぞれのご家族の自己紹介が始まった。全員が、みむろで訓練をしている海士長君達の親御さんだ。そしてその自己紹介が終わるタイミングで、艦長のお世話係の当番をしている隊員さんが、お茶とお菓子を運んできた。
―― あれ? 全員がコーヒーじゃない? ――
いつものように、部屋に漂うはずのコーヒーの匂いがしない。心の中で首をかしげていると、艦長さんが口を開いた。
「いつもですと、コーヒーか紅茶か、どちらかを選んでいただくのですが、実はコーヒー豆をきらしておりまして。今日は紅茶をお出ししています。紅茶が苦手な方がいらっしゃいましたら、別の飲み物をご用意しますので、遠慮なくおっしゃってください」
―― あれ? 伊勢さん、艦長が気合をいれてゴリゴリしてるって、言ってなかったっけ? ――
それとなく修ちゃんに目を向ける。あの顔つきからして、修ちゃんも事情を知らないみたいだ。
―― 私は紅茶が好きだからありがたいけど ――
お菓子は有名どころの焼き菓子だし、ちょっと幸せ♪
それから一時間半ほど、艦長さんを含め皆さんと歓談をしていると、ドアがノックされる音がした。顔を出したのは、ここにいるご家族の息子さん達だ。
「さて。ではそろそろ、お茶会をおひらきにしたいと思います。残りの時間は、久し振りの水入らずの時間をおすごしください。艦内の案内は彼らがします。一般の見学者の皆さんが入れない場所も案内するように言ってありますので、楽しみながら回ってください」
その言葉に、家族の皆さんがお茶のお礼を言いながら出ていった。その場に残ったのは、艦長さんと修ちゃん。そして清原さんの奥さんと私の四人だ。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ごちそうさまでした。清原さんにおんぶにだっこで申し訳ないぐらい」
「良いんですよ、そんなこと気にしなくても。艦長も副長も単身赴任組なんです。先任伍長の妻として、こういう時に役立たなくてどうするんですかって話なので」
清原さんはニコニコしながら言った。
「あと藤原さん、紅茶のアドバイスをありがとうございます。あれがなかったら、今日は皆さん、ティーバッグの紅茶でしたよ」
「コーヒーはどうされたんですか? いつも艦長さんがひいていらっしゃるんですよね?」
コーヒーミルを回すしぐさをしてみせた。
「いやあ、とても美味しいコーヒー豆でね。うっかり総監に話したらここに押しかけてきましてね。あっという間になくなっていまいました。いやあ、おはずかしい」
アハハハハと豪快に笑う。その場にいた三人は思わず「マジか」とつぶやいた。
「ところで藤原さん、息子さんは? 一緒に来たって聞いてましたが」
「トレーニングルームで伊勢さん達と遊んでもらってます」
「ああ、なるほどね。彼らに任せておけば問題ないでしょう。さて、お二人とも今日はご苦労様でした。あとは時間までゆっくりすごしてください。清原さん、旦那さんは単装砲近くにいるはずです。そろそろ……」
腕時計を見る。
「交代の時間かな。藤原もご苦労。時間までは自由にやってくれ」
そんなわけで艦長さんは自分の仕事に、清原さんは甲板のご主人のところに、そして私達はトレーニングルームへと向かった。廊下を歩いていると、おちびさんのはしゃぐ声が聞こえてくる。伊勢さんのガンバレコールも聞こえてくるってことは、やっていることは絶対にトレーニングだ。
「ねえ、あれ以上、かず君が元気になっちゃったら、私とてもついていけないんだけど」
「まこっちゃん、ちょっと体力なさすぎじゃね?」
「そんなことないよ。普通だよ普通。修ちゃんやかず君が元気ありすぎなんだって」
男の子って本当におかしい。私には理解できない。
「最近の海自隊員は体力が下降気味らしくてさ。伊勢はそれを危惧してる。だからみむろにも、本格的なトレーニングルームの導入を求めたんだ」
かなり科学的なデータも添付してのレポート提出だったとか。そのお陰で予算が認められ、立派なトレーニングルームができあがったらしい。
「それもあって、伊勢は率先してトレーニングしてるんだ。今の伊勢はちょっとした体力オタクだよ」
「伊勢さんが体力オタクになるのは良いけど、うちの息子までオタクになったら困るー」
廊下を歩いていき、トレーニングルームをのぞいた。するとそこでは、若い隊員さんがおちびさんを背中に乗せて、ものすごい早さで腕立て伏せをしているところだった。かず君は上下に揺れながら、超ご機嫌だ。
「かず君、重石にされてる……」
めちゃくちゃ楽しそうで、ちょっと呆れてしまった。
+++++
艦長室に招待されたご家族の皆さんは、それぞれの場所に座った。
「本日はお忙しい中。お越しいただきありがとうございます。初めてのかたもいらっしゃいますので、あらためて御挨拶させていただきます。現在、当艦の艦長をつとめる大友と申します。こちらは副長の藤原です。そしてこちらが、副長の奥様の藤原さん、それから当艦の先任伍長の奥様の清原さんです」
艦長の紹介が終わると、それぞれのご家族の自己紹介が始まった。全員が、みむろで訓練をしている海士長君達の親御さんだ。そしてその自己紹介が終わるタイミングで、艦長のお世話係の当番をしている隊員さんが、お茶とお菓子を運んできた。
―― あれ? 全員がコーヒーじゃない? ――
いつものように、部屋に漂うはずのコーヒーの匂いがしない。心の中で首をかしげていると、艦長さんが口を開いた。
「いつもですと、コーヒーか紅茶か、どちらかを選んでいただくのですが、実はコーヒー豆をきらしておりまして。今日は紅茶をお出ししています。紅茶が苦手な方がいらっしゃいましたら、別の飲み物をご用意しますので、遠慮なくおっしゃってください」
―― あれ? 伊勢さん、艦長が気合をいれてゴリゴリしてるって、言ってなかったっけ? ――
それとなく修ちゃんに目を向ける。あの顔つきからして、修ちゃんも事情を知らないみたいだ。
―― 私は紅茶が好きだからありがたいけど ――
お菓子は有名どころの焼き菓子だし、ちょっと幸せ♪
それから一時間半ほど、艦長さんを含め皆さんと歓談をしていると、ドアがノックされる音がした。顔を出したのは、ここにいるご家族の息子さん達だ。
「さて。ではそろそろ、お茶会をおひらきにしたいと思います。残りの時間は、久し振りの水入らずの時間をおすごしください。艦内の案内は彼らがします。一般の見学者の皆さんが入れない場所も案内するように言ってありますので、楽しみながら回ってください」
その言葉に、家族の皆さんがお茶のお礼を言いながら出ていった。その場に残ったのは、艦長さんと修ちゃん。そして清原さんの奥さんと私の四人だ。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ごちそうさまでした。清原さんにおんぶにだっこで申し訳ないぐらい」
「良いんですよ、そんなこと気にしなくても。艦長も副長も単身赴任組なんです。先任伍長の妻として、こういう時に役立たなくてどうするんですかって話なので」
清原さんはニコニコしながら言った。
「あと藤原さん、紅茶のアドバイスをありがとうございます。あれがなかったら、今日は皆さん、ティーバッグの紅茶でしたよ」
「コーヒーはどうされたんですか? いつも艦長さんがひいていらっしゃるんですよね?」
コーヒーミルを回すしぐさをしてみせた。
「いやあ、とても美味しいコーヒー豆でね。うっかり総監に話したらここに押しかけてきましてね。あっという間になくなっていまいました。いやあ、おはずかしい」
アハハハハと豪快に笑う。その場にいた三人は思わず「マジか」とつぶやいた。
「ところで藤原さん、息子さんは? 一緒に来たって聞いてましたが」
「トレーニングルームで伊勢さん達と遊んでもらってます」
「ああ、なるほどね。彼らに任せておけば問題ないでしょう。さて、お二人とも今日はご苦労様でした。あとは時間までゆっくりすごしてください。清原さん、旦那さんは単装砲近くにいるはずです。そろそろ……」
腕時計を見る。
「交代の時間かな。藤原もご苦労。時間までは自由にやってくれ」
そんなわけで艦長さんは自分の仕事に、清原さんは甲板のご主人のところに、そして私達はトレーニングルームへと向かった。廊下を歩いていると、おちびさんのはしゃぐ声が聞こえてくる。伊勢さんのガンバレコールも聞こえてくるってことは、やっていることは絶対にトレーニングだ。
「ねえ、あれ以上、かず君が元気になっちゃったら、私とてもついていけないんだけど」
「まこっちゃん、ちょっと体力なさすぎじゃね?」
「そんなことないよ。普通だよ普通。修ちゃんやかず君が元気ありすぎなんだって」
男の子って本当におかしい。私には理解できない。
「最近の海自隊員は体力が下降気味らしくてさ。伊勢はそれを危惧してる。だからみむろにも、本格的なトレーニングルームの導入を求めたんだ」
かなり科学的なデータも添付してのレポート提出だったとか。そのお陰で予算が認められ、立派なトレーニングルームができあがったらしい。
「それもあって、伊勢は率先してトレーニングしてるんだ。今の伊勢はちょっとした体力オタクだよ」
「伊勢さんが体力オタクになるのは良いけど、うちの息子までオタクになったら困るー」
廊下を歩いていき、トレーニングルームをのぞいた。するとそこでは、若い隊員さんがおちびさんを背中に乗せて、ものすごい早さで腕立て伏せをしているところだった。かず君は上下に揺れながら、超ご機嫌だ。
「かず君、重石にされてる……」
めちゃくちゃ楽しそうで、ちょっと呆れてしまった。
28
あなたにおすすめの小説
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
僕の主治医さん
鏡野ゆう
ライト文芸
研修医の北川雛子先生が担当することになったのは、救急車で運び込まれた南山裕章さんという若き外務官僚さんでした。研修医さんと救急車で運ばれてきた患者さんとの恋の小話とちょっと不思議なあひるちゃんのお話。
【本編】+【アヒル事件簿】【事件です!】
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
お花屋さんとお巡りさん - 希望が丘駅前商店街 -
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】
少し時を遡ること十数年。商店街の駅前にある花屋のお嬢さん芽衣さんと、とある理由で駅前派出所にやってきたちょっと目つきの悪いお巡りさん真田さんのお話です。
【本編完結】【小話】
こちらのお話に登場する人達のお名前がチラリと出てきます。
・白い黒猫さん作『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
こちらのお話とはコラボエピソードがあります。
・篠宮楓さん作『希望が丘商店街 正則くんと楓さんのすれ違い思考な日常』
https://ncode.syosetu.com/n3046de/
※小説家になろうでも公開中※
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
2025.5.1~
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
桃と料理人 - 希望が丘駅前商店街 -
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】。
居酒屋とうてつの千堂嗣治が出会ったのは可愛い顔をしているくせに仕事中毒で女子力皆無の科捜研勤務の西脇桃香だった。
饕餮さんのところの【希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』】に出てくる嗣治さんとのお話です。饕餮さんには許可を頂いています。
【本編完結】【番外小話】【小ネタ】
このお話は下記のお話とコラボさせていただいています(^^♪
・『希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339
・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
・『希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283
・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』
https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/582141697/878154104
・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
※小説家になろうでも公開中※
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント100万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる